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ただそこに居て歌う 【LIVE】Eve「Culture」@横浜BUNTAI


2024年のライブ初めは、1月5、6日のVaundy@日本ガイシ2daysだった。

今年3本目のライブは、2024年6月9日のEve「Culture」@横浜BUNTAIとなった。チケットぴあでの抽選は外れてしまったので、一般発売での先着販売でチケットを入手。


Eveって、何者?

Eveは、2009年ごろからニコニコやYouTubeで活動している、アーティストだ。

Eveは顔出しせずに活動している。
基本的に、TVにも出ない。私が知る限り、TVに出たのは2021年12月「NHK MUSIC SPECIAL」一度きりではなかろうか。そのときも顔出しはしなかったようだ。

アーティスト本人はTVに出ないが、アニメ、ドラマ、映画、CM等とのタイアップは35曲(2024年6月現在)。


《Eve 楽曲 best3》にも選ばれた曲、「ドラマツルギー」。2017年にYouTubeで公開されたMVは、1.7億再生(2024年6月現在)。

頭でわかっては嘆いた
転がってく様子を嗤った
寂しいとか愛とかわかんない
人間の形は投げだしたんだ

抱えきれない 言葉だらけの存在証明を

この小さな劇場から出らんない
気づいたら最後逃げ出したい
僕ら全員演じていたんだ
エンドロールに向かってゆくんだ

さあ皆必死に役を演じて傍観者なんていないのさ

"ワタシ"なんてないの
どこにだって居ないよ 
ずっと僕は 何者にもなれないで

僕ら今 さあさあ 喰らいあって
延長戦 サレンダーして
メーデー 淡い愛想
垂れ流し 言の愛憎

ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう

「ドラマツルギー」より

宇多田ヒカル「First Love」(2016)のMVの再生数が1億回なので、「ドラマツルギー」の1.7億回という数字が、どれほど凄いかは言うまでもない。


Eveとの出会い

少年ジャンプで連載されている、芥見下々のマンガ「呪術廻戦」(じゅじゅつかいせん)が2020年10月アニメ化された。そのオープニング主題歌「廻廻奇譚」(かいかいきたん)を担当したのが、Eveである。

子どもたちと読んでいたマンガがアニメ化されたので、家族でアニメも見た。そこで、Eveの音楽と出会った。


子どもたちと一緒にアニメを見るので、アニソンもよく聴く。YOASOBI、King Gnu、Vaundy、ヒゲダン、米津玄師、星野源など著名なアーティストたちがアニソンを担当しており、アニソンには名曲も多い。

たくさんあるアニソンの中で、私はなぜかEveの歌に強く惹かれた。


Eveの音楽の魅力

Eveの音楽のなにが好きかというと、その独特な世界観のある歌詞と、軽快な、ときに浮遊感、疾走感のある曲だろうか。

EveのYouTubeチャンネルの中で、4番目に再生数の多い「いのちの食べ方」(2024年6月)。
タイトルだけでも、衝撃的だ。

その感動はまた走り去った
これじゃないと あれじゃないと 
焦りだけが募るようだ

隣に握りしめる手が欲しかった
温もりを知らぬまま

心まで貧しくなって
グレイの海を彷徨った
美は満ち溢れているんだ
見過ごすな

夜が明ける前に酔いを醒まして
時間がないんだ君には

盲目でいたいの 退屈な今日を
超えていきたいんだきっと

声が届くまで想いをぶつけて
ふらふらになってしまうまで

僕らにそれを忘れることを許さないから
考えることすらやめてしまいな

いのちの食べ方

曲はわりと軽やかだが、歌詞はじっくり向き合うと濃く、深く、ときおり重い。そのアンバランスさに、私は独特の心地よさを感じる。

独特の心地よさをあえて例えるなら、よく冷えた炭酸水だろうか。喉元を通り過ぎるときに、少しピリっとするような。


好きなEveの歌

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』挿入歌 、「心海」。ちなみにアニメ映画は見ていない。

疾走感のある曲も好きだけれど、ゆったりした曲も好きだ。「心海」はどことなく浮遊感もあって、聴いていて気持ちが良い。MVのアニメの世界観も面白く、好きだ。


みんなも知ってる? Eveの歌

Eveは、ある有名なお菓子のCMソングを書き下ろしている。

アルフォートである。
Eveの音楽を聴いたことがない、と思っていても、実は知らず知らずのうちに耳にしている……なんてことも。

この曲「花嵐」は、Eveにしてはかなりpopな曲で、アドベンチャーのワクワク感がすごい。
MVのアニメもたいへん素晴らしいので、ひとつの作品として、ぜひ鑑賞してほしい。



