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刑務所のどこかのどこかとりはずす

 現代川柳と400字雑文 その14

 道端に「部品」としか言いようのないものが落ちていたら、あなたは拾うだろうか。名称も使いみちもわからない。そこに落ちたままになっていていいのか。そもそもそれはほんとうに「落ちている」状態なのか。なにもわからないものの正体は、考えても往々にしてなにもわからない。たとえば、最近わたしが見かけたのは、上面に金属製の輪っかが半分ほど埋まっている木製の平べったい直方体だ。それは、部品というより、なにかしらの「完成形」に見えた。どことなく工芸品の趣がある。純粋に美のためだけにあるのではない。あきらかになにか用途のあるものだ。輪っかの部分にはなにかを通すにちがいない。ほとんど木で軽いから、重し、あるいはなにかを固定するためのものでもなさそうだ。ではいったいなんのためにあるのか。いま「部品」を観察しているわたしを観察する誰かがいたら同じことを思うだろう。この人物、いったいなんのためにいるのか。


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