高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」…

高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/gallery hydrangea「少女観音」/霧とリボン「少女の聖域」

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  • 少女主義宣言

    少女とはなにか。少女であるとはどういうことか。 あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論。 「不在の少女」を探して言葉の森に分け入る試みを始めよう。 ヘッダー:「運び屋」chigusa 作

記事一覧

298回 まんじゅうこわい

あなたは肉まん派ですか?それとも豚まん派? これはもう地域によってはっきりと異なるのが明らかだ。東日本は肉まん、西日本は豚まんなのである。私は東京生まれなので、…

5

297回 ストレスフリー・ストマック

先日職場の健診で胃カメラの検査を受けた。 俗に言うところの胃カメラ、正式名称は上部消化管内視鏡である。今の職場では毎年の職員健診で胃カメラを義務付けているので、6…

高柳カヨ子
2週間前
14

296回 前髪よ、永遠なれ

かつて前髪は武装だった。 ロリィタなるもの前髪を上げてはならじ、という掟でもあるが如く、少女たちは己の前髪を死守していた。ある有名なロリィタ・モデルの前髪は、ど…

高柳カヨ子
1か月前
13

295回 11モンキーズ

猿害に悩まされている。猿害、ニホンザルによる被害のことだ。 いま住んでいる場所は標高600m程度の山麓部の林の中で、キツネ、タヌキ、キジなどの野生動物をよく見かける…

高柳カヨ子
1か月前
10

294回 What are you doing?

SNS疲れ、という言葉がある。 X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、Threads、Tumblr、BlueSky、TikTok。そのどれかに触れていない人は珍しいだろう。自分…

高柳カヨ子
1か月前
16

293回 ブライト・クリスタル

アメジストが好きだ。アメジスト、紫水晶。 2月の誕生石だそうだが、誕生日は8月なのでそれとは関係ない。紫色が好きなことに加え、水晶という石自体に惹かれるからだろう…

高柳カヨ子
1か月前
17

292回 頭痛肩こり龍之介

いわゆる頭痛持ちというやつである。 今でこそなんとか鎮痛剤を飲まなくてもやり過ごせることも多いが、若い頃は日常生活に支障をきたす程の痛みがしょっちゅうあったため…

高柳カヨ子
2か月前
14

291回 回転を加えてもっと

逆上がりが出来なかった。 小学生で出来なかったのだから、もちろん今でも出来ないだろう。 逆上がりが出来るか出来ないかは、子供にとっては重大な運命の分かれ目である。…

高柳カヨ子
2か月前
12

290回 Charley Horse

子供の頃からよく足が攣った。所謂こむら返りというやつである。 寝ている時のみならず、ただ立っているだけでも、突然ヤツは襲ってくる。激痛に悶絶しながらひたすら足を…

高柳カヨ子
2か月前
15

289回 羽ばたきはやまない

今年もイワツバメがやってきた。 通勤途中のクルマの前を横切るその小さな姿は、初夏の訪れを告げる風物詩だ。これから田圃に水が入ると小さな虫も沢山発生するので、イワ…

高柳カヨ子
2か月前
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288回 心地よく秘密めいた場所

墓参りにはずいぶん長いこと行っていない。 最後に行ったのは父親が亡くなった時だから、10年前か。 とにかく実家の墓がある寺は東京北部にあり、私が住んでいる場所からは…

高柳カヨ子
2か月前
13

287回 サニーサイドアップ

「卵は物価の優等生」と言われて久しいが、最近ではどうもこれは怪しくなっている。 そもそも物価の上昇や円安などの影響を受けないわけがないのであって、それを安価なま…

高柳カヨ子
3か月前
14

286回 アップデートの準備ができました

最近評判になったTVドラマのキーワードは「アップデート」だった。 昭和と令和の二つの時代を行き来することで、当時当たり前だった価値観が今や古く差別的で時代にそぐわ…

高柳カヨ子
3か月前
17

285回 Under Pressure

年度末になるので早くストレスチェックを受けろと言われて、お馴染みの質問にPCで答えてきた。毎年やらされているので慣れたものだ。サクサクとチェックを入れて、ものの5…

高柳カヨ子
3か月前
15

284回 歌の翼に

驚くべきことに、かつて歌を習っていた。 いや、これを読んでいる方は驚かなくていい。自分で驚いているのだ。 かつてと言っても小学生の頃だから、今はもう昔ではあるのだ…

