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成瀬はスゲーよ 【読書#01】宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」(ネタバレなし)

X(旧Twitter)で本屋大賞に関するいくつかの投稿を見て、これはすぐに本を買わねばなるまい、という使命感にも似た感情が湧き出た。
そして数日後、駅の近くの一番大きな書店に『成瀬は天下を取りにいく』を買いに行った。

マンガは紙(冊子)で読んでいるが、ここ数年、小説は電子ブックで読んでいるため、書店で小説を買うのは、コロナ禍以降はじめてだった。

本を買う前から、私はこの本を次男(中3)にすすめることになるだろうという予感はあった。
その時点で私が本について知っていたことは、主人公が中2であること、小説の舞台は滋賀であること、本の帯に「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と書かれていることだけだった。

書店で本を購入して、帰宅後すぐに「ありがとう西武大津店」を読んだ。
『成瀬は天下を取りにいく』には、6つのストーリーがおさめられているが、1つめのストーリーだけで、これはもう只者ではないな、と思った。
想像のはるか斜めをいく面白さで、わずか2時間で一冊を読み終えた。
自分の胸の、ずっと奥にある小さなまるい部分が、ほのかに温かくなったような気がした。本を読んで面白くて泣きたくなったのは、はじめてのことだった。

著者の宮島未奈さん、という方はどんな方なのだろう……と、カバーの見返しにあるプロフィールを読むと、「コバルト短編小説新人賞を受賞」の文字が。
小中学生のころ、貪るように読んでいたコバルト文庫!なるほど、そうか…。泣きたくなるほど面白かった理由は、大好きだったコバルト文庫に通じる何かを感じたからだったのだろう。


2024/4/12  X投稿


次男に「読む?」と尋ねることすらなく、『成瀬は天下を取りにいく』は次男の通学カバンに入っていった。

次男にとって、読書といえばマンガだ。
マンガ以外は教科書ぐらいで、本を読んでいる姿をを見たことは、ほぼない。小説を読めるのか?という心配はあったが、成瀬にそんな心配は不用だった。

次の日の夜から、次男は、その日読んだ成瀬の話をし始めた。
「成瀬って、スゲーよな」
まるでクラスメイトの話でもするように、成瀬について話す次男。次男は成瀬と友達になったんだなと思ったら、嬉しくなった。

2024/4/23  X投稿


『成瀬は天下を取りにいく』は、ふだん本を読まない息子のような人には「こんにちは、はじめまして」と声をかけて、友達になってくれる本なのではないか。
そして、本は友達だったことを忘れていた私のような人には「お久しぶりです」と声をかけてくれるようだ。
はじめまして、なのに、なんだか懐かしい感じがする、不思議な本だった。


数日かけて『成瀬は天下を取りにいく』を読み終えた私たち親子は、続編『成瀬は信じた道をいく』を購入して、読んだ。

2024/5/3  X投稿


私たち親子は、続編の方が本屋大賞受賞作よりも、より成瀬の魅力が詰まっていて、面白いと思った。
続編の「コンビーフはうまい」がまじエモい、と次男は言った。
私は、続編に出てくる成瀬の言葉にぐっときた。

先のことはわからないからなんとも言えないが…。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている。

『成瀬は信じた道をいく』


とりあえず、しばらくは紙の本を読もうと思っている。そして読んで面白かった本を、次男に手渡していきたい。

ちなみに、次男は『推し、燃ゆ』、私は『水車小屋のネネ』を読んでいる。

2024/5/14  X投稿



『成瀬は天下を取りにいく』は、その後、次男から父親(夫)に手渡された。読書をしない夫が本を読んでいる姿を、久しぶりぶりに見た。

「成瀬って、スゲーよな」
次男の言うとおりだ。


2024.5.19

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