ライブ「Culture」@横浜BUNTAI

フォトスポット 筆者撮影

今回のライブは、アジアツアーのひとつ。私が行ったのは、横浜公演になる。
全公演、チケットはSOLDOUT。8月に有明で追加公演もある。

Eve Asia Tour 2024「Culture」

5月8日(水)香港 MacPherson Stadium
5月12日(日)ソウル YES24 LIVE HALL
5月22日(水) シンガポール The Theatre at Media Corp
5月24日(金)クアラルンプール Zepp KUALA LUMPUR
5月26日(日)ジャカルタ TENNIS INDOOR SENAYAN
6月5日(水) 台北 Zepp New Taipei
6月9日(日)神奈川・横浜BUNTAI

席は3Fスタンド席。横浜BUNTAIは、2024年4月にオープンしたアリーナで、座席数は5000。Kアリーナと比べても小規模で、ステージは近く、よく見えた。

3Fスタンド 最後尾列からの眺め 筆者撮影


音源を聴いている時は感じなかったが、はじめてEveの生歌を聴いて、実際に歌うのはこんなに難しいのか…と驚かされた。
EveはボカロPでもあるから、人が歌うことを前提として作られていない曲もあるのかもしれない。

Eveが歌を歌う、という行為そのものが超絶技巧で、その姿が尊いなと思った。

先にも書いたが、Eveは顔出ししない。
顔出ししない理由については、次のように話している。

Eve:顔出しはなんでなんですかね(笑)。別にいままで出してないし、MVはアニメをつけて今たくさんの人に見てもらっているんですけど、それをすごく受け入れてもらっているので、僕自身を作品に出していかなくても良いかなって感じです、今のところは

ラジオ番組『ミュ~コミ+プラス』
(ニッポン放送 2019.2.12)


この感覚が新しいなと、私は思う。
アニメの方がたくさんの人に見てもらえる、だから音楽作品に自分自身を出していく必要はないのかな、という、この発想。

Eve:ただライブはまたちょっと違うなと思っているので、実際に僕も出て演奏して歌ってっていう感じですけど

ラジオ番組『ミュ~コミ+プラス』
(ニッポン放送 2019.2.12)


ライブのステージにはEve本人が登場するが、ステージにはライトが当たらず、Eveにもスポットライトは当たらない。
ステージ付近にはかなり濃いスモークがたかれ、Eveが歌うシルエットがうっすら見えるだけ。

そしてライブは双眼鏡、使用禁止。
Eveの姿は見えない。
見えるのは、Eveの存在だけ。

ステージ上に大画面モニターが設置されており、そこにはYouTube同様、歌ごとにアニメが映し出される。

MVがあるものは、MVの映像が使用されているのだが、ライブ用にアレンジされていた。映像の半分ほどに歌詞が盛り込まれており、歌詞には日本語、英語、中国語が使われていた。Eve語も。

アジアツアーだから他言語は当然、と思うかもしれないが、一文、あるいは言葉ごとに日本語だったり、急に中国語だったり、そこだけ英語? ここはEve語⁉︎ という部分もあった。
しばらく見ていると、歌詞の文字もまた、アニメの一部なのだということに気づかされる。

Eveがライブをやる意味について考える

アンコールも含めて、20曲を歌い終えて、満身創痍のEveの姿を見て、正直ちょっと胸が痛くなった。

そして、Eveがライブをやる意味ってなんだろう?と考えてしまった。

ライブを重ねるたびに、どんなに離れていても音楽でいつでもつながれるってことを実感する。ここに立てているのは音楽を聴いてくれているみんなのおかげ。足を運んでくれて本当にありがとう。

2024.6.9 Live MCより


YouTubeだったら画面の向こう、音源だったらイヤホンの向こうにいるはずのアーティストが、そこ(ステージ上)で歌うということ。

そこに居て歌う。
みんなが音楽でつながっていることを感じられる時間と空間。

今までライブは、アーティストの生歌を聴くために、アーティストのパフォーマンスを見るために行くものだと思っていた。

でも、それだけじゃない。
アーティストも含めて、私たちが、みんなが、音楽でつながっているということを体感するために行くのかもしれないな…と。

Eveライブ「Culture」@横浜BUNTAI は、そんな素敵な時間が流れる空間だった。

アンコールでEveが歌ってくれた「君に世界」。
みんながスマホのライトを点灯させて、揺らして、会場がひとつになった。
最高にやさしい時間で満たされた経験を、私は忘れないだろう。




2024.6.13

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