らんまる

見たもの、聞いたもの、読んだもの、感じたこと、思ったこと、考えたことを書いてます。

らんまる

見たもの、聞いたもの、読んだもの、感じたこと、思ったこと、考えたことを書いてます。

最近の記事

吃音を活字にするって酷だな 【読書#04】椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

次男(中3)の通う中学校で、今年度(2024年度)から読書タイムなるものが設けられた。 次男は読書の習慣がなかったので、司書&司書教諭の資格をもつ、元司書のわたし(母)が、次男の読書タイム用の本を選書して用意している。 これまで、4冊の本を次男に手渡した。 次男に本を渡す前に、まずわたしが本を読む。 椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』も、最初は次男に渡すつもりで購入したが、実際に読んでみて、これは渡せない…と、ある意味、お蔵入りになった本である。 『僕は上手にしゃべれ

    • ファンタジーは不滅です! 【読書 #03】森見登美彦 『四畳半タイムマシンブルース』

      学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい!絶賛キャンペーン中。 第3弾は、森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』。 なぜこの本か…というと、次男のために『推し、燃ゆ』をメルカリで買おうと思ったら、出品者さんが2冊買ったら1冊50円引きという「まとめ割」をされていたからだ。 せっかくだからもう1冊買おう…と、出品者さんの出品書籍の中から、この本を見つけた。 森見作品といえば『夜は短し歩けよ乙女』しか読んだことがないが、中村祐介のファンタジックな表紙の絵に魅

      • ただそこに居て歌う 【LIVE】Eve「Culture」@横浜BUNTAI

        2024年のライブ初めは、1月5、6日のVaundy@日本ガイシ2daysだった。 今年3本目のライブは、2024年6月9日のEve「Culture」@横浜BUNTAIとなった。チケットぴあでの抽選は外れてしまったので、一般発売での先着販売でチケットを入手。 Eveって、何者? Eveは、2009年ごろからニコニコやYouTubeで活動している、アーティストだ。 Eveは顔出しせずに活動している。 基本的に、TVにも出ない。私が知る限り、TVに出たのは2021年12月

        • きっと私も貧困だった 【ドラマ #01】WOWOW「東京貧困女子。」

          WOWOWオリジナルドラマ。2023年放送。 原作、中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』。主演、趣里。 2024年5月24日の深夜に、全6回一挙再放送があり、録画をして、翌日の深夜に一気見した。 貧困の切実さは、貧困を経験したものでなければ理解できないように思う。 ただ、貧困問題は個人の問題ではなく、社会の問題であることは、私も理解している。 私自身は貧困家庭ではなかったが、長らくワーキングプアだった。大学卒業後、地方の小さな美術館学芸員(正規雇用)に勤め

        吃音を活字にするって酷だな 【読書#04】椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

          わからない、でも天才 【美術鑑賞#02】デ・キリコ展@東京都美術館

          イタリア人の画家で彫刻家の、ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。 私は、デ・キリコという名前は知っているけれど、彼の作品はよく知らない。 思い浮かべることができるのは、MOMA(ニューヨーク近代美術館)所蔵の《愛の歌》という作品くらいだろうか。 今回の展覧会では、MOMA(ニューヨーク近代美術館)からは《予言者》が来日、展示されている。 展示作品のほとんどが海外からの借用作品。円安ドル高のこのご時世、海外から作品を借りるのは大変な費用がかかる。別の見方をすれば、

          わからない、でも天才 【美術鑑賞#02】デ・キリコ展@東京都美術館

          【詩#02】あるいは青天の石として

          1  読みかけの本の1ページ。  過去と未来とそして今とがちょうど交差するところで、私は何かを待っていた。過去の未来は非常に確かなもので、物語はもう始まり、終わっている。後は、私の指が丁寧にその一枚一枚を開いてゆけば、それでいい。それだけのことさえ躊躇う指は、気が付くと、驚くほどに冷たくなっていた。  思い出そうとしているのは、昨日の晩に読んだ顔も知らない男の人生ではない。もちろん、男は私に多くを与えてくれるであろう、他の人々に対してもそうであったように。けれども、男と私

          【詩#02】あるいは青天の石として

          推し活はソフトホラー? 【読書#02】宇佐見りん「推し、燃ゆ」(ネタバレなし)

          学校の読書タイムを利用して、次男(中3)に本を読ませたい! 絶賛、キャンペーン中である。 記念すべき1冊目は、宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」だった。 とんとん拍子で1冊、2冊ときたが、問題は3冊目。1、2冊目がうまくいっただけに、3冊目が要。ここで転けると、本好きになれない可能性がある…と、私は慎重になった。 手堅くいこうと本屋大賞2位だった、津村記久子「水車小屋のネネ」を読み始めた私だったが…小説の冒頭が、思いのほか重かった。ページ数が482と本に厚みがあるだけに、

          推し活はソフトホラー? 【読書#02】宇佐見りん「推し、燃ゆ」(ネタバレなし)

          作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

          ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)。本展は、日本の美術館で開催される初めての個展とのこと。 ブランクーシの作品を初めて見たのは、1999年に名古屋美術館と笠間日動美術館で開催された展覧会「エコール・ド・パリとその時代」。 この展覧会ではメナード美術館所蔵の絵画作品1点と、名古屋市美術館、豊田市美術館、横浜美術館それぞれが所蔵する彫刻作品3点の、合わせて4点が展示された。 中でも彫刻作品の《うぶごえ》(名古屋市美術館蔵)に私は惹かれ、

          作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

          成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

          X(旧Twitter)で本屋大賞に関するいくつかの投稿を見て、これはすぐに本を買わねばなるまい、という使命感にも似た感情が湧き出た。 そして数日後、駅の近くの一番大きな書店に『成瀬は天下を取りにいく』を買いに行った。 マンガは紙(冊子)で読んでいるが、ここ数年、小説は電子ブックで読んでいるため、書店で小説を買うのは、コロナ禍以降はじめてだった。 本を買う前から、私はこの本を次男(中3)にすすめることになるだろうという予感はあった。 その時点で私が本について知っていたことは

          成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

          【短編#01】おとぎ話の森

           夏の終わりに美術館を訪れた。  入口から長い廊下を抜けていくと、美術館にしてはめずらしく大きな窓が三枚開かれた、扇形の展示室に出た。窓一面に映る木々は瑞々しく、さながら、おとぎ話に出てくる森のようだ。廊下を歩いているあいだに魔法にかかって、おとぎの世界に迷い込んだような気分だ。  ひんやりとした展示室には、流木か、あるいは廃材で作られたと思われる、ふたつの作品が床に配されていた。おそらく人間の背丈のニ倍はあろうか。大きな作品は不自然なほどに、絶妙なバランスで立っていた。 

          【短編#01】おとぎ話の森

          【詩#01】思い出を思い出すための詩 2022.05.15

          雨降りな日々が続いて 春が間もなく終わるころ わたしは となりの席の人から 若い整骨師の肖像という名の詩集を借りた ページを開くと古びた本の匂いがして わたしの心は躍った そして ページをめくるとやさしく見えて難解な詩は わたしに読まれることを拒んだ 印刷された言葉は美しく よくわからないけれど とても静かな時間が流れた 詩は親しき友で 詩を書くことは初恋だった 自分で綴る言葉はわたしを癒やし 励まし、勇気づけ  未成年だったわたしは、いつしか大人になり 親になった 詩

          【詩#01】思い出を思い出すための詩 2022.05.15