マガジンのカバー画像

読ませていただいた作品

2,406
備忘録&スキが押しても付かなかった時対策です。
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

鉱床マン #風景画杯

鉱床マン #風景画杯

『お疲れさまです』

 とグループチャットに入力、送信。これで今日の仕事は終了だ。これで上司や得意先からか連絡が来ても明日に後回しできる。労働からの完全解放だ。自分は仕事の性質上、在宅じゃできることが本当わずかしかないんでほとんどドラマみたりゲームしたりしていたけどね。

 時刻は5︰30。夕飯のまでに少し時間がある。その前にいつものあれやるか。私は部屋を出て、トイレに入り洗面所に立った。脂っこく

もっとみる
ガラクタ市

ガラクタ市

 僕は神社に来ていた。

 前にも来たことがあるような気もしたが思い出せなかった。

 境内の奥へ進むとガラクタ市をやっていた。
 これと言って欲しいものはなかったが、僕はブラブラと出店を見て回った。

 一番目の店では、骨董品のような古めかしい道具のような機械のようなものを並べていたが、どれも何に使うものなのかさっぱり分からなかった。

 それでも、置いてあるものはとても魅力的に見えた。

 僕

もっとみる
思い出句集

思い出句集

雨上がり
夏の陽射しの眩しさに
目を細める

 私は一句読むのが趣味なのだが、まあ読んで頂いたようにセンスはない。上手い句を読もうと勉強する訳でもなく、ただその場で感じた物をそのまま五七五に当てはめて、その場の余韻に少し浸るのが、少し楽しいと思っている。

ぽつぽつと
朝方から降る雨は
まだ止まない

 書きなぐった句を読み返しても、当時何を考えていたかは思い出せない。まあ、季節的なものはわかるの

もっとみる
路

 ホームセンターで包丁を買った。こういうことから後になって足がつくのだろうか。車に乗り込むとパッケージを取り外して片手で握ってみた。刃先の尖りが既に痛みを彷彿とさせ、手が震えた。タオルで包丁を巻いてバッグに忍ばせる。僕はエンジンをかけた。
 山道を走った。高速道路を使えば一時間とかからない目的地までの道のりだった。それを幾分か遠回りしてまだ辿り着けないでいる。落ち着きが欲しかったのだと思う。
 

もっとみる
ゲームと業務 #風景画杯

ゲームと業務 #風景画杯

「じゃあターンもらって、ドロー、マナチャージ。『霞み妖精ジャスミン』を召喚して」
「あーループはいったわ」
「『ボアロパゴス』の効果で『ディス・マジシャン』。『ジャスミン』を自壊、効果でマナチャージ。『ディス・マジシャン』のスペースチャージで」
「負け負け負け」
 宮田は広げていたカードを片付け始めた。市ヶ谷のバトルゾーンには、効果処理の無限ループに入れるだけの材料が揃っているので、宮田の負けは確

もっとみる
コリードの犬

コリードの犬

 フロントガラスは緑一色だった。コナラやヤシの林を、型落ちのフォードが走る。木漏れ日に目を焼かれないよう、ホセはサングラスをかけ直した。
 車は西マドレ山脈中腹を過ぎていた。道と呼べるものはもう何キロも手前で途切れている。
 ラジオは流行りのラテン・トラップを垂れ流していた。
「やっぱり、あんな乳は見たことねぇよ」
 助手席のフリホールが笑いまじりに言う。
「その話はもういい」
「いいや、あれは規

もっとみる

エーっと来てセイッ

水呑み百姓、ときいて、のどが渇いた。

べつに水をごくごく飲んでいる百姓のことじゃない、とはわかったが、のどの渇きは生理のことで、私のせいではない。

たぶんのことだが、水ぐらいしか腹に入れるものがない哀れな農民のことだろう。

しかし水とはまた、現代以外では大層なものではないか?それこそ百姓など、水の権利で殺しあいなど日常のうち。それをたらふく飲むなんて、もしかしたら私が思う以上の御大層な身分の

