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白まくら逃げないうえにやわらかい

 現代川柳と400字雑文 その17

 枕が変わると眠れない、という表現は慣用句だろうか。慣れない枕では頭がフィットせず安心して眠ることができないというそのものの意味にも聞こえるし、旅先など慣れない環境では気持ちが落ち着かず眠れないという意味の比喩表現にも聞こえる。前者を実際派、後者を比喩派と呼ぶことにして、しかしこれより後それら分類用語はまったく登場せず話は変わる。わたしは枕にはなんのこだわりもない幸せな人間だが、そんな幸せ人間に「人生の3分の1は睡眠時間なんだから、もっと睡眠環境こだわったほうがいいよ」という言い回しでアドバイスをしてくる人がいる。意味がわからない。それで言うと人生の3分の2は起きているわけだから、たかだか3分の1を占める程度の睡眠時間へのこだわりは潔く捨て、起きている時間だけを充実させることに集中すべき、という言い分も通ってしまう。苛立っているわけではない。そんな根拠のぐらぐらな表現をして気にならないのか不思議なのだ。ほんとうに不思議だ。不思議で夜も眠れない。

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