マガジンのカバー画像

後で読む

13
運営しているクリエイター

記事一覧

人間性、身体性、家族そしてテクノロジーが凝縮された長谷敏司の『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』は圧巻の出来映え!

人間性、身体性、家族そしてテクノロジーが凝縮された長谷敏司の『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』は圧巻の出来映え!

『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(長谷敏司、早川書房、2022年10月18日)発売と同時に購入し、一気読み………したかったのだけど、仕事がつまっていて送れてしまった。すごくもったいないことをした。本を読むのが遅くなったのをそんなに悔やむ必要はないと思うかもしれないが、限りある生きられる時間の1日をこの本を読んでいない状態ですごすことになったわけなので1日分の人生が薄くなった気分だ。
おおげさか

もっとみる
レビュー:長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

レビュー:長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

コンテンポラリーダンサーの護堂恒明は交通事故で大けがを負い、右足を失う。一時は絶望した恒明だが、同じダンスカンパニーに所属し、エンジニアでもある谷口から、AIで制御される最先端の義足を勧められて、ダンサーとしての復帰を目指す。谷口はロボットと人間が共演する新しいダンスの舞台を作りたいと考えており、恒明と共に新しいカンパニーを立ち上げる。谷口は単に人間の考えた振り付けをロボットが演じるのではなく、A

もっとみる
『サーミの血』監督インタビュー「自分はサーミ人なのにサーミを嫌う者がいます。アイデンティティを変えた者と、留まった者との対立が、私の一族の中にまだあるのです」

『サーミの血』監督インタビュー「自分はサーミ人なのにサーミを嫌う者がいます。アイデンティティを変えた者と、留まった者との対立が、私の一族の中にまだあるのです」

映画『アナと雪の女王2』のクリストフや、架空の民族「ノーサルドラ」のモデルになったと言われるのが、北欧の先住民「サーミ」です。アップリンクは、2017年に日本公開した映画『サーミの血』を2月7日(金)よりアップリンク渋谷にて1週間限定公開します。

監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いており、自身のルーツをテーマにした短編映画『Stoerre Vaerie』(2015)を撮った後、長編映

もっとみる
ドイツクーデター未遂事件続報 これから日常となる事件のパターンのひとつ

ドイツクーデター未遂事件続報 これから日常となる事件のパターンのひとつ

ドイツのクーデター未遂事件から1日経って新しい情報が公開されたので、追加するとともに、これまでに起きたこととの関連を整理します。
これまでの情報や今回関与のあったドイツのグループReichsbürgerについては昨日の記事を参照。
ドイツのクーデター未遂事件が暗示する新しい日常

●新情報下記の新情報が公開されていた。ソースは末尾参照。

・QAnonとReichsbürgerの関連についてよりは

もっとみる
くだらないものがわたしたちを救ってくれる|キム・ジュン【プロローグ公開】

くだらないものがわたしたちを救ってくれる|キム・ジュン【プロローグ公開】

2022年7月8日に、キム・ジュン 著『くだらないものがわたしたちを救ってくれる』(米津篤八 訳)が配本となります。

本書は、基礎研究にたいする風当たりの強い韓国で、〝研究奴隷〟としてなんとか日々を生き延びながら、最愛の〝推し〟こと「線虫」を研究する、1990年生まれの若き科学者が綴ったエッセイです。

(今の社会では)くだらない(とされがちな)ものや〝推し〟に救われたことがある人には、きっと刺

もっとみる

【賛同者一覧】入管法改正案について、G7議長国として国際人権基準に則った審議を求める研究者声明

声明文呼びかけ人(29名)阿部浩己(明治学院大学教授、国際法、国際人権・難民法)、安藤由香里(大阪大学招へい教授、国際法・国際人権法)、五十嵐正博(金沢大学・神戸大学名誉教授、国際法)、稲葉奈々子(上智大学教授、社会学)、上村英明(恵泉女学園大学名誉教授、国際人権法、平和研究)、近江美保(神奈川大学教授、国際人権法)、岸見太一(福島大学准教授、政治学・政治思想)、北村泰三(中央大学名誉教授、国際人

