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見下しているひと見上げているひと

 サイエンスライターの鹿野司さんが亡くなってしまった。読みはじめた、とはっきり言えるのは東日本大震災のすぐ後から。かなり遅れて来たファンだった。科学的なものの見方を備えつつ、権威主義的な匂いをさせない(上から目線ではない)あの文章に(勝手に)生き方の態度を教わっていた。まあぐだぐだですが。名著『サはサイエンスのサ』のあとがきで鹿野さんは、その文体を選択した理由を明かしていた。読んでから10年も経つのか~。思い出さなかった日は一日もない。

 オレは人類という観点から見れば、人間なんて大差ないと思う。つまり、どこの誰だろうと、オレと同じくらい賢く、オレと同じくらい愚かで、オレと同じくらいナマケモノで、オレと同じくらい理想を持っていて、オレと同じくらいずるくて、オレと同じくらいまじめだと思う。だから、なにか常識外れなことが起きたとき、即座にバカにしたりせずに、なんでオレと同じような人がそんな奇妙なことをする羽目に陥ったのかなって考えるようになった。本能的にしがちな、知らない人を安易に即座に見下す行為をしないように、自分を訓練しつづけているのね。まあぐだぐだだけどね。

鹿野司『サはサイエンスのサ』

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