電楽サロン

お話を投稿したり、趣味の話をしたりしています。 時折、お肉仮面の写真をまとめています。

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マガジン

  • お肉仮面のCDラック

    お肉仮面と電楽サロンがこれまで作ってきた音楽がおいてあります。

  • 電楽の短編

    短編が置いてあります

  • 第三回お肉仮面文芸祭

    2023/11/29〜2023/12/29にかけて行われる「第三回お肉仮面文芸祭」の収集マガジンです

  • 楽しい音楽の話

    謎のマッシュアップを掘り、future funkの話をする

  • 平成八年生肉之年

    第2回逆噴射小説大賞に出したお話の続きを書いています

最近の記事

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地雷拳(ロングバージョン)

 診察室の天井には採光窓がはめられていた。薄い病院着に光が差す。満月を眺めながら、姫華は相手の反応を待つ。 「すばらしい」  しばらくして医者は言った。頭のレントゲンには弾丸が写っていた。 「どこまで覚えていますか?」  姫華は順を追って話す。ホストクラブで遊んだこと。帰り道で銃口を向けられたこと。 「誰が銃を?」 「あ……」  訴えようにも声が出なくなっていた。喉が詰まっているわけではなさそうだ。咳すら出ず、見えない栓が口にはまっているようだった。 《待って

    • 地雷拳(ロングバージョン12)

      承前  姫華の身体は傷だらけだった。切り傷と痛々しい打撲の痕跡がある。着ている服が血に濡れているものの、致命傷はなかった。腕を振ると、血が地面に飛び散った。傷だらけの姫華が不利なのは変わらない。だが、ラポールは目の前の女が「わざと傷ついた」ように思えてならなかった。 「なんなんだ……お前は」 「いいッ……ねェ……こうでないと」  姫華は歯を食いしばりながら歯茎音をまじりにラポールへと首を向けた。鉄の暗殺者は、姫華の相貌にたじろいだ。  口の中を切ったのか、リップの色が移った

      • 地雷拳(ロングバージョン11)

        承前  無料案内所の電飾が毒々しく客を誘う。酔っ払いの怒号が飛び交うなか、路上には酒に潰れた外国人が座っている。 「お姉さん、ホスト興味ない?」  キャッチの鼻にかかった声を無視して、姫華は歩道を進む。自然と歩速は上がっていた。  歌舞伎町の人々は、ラフォーレ原宿の壊滅など意に介していないようだ。 「生憎今日は運転してきたから」  マクセンティウスは駐車場に置いてきた。人探しはバイクよりも徒歩のほうが向いているからだった。  スマホを見る。時間は0時を示していた。通知がまた

        • Evaporation of joy

          お肉仮面がレーシングゲームに出てたら…というイメージで作りました。ローポリのお肉仮面はどんな機体に乗るのでしょうか

        • 固定された記事

        地雷拳(ロングバージョン)

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          64本
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        • 生贄にならないあなたへ
          17本

        記事

          熱中症

          あまりに熱すぎて意識がもうろうとしました。その時の記憶

          夢のスーパー

          いずれスーパーマーケットを作ったら流したいです

          夢のスーパー

          夢のスーパー

          地雷拳(ロングバージョン10)

          承前  通りは人々の叫び声でパニックに陥っていた。どこかから壊れたクラクションが鳴り響く。トラックが腹を見せて転がり、黒煙をあげている。アスファルトの路面にはビルの残骸が突き立っている。コンクリートの石板が立ち並ぶ様子は、ビル街のジオラマのようだった。  ギュルギュルギュルギュルギュルギュル……  スパインテイカーの回転腕が喧騒をかき消した。 「カラテチップの娘よ! もう終わりか!」  異形のカンフーロボが、倒すべき相手を求めて叫んだ。 「カラテチップなど超人である覇金の前

          地雷拳(ロングバージョン10)

          地雷拳(ロングバージョン9)

          承前  マクセンティウスの機嫌は悪くなる一方だった。マクセンティウスの音声認識デバイスはブレーキのすぐ下に設置してある。地面に近い  やけにうるさく感じた。人には無視できるような音だろう。マクセンティウスは黒い二輪の躯体を持つ。身体が地面に近いほど足音は隣の部屋でドラムセットを叩かれるような苦痛だった。  ラフォーレの前でマクセンティウスが停まって一時間ほどになる。  人々が行き交うのをアイカメラで追っていた。マクセンティウスは辟易していた。人間が多すぎる。雑踏の中を走るの