高柳カヨ子
3か月前
11

283回 My Hair is Good

最近若い人の髪の色が以前より暗くなったような気がする。 茶髪、という言葉も今はあまり聞かない。もちろん髪を染めている人は沢山いるが、同じ染めるにしても黒に近い暗…

高柳カヨ子
4か月前
15

298回 まんじゅうこわい

あなたは肉まん派ですか?それとも豚まん派?
これはもう地域によってはっきりと異なるのが明らかだ。東日本は肉まん、西日本は豚まんなのである。私は東京生まれなので、肉まん以外のなにものでもなかったのだが、長じて関西に行った時に「豚まん」という言葉を初めて聞いた。そして豚まんというからには「牛まん」「鶏まん」もあるのかと思ったが、当然そんなものはない。
西日本に於いて、肉といえば牛肉を指すのだと知ったの

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297回 ストレスフリー・ストマック

先日職場の健診で胃カメラの検査を受けた。
俗に言うところの胃カメラ、正式名称は上部消化管内視鏡である。今の職場では毎年の職員健診で胃カメラを義務付けているので、6年前からは毎年受診しているが、それまでは一度も受けたことがなかった。周囲で「死ぬかと思った」「辛かった」「2度とやりたくない」といった否定的意見ばかり聞いていたので、最初に検査を受ける時はかなり緊張したものである。
結果としては、自分胃カ

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296回 前髪よ、永遠なれ

かつて前髪は武装だった。
ロリィタなるもの前髪を上げてはならじ、という掟でもあるが如く、少女たちは己の前髪を死守していた。ある有名なロリィタ・モデルの前髪は、どんな突風でも一筋の乱れもないとの噂がまことしとやかに囁かれ、実際彼女の眉毛を見た人は誰もいない。

前髪は「作る」ものである。人間の髪の毛は360°全方向に向いて生えているので、そのまま伸ばせば顔に垂れ下がってくる。それを横に分けたり後ろに

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295回 11モンキーズ

猿害に悩まされている。猿害、ニホンザルによる被害のことだ。
いま住んでいる場所は標高600m程度の山麓部の林の中で、キツネ、タヌキ、キジなどの野生動物をよく見かける。時折ツキノワグマも降りてきて騒動になることもあり、以前洗濯物を干す紐をかけている裏の木に爪痕が付いていた時はぞっとした。リスもいたのだが、最近は林も切り開かれて新しい家が建つようになったので、姿を見かけなくなった。リスは梢伝いに移動す

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294回 What are you doing?

SNS疲れ、という言葉がある。
X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、Threads、Tumblr、BlueSky、TikTok。そのどれかに触れていない人は珍しいだろう。自分から積極的に書き込んだりはしていなくても、見ているだけ、たまにリアクションするだけ程度なら、殆どの人がなんらかのSNSには関係していると言える。好きなアーティストや友人知人、

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293回 ブライト・クリスタル

アメジストが好きだ。アメジスト、紫水晶。
2月の誕生石だそうだが、誕生日は8月なのでそれとは関係ない。紫色が好きなことに加え、水晶という石自体に惹かれるからだろう。貴石を用いたアクセサリーでも、ついアメジストが付いているものを選んでしまう。
レアストーンというわけではなく比較的産出量も多いので、それ程高価な石ではない。手頃な存在でありながら、その高貴な紫色からして何か特別な魅力を携えているのではな

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292回 頭痛肩こり龍之介

いわゆる頭痛持ちというやつである。
今でこそなんとか鎮痛剤を飲まなくてもやり過ごせることも多いが、若い頃は日常生活に支障をきたす程の痛みがしょっちゅうあったため、頭痛さえなければどんなに楽かと恨めしく思っていた。月の半分くらい、程度の差はあれど頭が痛いというのは、結構しんどいものだ。酷い時には起き上がれず、嘔気があるので食べる気にもなれない。寝ていても痛いのだが、起きて頭を動かすともっと痛くなるの

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291回 回転を加えてもっと

逆上がりが出来なかった。
小学生で出来なかったのだから、もちろん今でも出来ないだろう。
逆上がりが出来るか出来ないかは、子供にとっては重大な運命の分かれ目である。逆上がりが出来ないということは、つまり運動神経が悪いとの烙印を押されてしまうからだ。
体育自体は別に苦手ではなかったが、体育の中でも得意なものと苦手なものが結構はっきり分かれていて、その苦手なものの中でも鉄棒は特に苦手だったのだ。
もう半

