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47都道府県を巡る文学の旅:各県を舞台にした小説を紹介!【中部地方編】

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

シリーズでお送りしている、47都道府県を巡る文学の旅!

前回・前々回は北海道、東北、関東と紹介したので、今日は第三弾、中部地方を一気に攻めたいと思います。

まだチェックしていない方は、こちらから読んでみてください!

  • 北海道・東北地方編

  • 関東地方編

前回同様、ここに挙げた作品以外にも多くの素晴らしい小説があること、そして「それってその都道府県じゃなくね?」みたいな本があるかもしれませんが、そこは多めに見てください!

ではいきましょう!


新潟県

  • 伊吹有喜『ミッドナイト・バス』

新潟にある架空の「美越市」というところの高速バスが舞台になっている小説。その新潟にある「白鳥交通(もちろん架空)」という会社の拠点と、東京を往復する高速バスがメインの舞台。

男が運転する深夜バスに乗車してきたのが、16年前に別れた妻だったところからストーリーは始まります。映画化もされたので、知っている人も多いかと思います。が!私は小説のほうがおすすめ。元妻、恋人、子どもたちだけでなく、高速バスに乗っている乗客のそれぞれの人生にも目が離せません。

富山県

  • 江戸川乱歩『押絵と旅する男』

幻想文学の系譜に数えられる江戸川乱歩「押絵と旅する男」の書き出しは、魚津の「蜃気楼」をながめる場面にはじまります。「蜃気楼とは、乳色のフィルムの表面に墨汁をたらして、それが自然にジワジワとにじんで行くのを、途方もなく巨大な映画にして、大空に映し出した様なものであった」という妖美な風景描写は圧倒されるものがあります。富山に行ったことも、蜃気楼をみたこともないのに、感動にうたれた記憶はいまでも忘れられません。

石川県

  • 森見登美彦『恋文の技術』

能登半島が舞台の小説。能登鹿島駅近くの人里離れた実験場に送り込まれた大学院生が、もともといた京都の仲間たちに手紙を書きまくるという小説。

すべての内容は、誰かから誰かへの手紙の形式で書かれています。なので12通の手紙が載っている。

でも手紙って本当に思うように書けない。そのもどかしさや、面白さに虜になります。能登の復興を願うためにも、ぜひ読んでみてください。

福井県

  • 麻生幾『宣戦布告』

福井県の敦賀半島が舞台の小説。国籍不明の潜水艦が敦賀半島に座礁しているのが発見されるところから物語が始まります。めちゃくちゃ売れたうえ(65万部)、映画化もされたので、知っている方も多いかもしれません。

実際の日本社会にも大きな影響を与えた小説です。未曾有の事態に政府はなす術を失い、責任のなすり合いに終始していきます。残念ながら、世界の情勢はよくありません。もし、日本が(ないことを願う限りですが)不測の事態に陥ったときには、こうなっちゃうのかもなあ、と思わせる作品。

山梨県

  • 辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

作者の故郷である山梨県が舞台になっている小説。女子の格差や息苦しさをテーマにしています。幼なじみが母親を殺害するところから物語が始まります。このふたりは、地元を飛び出した娘と、残った娘。

幼馴染みの二人のの視点からのストーリーです。第一章はチエミを探すみずほの視点で、第二章は逃亡中のチエミの視点で書かれています。誰もが羨むほど仲が良かったあの親子に一体何があったのか。母親を嫌い、地元を嫌い、過去を捨てるように上京し幸せな結婚生活を送っていたみずほは、あることに思い至り、逃げ続けるチエミの行方を追うというもの。必読です!

長野県

  • 神津凛子『スイート・マイホーム』

作者の出身地である長野県を前面的に出している小説。おもわず装丁買いをしてしまったのを覚えています。

冬は雪で覆われる長野で、妻と娘と3人で暮らしていたスポーツインストラクターの主人公が、モデルハウスで「まほうの家」という売り文句の家を見つけるところから物語が始まります。

その家は、たった1台のエアコンで家中を暖めることができ、家中を同じ温度で暖めることができました。今住んでいる家は、寒い。意を決して家を購入するも、引っ越し直後から次々に奇妙なことが起こり始めるという物語。面白くて読む手が止まりません。必読です。

岐阜県

  • 朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』

作者の岐阜県の母校が舞台になっている小説。もう映画のほうが有名かもしれませんが、映画を見た人は(見てない人も)原作の小説、ぜったい読んだ方がいいです!じつは小説のほうだと出てくる台詞が岐阜弁だったりします。

内容に関しては、言わずもがなかと思いますが、部活を辞めることをきっかけに同級生五人の日常に些細へ変化が起こっていく物語。実は五日間が舞台になっていて、5編からなっていて、同級生が5人というところも小説じゃないと味わえない面白さ。

静岡県

  • 川端康成『伊豆の踊子』

静岡といえば伊豆であり、川端康成、三島由紀夫、井上靖などがゆかりの深い作家として数えられ、夏目漱石の『坊っちゃん』でも、伊豆の温泉地が描かれていますね。

川端康成『伊豆の踊子』は主人公の鬱屈した青年が伊豆半島を旅している途中で、踊り子の一団と出会うところから始まります。そのなかの一人の少女に心を惹かれながら交流を深めていくという筋書きに、伊豆の自然美と人々の素朴さがスケッチされ、旅情と恋慕のなかに青春の一ページをめくるような美しいエピソードが織り交ぜられています。

愛知県

  • 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

名古屋が舞台となっている、村上春樹のなかでは唯一の作品ではないでしょうか。名古屋の高校で、いつもいっしょにいる5人組の物語。

主人公以外は名古屋を離れずに地元の大学に進学するけれど、主人公だけ東京の大学にいくことに。しかし、大学二年のときに、いきなりそのグループから追放されてしまう。主人公は自殺することばかり考えてしまう。

でもなんとか大人になって36歳のとき、気になる女性にそのことを解決したほうがいいと言われ、友人に会いに巡礼の旅にでる物語。何回も読み返したくなります。

まとめ

最初にも言及しましたが、ここで紹介した小説は、各都道府県の文学的な魅力を垣間見るための一つの入口に過ぎません。

各都道府県には、その土地の歴史や風土、人々の暮らしを鮮やかに映し出す小説が数多く眠っています。ぜひ、この機会にあなたの興味を引く地域の作品を手に取り、新たな文学の世界へと足を踏み入れてみてください。

地元の書店や図書館を訪れるのも良いでしょうし、電子書籍リーダーを活用して気軽に読書を楽しむのもおすすめです。

小説を読むことで、まだ見ぬ土地の風景を思い描き、そこに生きる人々の心に寄り添い、そして自分自身の内面を見つめ直すことができると思います。

それは、日常を離れ、新たな発見と感動に満ちた、忘れられない旅となるはずです。

あなただけの文学の旅を始めましょう。

ページをめくるたびに広がる豊かな世界が、あなたを待っています。

追記

全都道府県完成しました!こちらのリンクから。
北海道・東北地方編関東地方編中部地方編近畿地方編中国・四国地方編九州・沖縄地方編



【編集後記】
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