2022年10月の記事一覧
漆黒を切り裂き余白をくり抜き
現代川柳と400字雑文 その16
作ったことはないですが、クッキーを作るときに使う型抜きってありますよね。銀色の型で生地をくり抜くやつ。輪切りのニンジンをお花の形にくり抜いてカレーに入れたりシチューに入れたりもしますよね。しますかね。テレビのCMで見かけますがあれ実在の出来事ですか。ま、そういうのですね。型抜き。現代川柳を作るのは、言葉に対してあの型抜きを駆使しているようなイメージだ。おびた
刑務所のどこかのどこかとりはずす
現代川柳と400字雑文 その14
道端に「部品」としか言いようのないものが落ちていたら、あなたは拾うだろうか。名称も使いみちもわからない。そこに落ちたままになっていていいのか。そもそもそれはほんとうに「落ちている」状態なのか。なにもわからないものの正体は、考えても往々にしてなにもわからない。たとえば、最近わたしが見かけたのは、上面に金属製の輪っかが半分ほど埋まっている木製の平べったい直方体だ
見下しているひと見上げているひと
サイエンスライターの鹿野司さんが亡くなってしまった。読みはじめた、とはっきり言えるのは東日本大震災のすぐ後から。かなり遅れて来たファンだった。科学的なものの見方を備えつつ、権威主義的な匂いをさせない(上から目線ではない)あの文章に(勝手に)生き方の態度を教わっていた。まあぐだぐだですが。名著『サはサイエンスのサ』のあとがきで鹿野さんは、その文体を選択した理由を明かしていた。読んでから10年も経つ
もっとみるはい出てはいけないくらい深い沼
湖と沼のちがいはサイズらしい。たしか、イルカとクジラのちがいもサイズだったと思う。要は、大きいほうから並べると、湖・沼・クジラ・イルカの順になるということだ。並べて終えてからなんの意味もなかったと気づく。「要は」とはなんのことだろう。並べるといえば、下着泥棒から押収した下着を体育館に並べるのはなぜだろう、という問いはもはや陳腐に感じる。一風変わったあの光景や、あの光景を指摘する「視点」にわたした
もっとみる歯を白く強く大きく果てしなく
散歩していると、街の小さいクリニックや、歯医者の看板によく目がとまる。あえて言えば、「おもしろ看板」という切り取り方になるだろう。その医院独自の(あまりうまくいっていない)工夫や、そこにしかいないオリジナルキャラクターの味わいをSNSに大量投下したりする。その一連になにか信念があるわけではないし、赤瀬川原平や今和次郎の著作に明るいわけでもない。まあ、なにかひとつ発見(この看板、擬人化された歯のキ
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