#エッセイ
あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #9
#9 見知らぬ三十九歳のこと
大人になりそこなってきた、という体感がある。二十三歳までにこなさなければいけなかった儀礼のいくつかをスルーしてしまった、というほうが正確かもしれない。
たとえば、大学に入るまで、友だちと夕食を食べたことがなかった。どうやらみんなは高校の放課後に買い物をしたりゲームセンターに行ったりしているらしい、そして家族ではなく友だちと夜ご飯を食べることがあるらしい、そう勘付
「おかあさんの怒りはひとつ残して僕が食べた。」
寝る前に息子が不思議なことを言った。
「お父さんは100個怒るけどお母さんは1個しか怒らない」
私は何度も何度も怒ってしまっているというのに。
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自粛期間の在宅保育。
夫に久しぶりに仕事が入ったこの2週間、私はワンオペで仕事の割合を減らしながら昼間は子供たちを優先して過ごしていた。
それまで、夫の仕事がコロナの影響でなくなったのをいいことに(?)夫に日中の保育を任せきりにして私はこれ
「会社はだれも君に残って欲しいとは頼んでないよ」と、新卒時代の上司は言った
『会社は誰も平岡に、会社に残って欲しいとは頼んでいないよ。』
これはぼくが社会人1年目の頃に、上司に言われた言葉だ。それもずっとずっと役職が上の上司に。
新卒入社した会社の本社は東京・六本木。「東京で働くんだ。」そんな希望と憧れを持って大阪から出てきた。研修で仲の良い同期ができた。東京の電車にも、人の多さにも少し慣れてきた。
研修が終わって配属の内示で言い渡されたのは、縁もゆかりもない名古屋
可愛いだけじゃ生きていけない。賢くないと苦労するよ
「可愛いだけじゃ生きていけない。賢くないと苦労するよ」
女手ひとつで私たち兄弟を育てた母の口癖。
この言葉をくりかえし聞かされたおかげで、大都会東京で出現しがちなヤバいおじさんの
「可愛いね、愛人にならない? 仕事あげるよ」
なんて誘いにのることもなく20代後半まで到達できた。
同時に、大好きな彼氏から専業主婦になってほしいと甘くささやかれても
「不安すぎるわ! 私も稼ぐ力を身につけま