あの頃、僕が話せた相手はサイコバニー先輩だけだった。ウサミミのカチューシャと頬にハートのタトゥーをした先輩にあの頃の僕はおしぼりをカツアゲされていた。
好きになった相手は男でも女でもない者だった 一言で述べると化け物と呼ぶべき風体をした彼か彼女かわからないそれに、私は恋をしてしまったのだ けむくじゃらの見た目に似つかわしく、衣服の類を一切身に着けておらず、唇から涎が止めどなく溢れ、突き出た鼻に頬まで切り裂かれた口から納まりきらない立派な犬歯が異様な存在感を示している それを始めて目撃したのは路地裏だった 野犬が共喰いでもしているのかと思った よく見ればそれは、二足で立っており肉塊になっている何かにむしゃぶりつい
渇いた風が荒野に砂埃を舞い上がらせる。 20歩ほど離れて向かい合った2人の男の間を丸まった干草が走り抜けた。 「嬉しいよ。少し残念でもある。サムライ、お前と戦える事、それだけが望みだった。お前もだろう?」 ホルスターに納まったリボルバーに手をかけた男は言う。 「何とでも言うが良い。エリスの代わりにお前を殺す。どちらにせよ、これで終わりだ。」 サムライは、憎しみを隠さず声に乗せる。 「まだ何も始まっていないだろう?俺にはまだ墓に刻まれる名前も無いのだから。」 「だったら
目の前で、血を流して倒れている男が1人。この街では珍しい事ではない。ただし、この倒れている男、ステファノ・テイラーであれば話は変わってくる。 テイラーとは昔からの馴染みだった。死んでも何処からか溢れてくるストリートチルドレンだった俺達は、運良くマフィアに拾われた。 喧嘩早い俺とは違い、テイラーは人心掌握術に長けていた。あいつが根回し、俺がその障害を排除する。ガキ共の売春斡旋から始まったその関係は、賭博、ついには麻薬売買まで登りつめたのだ。そして、当時のボスの座を奪い取
雨上がり 夏の陽射しの眩しさに 目を細める 私は一句読むのが趣味なのだが、まあ読んで頂いたようにセンスはない。上手い句を読もうと勉強する訳でもなく、ただその場で感じた物をそのまま五七五に当てはめて、その場の余韻に少し浸るのが、少し楽しいと思っている。 ぽつぽつと 朝方から降る雨は まだ止まない 書きなぐった句を読み返しても、当時何を考えていたかは思い出せない。まあ、季節的なものはわかるのだが。例えば上記の句だ。梅雨の時期に書いたであろうその句を今読んでも何も面白いと