          地雷拳(ロングバージョン9)

          blenderでプールをつくりました🏖️

          blenderでプールをつくりました🏖️

          地雷拳(ロングバージョン8)

          承前  人の流れは街の血なんだと姫華は思った。  競輪場を出て原宿に着いていた。  バイクを駆っていると街の喧騒を忘れてしまう。どこにいても人がいる。普段ならどうでもいいことだけれど姫華は安心した。 「はぁ……」  ようやく一息つけるようになった。  ラフォーレ原宿4階の個室トイレに姫華はいた。閉店時間のギリギリに着いたのは、マクセンティウスのおかげだった。覇金の技術が詰め込まれた躯体は瞬く間に姫華を目的地にたどり着かせた。  四方が壁に囲まれたトイレは、これまで走り続けた

          地雷拳(ロングバージョン8)

          地雷拳(ロングバージョン7)

          承前  広々とした芝の上に姫華は立つ。天井は中央に穴が開いており、夜空が見える。周りを見渡すと、ぐるりと舗装されたトラックが囲んでいる。  閉まっていたはずの京王閣競輪場は静まっている。だが、従業員の去った場内は煌々と灯りがついていた。  なんだか落ち着かない。  壁も天井もないと拠り所がなく、不安定だ。  観客に囲まれるアイドルはこんな視界だったのだろうか、と姫華は思う。もっとも、姫華が見たことがあるのはメン地下の現場だった。規模は比べるまでもない。 《集中して》  姉の

          地雷拳(ロングバージョン7)

          クレンザー KILL!KILL!KILL!【ホストファクトリー】

          承前  禍舞姫町。この街はいまはそう呼ばれている。歌舞伎と呼ばれた場所が名前を変えて久しい。かつて新宿区の一部分だった場所はいまや、東西南北に版図を広げていた。境目はことあるごとに武装勢力が衝突して曖昧になっているが、誰も気にしない。禍舞姫か、禍舞姫じゃないか。分かりやすい方が住人には楽だ。俺のマンションがあった場所も以前は川崎と呼ばれていたが、いまは禍舞姫だ。  時間の流れは早い。  屋上から街を見おろす。禍舞姫の中心に来るのは久しぶりだった。いつ来たのが最後だっただろう

          クレンザー KILL!KILL!KILL!【ホストファクトリー】

          地雷拳(ロングバージョン6)

          承前  メキシコ、オアハカ州郊外。真夜中に一発の銃声が響いた。住民はカーテンの隙間から外の様子を窺う。メキシコシティに比べてオアハカは滅多に銃声が鳴り響かない。慌てた野良犬が通りを走りぬける。片足を立たせてよたよたと走り抜ける野良犬への関心は街の住人にはない。  銃声の出所は、通りに面した家からだった。家は大きな平屋だった。白い外壁は太陽に当たると柔らかな光を反射する。よくある家だった。むしろ、そうでなければならなかったのだろう。  住民は平家に住む人物はオアハカの人間では

          地雷拳(ロングバージョン6)

          ボルゾイに血まみれ錦鯉をぶん回す

           浦井先生はボルゾイに似ている。輪郭がしゅっとしてるところなんてそっくりだ。高校時代はバレー部の主将だったらしく、筋肉質な身体はボルゾイの白くてがっしりした姿と重なる。  他にもまだある。今日の先生は無印の白いブロードシャツを着ている。肌の白さとマッチしていてかなりボルゾイだ。  そんな浦井先生が駐車場に倒れている。舌を出して目を半開きにして尻を突き出したまま微動だにしない。センター分けにした黒髪が血に濡れている。すぐ横に車のキーが落ちていた。駐車場に一台だけ止まった、先生の

          ボルゾイに血まみれ錦鯉をぶん回す

          くるまえびのお葬式

          えびのお葬式用

          くるまえびのお葬式

          くるまえびのお葬式

          地雷拳(ロングバージョン5)

          「そのまま俺の爪研ぎになるんだ! 死ねッ!」  小鬼が動いた時だった。  老人が視界から消えていた。5メートル先で確かに胡座をかいていたはずの姿がどこにもなかった。  確かに見ていたはずだ。見逃すほどカメラのメンテナンスを怠っているはずがない。  鋼鉄の足が宙をかいた。  ヴァーユが探しだす前に身体が浮いていたのだ。小鬼は自分が投げられたのだと気づいた。頭の位置が地面に近づくにつれ、老人の姿が目に入った。  衝撃が脳天に走る。ヴァーユは床に打ちつけられていた。ぐわぐわと視界に

          地雷拳(ロングバージョン5)