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290回 Charley Horse

子供の頃からよく足が攣った。所謂こむら返りというやつである。
寝ている時のみならず、ただ立っているだけでも、突然ヤツは襲ってくる。激痛に悶絶しながらひたすら足を引っ張って伸ばしたり揉んだり、しばし唸りながら格闘するが、もう大丈夫かなと油断してちょっと足先を動かした途端、更なる試練に襲われる。子供の時は本当に毎日攣っていたような気がするが、そんなに運動していた訳でもないのに何故だろう。
大人になって

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289回 羽ばたきはやまない

今年もイワツバメがやってきた。
通勤途中のクルマの前を横切るその小さな姿は、初夏の訪れを告げる風物詩だ。これから田圃に水が入ると小さな虫も沢山発生するので、イワツバメも張り切って狩りまくることだろう。
高速で飛びながら空中でひらりと方向転換をするその機動力は、いつ見てもなんてよくできているのだろうと感心するばかり。夕暮れに飛び交うコウモリのヒラヒラと曲線を描く飛び方とは異なる、直線的に突っ込んでい

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288回 心地よく秘密めいた場所

墓参りにはずいぶん長いこと行っていない。
最後に行ったのは父親が亡くなった時だから、10年前か。
とにかく実家の墓がある寺は東京北部にあり、私が住んでいる場所からは遠くて行きにくい。おまけに現在は実家も引き払ってしまっているため、墓参りどころではない。
そもそも3回忌などの法事もやらなかったくらいドライな感覚をしているので、墓にも墓参りにも執着がないのだ。信州に住んでから、墓を守るために両養子(夫

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287回 サニーサイドアップ

「卵は物価の優等生」と言われて久しいが、最近ではどうもこれは怪しくなっている。
そもそも物価の上昇や円安などの影響を受けないわけがないのであって、それを安価なまま維持するとなればどこかに歪みが生じるのは当たり前だろう。
卵の安売りは、1人1パックまでと書かれたスーパーのチラシの目玉であった。ただそういった安売りの卵は、すぐに割れてしまいそうな程に殻が薄かったり、黄身が盛り上がらずのっぺりと潰れてい

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286回 アップデートの準備ができました

最近評判になったTVドラマのキーワードは「アップデート」だった。
昭和と令和の二つの時代を行き来することで、当時当たり前だった価値観が今や古く差別的で時代にそぐわないものであることを浮き彫りにするという、秀逸な脚本である。そしてこのドラマが優れているのは、単に前の時代が問題だったと糾弾するのではなく、現在もまた時代が進めばあの時の常識はおかしかったと言われるであろうという、相対的な可能性をきちんと

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285回 Under Pressure

年度末になるので早くストレスチェックを受けろと言われて、お馴染みの質問にPCで答えてきた。毎年やらされているので慣れたものだ。サクサクとチェックを入れて、ものの5分程で終了。
非常に沢山の仕事をしなければならないとか、注意を必要とする仕事だとか、頭痛や腰痛があるとかの質問に、うむうむと頷きながら「常にそうである」に沢山チェックを入れているにも関わらず、忘れた頃にやってくる結果には「大したことないで

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284回 歌の翼に

驚くべきことに、かつて歌を習っていた。
いや、これを読んでいる方は驚かなくていい。自分で驚いているのだ。
かつてと言っても小学生の頃だから、今はもう昔ではあるのだが、それでもしっかりお教室に通って習っていたにもかかわらず、このていたらく。
つまり何が言いたいかというと、私は歌が下手なのである。

カラオケに行く機会はまずないのだが、もし行ったとしても徹底的に他の人の歌を聞く側にまわる。聞くのは好き

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283回 My Hair is Good

最近若い人の髪の色が以前より暗くなったような気がする。
茶髪、という言葉も今はあまり聞かない。もちろん髪を染めている人は沢山いるが、同じ染めるにしても黒に近い暗めの色を選んだり、明るい色はせいぜいメッシュで入れる程度という印象を受けるのだ。
コギャルやアムラーが流行った90年代、病院の看護師さんたちの髪の色はそれはもう明るかった。殆ど金髪に近いまでに色を抜いた髪のスタッフもいて、結構自由だったと思

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