もっとみる
優雅ですばらしき殺戮

優雅ですばらしき殺戮

ぼくが思うに、「殺戮」という行為は人類種にとって欠かすことができない要素だ。

ムラ社会だったころの生存圏と糧食を確保するための戦いから、イデオロギーの摩擦により起こった国家間の戦争。日常に溢れた殺人事件の数。異なるコミュニティの断絶を、ソーシャルメディアが壊したことで生じる無自覚な殺意。

そんなものを超えて、ぼくの心を捉えて離さない殺戮行為がある。

熱した鉄板、鈍く輝くナイフ、デロリとした肉

もっとみる

工場の日常

 工場の回転する機械に巻き込まれて夫が死んだ。

いつものことだ。

私はそこの工場長だ。

 不況が続いてもう数十年、安全に対するコストは削られ続け、もはや安全を理由にした稟議書は一枚も通らなくなった。それがおかしいと声をあげた前工場長は首になって、私が新しい工場長になった。実務経験は浅かったが、こうすれば女性管理職の割合目標を達成することができるらしい。女性管理職の目標なんて、守ってない会社の

もっとみる
指を拾う

指を拾う

 わたしが住んでいる築四十年の木造アパートの近くには、わりと大きな川が流れている。その辺りによく人間の指みたいなものが落ちているので、わたしは頻繁にそれらを拾いにいく。
 川原の雑草の間に転がっていたり、石の影に隠れていたりするそれらは、どう見ても切断された人間の指にしか見えない。細長くて、爪が生えていて、指紋や皺があって、赤い切り口の真ん中に骨が見えて、見つけるたびに「やっぱり指だよなぁ」と思う

もっとみる
GPD WIN Maxに満足してゲーミングUMPCに思うこと(後編)

GPD WIN Maxに満足してゲーミングUMPCに思うこと(後編)

前編振り返り前回は…

ゲーミングUMPCに興味を持ったきっかけ
GPD WINの初代・2と使ってきての所感
GPD WIN 3の立ち位置

以上3点の話をしました。

引き続きまずはGPD WIN Max購入を検討した経緯から話していきたいと思います。

欲しかったのはゲーミングUMPCと普通のWindowsノートPC初代・2と購入してきてあまりいい思いはしていなかったのですが、それでもMaxを

もっとみる
パーフェクトイケメンスマイル(あいてはしぬ)

パーフェクトイケメンスマイル(あいてはしぬ)

 前 目次

「な、なにをする気!?」
「別に」
「え?」
「特に何もせんよ。ただ転移網を使って〈化外の地〉に帰るだけだ」
「なにを……! アンデッドなんかに転移門が開けるわけないでしょ! あれはあたしたちの神聖な……」
「まだそんなおめでたい勘違いをしているのか。次までにはもう少し王国外の現実に目を向けておくことだな」
「次!?」
「私はまた来るぞ。何度でも、何度でもなァ……」

 青白い眼光が

もっとみる
辛い麵メント:灼熱のチーズ的狂気

辛い麵メント:灼熱のチーズ的狂気

アクズメさんは新しい辛い麺を見るとついに手を出す。辛い麵を食べて、悶え苦しむ体験を記録して文章に書いたら大体受けがいい。なぜなら他人の苦しみを見るのが世界一面白いエンターテインメントだから。たまにサポートまでもらえる。味を占めたアクズメさんはこうしていままで自分の内臓と肛門を酷使してきた。そして今日も過ちを繰り返す。

では今から胃袋に収める劇物を紹介しよう。

このパッケージに見覚えがあるかな?

もっとみる
【即興習作】 遅刻

【即興習作】 遅刻

 新入社員の松原がオフィスに姿を現わしたのは、午前十一時十一分だった。エントランスのセキュリティーゲートにかざすICチップ内蔵の社員証で入退館を記録しているから、部長の園橋はいつでも手許のパソコンで、分刻みの正確な時間を閲覧することができる。就業規則に定められた始業時刻は午前九時。もう二時間以上の遅刻だ。
「申し訳ありません、遅れました」
 入室するなり園橋のもとに歩み寄ってきて深々とお辞儀をする

もっとみる