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作品の一部になれる 【美術鑑賞#01】ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館


ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)。本展は、日本の美術館で開催される初めての個展とのこと。

ブランクーシの作品を初めて見たのは、1999年に名古屋美術館と笠間日動美術館で開催された展覧会「エコール・ド・パリとその時代」。
この展覧会ではメナード美術館所蔵の絵画作品1点と、名古屋市美術館、豊田市美術館、横浜美術館それぞれが所蔵する彫刻作品3点の、合わせて4点が展示された。
中でも彫刻作品の《うぶごえ》(名古屋市美術館蔵)に私は惹かれ、当時勤務していた笠間日動美術館で毎日穴が開くほど見た記憶が残っている。



名古屋市美術館のデータベースに、《うぶごえ》のジュニア向け?説明があったので、紹介する。


もしこの作品の実物(じつぶつ)を美術館で見ることがあったら、この泣き顔をのぞきこんでみてください。きっとあなたの顔がうつって、作品の一部(いちぶ)になるはずです。

名古屋市美術館データベース


なんて素敵な説明だろう。
ブランクーシの作品の魅力が、よく伝わってくる。


私がブランクーシと出会ってから25年、日本では初のブランクーシ展と聞いて、ちょっと驚いた。驚いたのは、きっと私だけではないはず。


ブランクーシといえば、先ほど紹介した《うぶごえ》や《ミューズ》といった、頭部だけを横たえた作品が印象的だが、今回は鳥を象った彫刻に目がいった。


コンスタンティン・ブランクーシ《雄鶏》、
1924年(1972年鋳造)、豊田市美術館
筆者撮影



一度は触れてみたい。
でも一度でも触れたら、指紋や手垢がついて、きっともうこの美しさは見られないだろう。


ただ、見つめるだけ。
見つめることに集中させる、不思議な彫刻。
私はブランクーシの作品を鑑賞することが、とても好きだ。 


アーティゾン美術館では、作品には番号が振られているだけで、作品キャプションがなかった。
作品リストが配られたが、うす暗い展示室では作品名を確認するのも、一苦労だった。

作品名がわからないからこその、楽しみ方があったように思う。
私はしみじみ作品を鑑賞することができ、大満足だった。

私は買わなかったけれど、きっとたくさんの人が展覧会図録を買うだろう。買いたくなるしくみが、用意されていて、なんだかにくい。


展示風景 筆者撮影



追記(2024.6.8)

「新美の巨匠」で知りました。
ロマンスカーVSEは、ブランクーシの《空間の鳥》が原点だったそうです。

コンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》、
1926年 (1982年鋳造)、横浜美術館
筆者撮影




2024.5.19
2024.6.8追記

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