もっとみる

インボイス制度に関する現場の苦悩

電子書籍の取次サービスを運営しています。
公正取引委員会から電話が1本。

インボイス制度導入に向け、先月から弊社取次サービス利用作家 数百名に対して、インボイス適格請求書発行事業者登録番号の取得状況を確認しています。
登録予定のない作家には、「制度開始の10月以降、今までロイヤリティに消費税相当分10%を加算した金額をお支払いしていたものから、消費税相当分10%を加算しない金額をお支払いするとい

もっとみる
現代でも使える名著『クーデターの技術』を読んだ

現代でも使える名著『クーデターの技術』を読んだ

『クーデターの技術』(クルツィオ・マラパルテ、中公文庫、2019年6月20日)を読んだ。

●本書の内容本書はタイトル通りクーデターを成功させるための方法論と、防御するための方法論を著者の生の体験をもとにまとめたものである。

本書は90年前、スターリン、ムッソリーニ、ヒトラーの時代に書かれたもので作者はその時代に生き、実際に彼らと直接、間接に関わったことがある。そんな昔の本がいまどき役に立つのか

もっとみる
書籍『ニュー・ダッド:あたらしい時代のあたらしいおっさん』

書籍『ニュー・ダッド:あたらしい時代のあたらしいおっさん』

木津 毅 2022 筑摩書房

入院初日、真っ先に読んだのがこの本だ。
一章はずっと前に読んでいたのであるが、ようやくゆっくりと読む時間を持つことができたのだ。
読んでいて楽しくなるし、嬉しくなるし、心が優しくなって、にんげんが愛しくなるような、そういう人をハッピーにする本だと思う。

フェミニズムは、男性性を批判したり、男性的な文化や価値観を語る言葉はいっぱい持っているけれど、男性の魅力や理想像

もっとみる
『AIとSF』収録短編、「準備がいつまで経っても終わらない件」あとがき

『AIとSF』収録短編、「準備がいつまで経っても終わらない件」あとがき

2023年5月23日、日本SF作家クラブ編『AIとSF』が、早川書房から刊行されました。
長谷も短編「準備がいつまで経っても終わらない件」を、収録いただいています。

今回は、2023年前半の今、世に出ることに意味がある短編なので、忘れないうちに作品についての文章を残しておくことにしました。
短編にあとがきをつけるのは、短編集のとき、まとめてやるのですが、今だから文章にする意味があることもありそう

もっとみる
アメリカの過激派を増幅するロシアのSNS

アメリカの過激派を増幅するロシアのSNS

●重要なポイント・ロシアのSNSはアメリカの過激派(白人至上主義者や陰謀論者など)のネット上の活動拠点となっている。
・彼らはロシアのプロパガンダメディア(RTやスプートニクなど)へのリンクを共有していた。
・アメリカの4chanやGabも同様の動きをしている。
・アメリカの過激派はロシアのプロパガンダメディアの影響を受けているが、ロシアが意図的に操っているわけではない。
・このことはボットやトロ

もっとみる
AI Bunchoモデルで何か物語めいたものを生成する

AI Bunchoモデルで何か物語めいたものを生成する

AI文鳥というAI小説作成支援サービスのAIモデルが公開された。

もともと小説を書くためのAIなので物語には強いだろう。しかも日本製だし。

ということで大先生が早速試していた。

僕も真似をしてさっそく使ってみたのだが、そのままだとかなり短い文章しか出てこない。使い方に工夫が必要そうである。

そこでこんなコードを書いた。

def b(prompt): input_ids = toke

もっとみる

弱者男性が救われる日は…多分来ない

はじめに2017年にアメリカのいわゆる落ちこぼれ男子問題に焦点を当てた記事を書きましたが(アメリカの「落ちこぼれ男子問題」は日本でも火を噴くか?)、この落ちこぼれ男子問題を放置した結果、米国でいわゆる弱者男性が生み出され続けています。

そして、この弱者男性問題を取り扱った、Of Boys and Men: Why the Modern Male Is Struggling, Why It Mat

もっとみる