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痔除伝

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とある肛門疾患の発症から完治まで、10年近くの戦いのまとめ。面白おかしく描きました。ぜひお付き合いください!
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痔除伝 最終章 conclusion

痔除伝 最終章 conclusion

退院後に困ったのは、ガーゼの確保だった。

退院時、アヌスを拭く用と、浸出液を受け止める用のガーゼをもらったが、合計10枚程度。節約したとしても1、2日分である。普通に使えばすぐなくなってしまう様な量だ。

しかし、私にはある秘策があった。退院時の生活について、看護師さんからレクチャーを受けた時のことである。

しばらくはウォシュレット+ガーゼで対応する様に言われたのだが、赤ちゃん用のウェットタイ

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痔除伝 第十三章 tomorrow

痔除伝 第十三章 tomorrow

痔瘻の状況と手術によっては即日手術、1日で退院というケースもあるようだが、私の場合は8日間(月曜入院、火曜手術、翌月曜退院)の入院生活となった。

後で聞いたところによると、今回の手術は、「切開解放術」。アヌスを切り開いて、痔瘻の穴を無くしてくれたらしい。

アヌスを切り開くとか、大丈夫なの?括約筋がバカになって、大便漏れ太郎になるんじゃないの?と思うが、私の痔瘻の穴はアナスよりも背中側にあり、括

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痔除伝 第十二章 おちんちん事変

痔除伝 第十二章 おちんちん事変

※一部、性的と判断されかねない表現があったので有料公開を予定しておりましたが、無料公開で問題ないだろうと判断しました。ご意見があれば制限をかけます。ただし、18禁設定になってしまったようです。これも、ご意見があれば解除申請します。

おてんば看護師達にストレッチャーで運ばれ、無事病室に着いた。ストレッチャーから自分のベッドに移される時、複数の看護師さんが協力して下のシーツごと私を持ち上げ、ベッドに

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痔除伝 第十一章 後編 Have you ever smelled the Baked asshole?

痔除伝 第十一章 後編 Have you ever smelled the Baked asshole?

オペ室は、思ったよりも狭かった。大体12畳くらい。もっと広いイメージだったが、手術の内容、難易度などによって広さが変わるのかもしれない。

執刀医やオペナースは、オペ中に赤いもの(血液や内臓など)ばかり見ることになるため、部屋の内部が寒色系の内装になっていると聞いたことがある。赤いものばかりを見続けた後に白いものを見ると、反対色である青や緑などのシミが見えるようになるらしい。

確かに、オペ室の壁

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痔除伝 第十一章 前編 Have you ever smelled the Baked asshole?

痔除伝 第十一章 前編 Have you ever smelled the Baked asshole?

夜中、最後にスマホの時間を見たのが3:30頃だった。看護師さんに起こされ、検温したのが6:20頃。優しい笑顔で、眠れましたか?と聞かれ、世の中のすべてに裏切られたような、アウトローな男の表情で「いや……」と答える。

看護師さんは、理解を示すような苦笑いを浮かべ、

「急に環境変わると、そうですよねぇ。不安もあるだろうし……」

と、同意してくれたが、心の中で、「そういうことじゃねぇんだよ!」と叫

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痔除伝 第十章 eve

痔除伝 第十章 eve

5月に入り、医師、上司などと相談をした結果、7月半ばの入院と、その翌日の手術を決めた。

入院日を決める診察の日のこと。通院時は時期が時期だけに、マスクの着用と来院時の手指消毒が義務付けられているのだが、院内で突然マスクを外した老人男性がおり、すかさずスタッフが駆け寄ってマスクの着用を願い出た。

すると老人は、

「息苦しいんだよ!オレを殺す気か!」

と、怒鳴りつけ、騒ぎ始めた。

どうやら、

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痔除伝 第九章 怒りの金曜日

痔除伝 第九章 怒りの金曜日

入院の1週間前から、実際にテレワークへの移行が始まり、自宅に職場のPCを設置する。

緊急事態宣言により、通勤電車に乗らなくて良い、人と会わなくて良い、ということも公に推奨された。

人前に出なくて良いということは、その気になれば、着替えなくてもいいどころか、髪をセットする必要もない。

仕事中に暑いと思ったら、こっそり放り出したままのおキャンタマちゃんに、氷嚢を当てることだってできる。

私は塩

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痔除伝 第八章 COVID-19 Killed the Conte Star

手術日が決まった。この時点では2月半ばだったのだが、予約の空きの関係で、4月後半の入院となった。かなり先の手術になるが、こればかりは仕方がない。

手術までの間、またアヌスに不調が訪れることもあったが、解決に向けて動き出していることを思うと、気持ちは明るかった。

3月はじめ頃に入院保険や傷病手当金、限度額認定証など必要書類のほとんどを集め、後は入院手術に備えて体調を整えていく。

これまでの人生

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痔除伝 第七章 modulation

痔除伝 第七章 modulation

「要するに、前回みたいに排膿してしまえば、一時的に楽にはなるけど、繰り返す。根本的に解決するなら、ここでは出来ないけど、大きい病院で手術ですね」

正直、そうだろうなぁとは思っていた。地獄司教(北の医者)もそんなことを言っていたし、ネットで調べてもそんなようなことが書いてあった。パワーはあえて名称を口にしなかったが、どうやら痔瘻というやつになってしまったようだ。

……なんだよ、痔瘻って。知らねー

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痔除伝 第六章

Interlude

痔除伝 第六章 Interlude

裏ナプキン密売人のもえさんと袂を分かち、私はつかの間の平和な日常を満喫していた。

アヌスが痛くない日常とは、それだけで光が溢れている。花の色は鮮やかさを増し、食事では繊細な風味や香りに気付き、ブスにも優しく振る舞えるようになった。

不自由を減らす事で気付ける喜びがある。そのことに気づき、健康、体調にこれまでよりも気を使うようになり、特にお腹の不調には気を配るようになる。お酒も多少量を減らし、飲

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痔除伝 第五章 CanCamとわたし

痔除伝 第五章 CanCamとわたし

翌日。職場に着くと、抜糸後はどうなのかとか、どうしたら肛門周囲膿瘍になるのかなど、どうしたって話題になる。慣れ切った職場ではみんな新しい話題に飢えているから、オペとか、抜糸とか、聴き慣れない疾患とか、そんな話題が刺激的なのだ。

私はそれに対し、お腹下しがちな男性に多いみたいで、なるかどうかは運みたいですよ、とか、抜糸後は生理用ナプキンで対処しろとか言われましたよ、と、なるべく明るく、笑い話に変換

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痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

痔除伝 第四章 あの日出た粘液の名前をボクはまだ知らない

その後も、発作のように、苦しみが続いた。数ヶ月おきに辛い痛みと重みがやってくるも、1週間も経たずに消える。病院へは、行かない。

発作的に起こるつらさは、回を重ねる毎に強くなっていく。しかし、どうせ病院に行っても意味が無いと思うと、行く気になれなかった。見せ損、掘られ損である。

「見られても減るもんじゃない」という言葉があるが、目には見えない何かが、間違いなく減っているという手応えがある。

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痔除伝 第三章 refrain

痔除伝 第三章 refrain

ある冬の朝、いつもよりも少し早く目覚めた私は、前日のお酒と暖房により、乾燥しきった喉を一杯の水で潤し、トイレに向かった。便座に座り込み、力を入れる。体内の水分も抜けているのか、「確かに直腸内にあるもの」が動いてこない。ただ、確実に存在は感じるので、少し強めに力を込める。なんだか、少し降りてきた気がする。もう少し、もう少し……。徐々に力を強める。

バリッ!!!!!

突然何かが破けるような衝撃が身

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痔除伝 第二章 胎動

痔除伝 第二章 胎動

メイド喫茶での出来事から1年ほど経ち、その間に断続的に複数の異なる違和感をアヌスに覚えるようになった。

症状その1 痒み

前述の通り、一時的に治りはしたものの、数ヶ月に一度くらいのペースで、突発的に発生する猛烈な痒み。人前だろうがなんだろうが関係なく、ムズムズ、ヌルヌルとしたとてつもない痒みが襲いかかる。間寛平による伝説のギャグ、「かい〜の〜!」ならば、人前でもごまかしながら尻がかけるか!?と

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