一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員…

一田和樹のメモ帳

広義の文筆家。小説家と呼ばれることが多い。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員 https://ichida-kazuki.com 連絡先 https://ichida-kazuki.com/post/650695238157058048/

マガジン

  • 民主主義の現在

    民主主義に関する資料や記事などを紹介します

  • デジタル権威主義

    デジタル権威主義についての情報を発信してゆきます。 当面は備忘録代わりにニューズウィーク日本版などに発表した記事の資料を掲載します。余裕できたらオリジナル記事を書くかもしれません。

  • 余談ですが……

    日常的なものごとです

  • ファクトチェックを取り巻く課題

    ファクトチェックを取り巻く課題をビジネスなどの側面。特にパトロンとなっているフェイスブックやグーグルの問題点を取り上げています。

  • 2022年ウクライナ関連

    ウクライナ関連のネット世論操作などの記事です

最近の記事

欧米の轍を神速で駆け抜ける日本の誤・偽情報対策

すでに何度か書いたようにアメリカやヨーロッパで行われている誤・偽情報対策には検証された効果なく、逆効果になっている可能性が指摘されている。そのことを如実に示しているのは民主主義関連指標の悪化と、SNSに起因する暴力行為の増加や抗議活動の大規模化だ。誤・偽情報が社会を不安定化し、混乱に陥れるものであるなら、その成果はこうした指標によって確認できる。結果としてはやればやるほど悪くなっている。 最近の論文や資料から見えてくるデジタル影響工作対策の問題点 偏りがあるうえ有効の検証が

    • 世界最大の民主主義イベント インド選挙の実態

      2024年4月19日Asia Democracy Research Network(ADRN)のADRN Issue BriefingにNiranjan Sahooの「Decoding India’s 2024 National Elections」( http://www.adrnresearch.org/publications/list.php?cid=1&idx=358&ckattempt=3 )が掲載された。この論考は注目を浴びる世界最大の「民主主義国」インドの選挙

      • AIのもたらす経済変化が極右を増加させる

        ブルッキングス研究所が4月25日に公開した「Does automation increase support for the far right?」( https://www.brookings.edu/articles/does-automation-increase-support-for-the-far-right/ )によると、作業の自動化によって起こる経済不安は政治的偏向を強める傾向がある。 ドイツ、スイス、イギリスでは仕事を失ったり辞めたりした労働者は左翼政党を支

        • ロシア影響工作には効果があるのか? 論文からわかる答え

          デジタル影響工作が人間の行動に与える影響については科学的に検証され、答えが出ているわけではない。では、なぜこれほど騒ぎになっているかといえば攻撃が可視化されているからである。攻撃されているのが国民にわかる状態である以上、対策を行わないわけにはいかないためだろう。しかし、ニュースで取り上げたり、対策を大々的に行うことは警戒主義に陥る可能性が高い。 実際、効果についての検証を行った論文のひとつは、直接の効果は検証できなかったものの、二次効果の可能性に言及している。2016年のアメ

        欧米の轍を神速で駆け抜ける日本の誤・偽情報対策

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        • 民主主義の現在
          323本
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        • 2022年ウクライナ関連
          81本
        • 定期資料置き場
          21本
          ¥10,000

        記事

          中国で新設された情報支援部隊を煽る日本のメディアと、防衛研究所などの温度差

          「中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?」( https://note.com/ichi_twnovel/n/n2ad2a18b196e )で書いたように、NHK、読売、日本経済新聞、朝日新聞など大手メディアの多くは中国発の情報をそのままあるいは大きな変化とか脅威増大ととれる表現を用いていた。 一方、前・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和の「突然発表された中国人民解放軍の大改革、その詳細とこれまでの経緯」( https://jbpres

          中国で新設された情報支援部隊を煽る日本のメディアと、防衛研究所などの温度差

          ステージが変わったアメリカのデジタル影響工作 主役は中露イランではなく国内アクター?

          ●概要アメリカのデジタル影響工作が変化している。予想された当然の変化だが、ここまで無策だったことに驚く。下記の記事によると、アメリカで匿名のX利用者がヘイトや偽情報を発言するとイーロン・マスクやトランプなどウルトラ・インフルエンサーが拡散するようになっている。イーロン・マスクが閲覧数に応じた報酬を与えるようにしたため、それを狙う利用者はイーロン・マスクやトランプなどのウルトラ・インフルエンサーが好むヘイト、偽情報、陰謀論を投稿を増やす。こうしたエコシステムが出来ている。 A

          ステージが変わったアメリカのデジタル影響工作 主役は中露イランではなく国内アクター?

          デジタル影響工作ゲームが紹介されていた 真偽判定、なりきりBBCレポーター、世論操作のシミュレーションまで

          ゲームで学ぶデジタル影響工作というわけで、「Educational Games」( https://conflictmisinfo.org/educational-games/ )で8つのゲームが紹介されていた。 なお、ゲームの安全性が保証されているわけではないので利用はご自身の責任でお願いします。 1.EUvsDisinfo Quiz( https://euvsdisinfo.eu/quizzes/euvsdisinfo/ ) 情報の真偽判定ゲーム。画像と文章を読んで真偽

          デジタル影響工作ゲームが紹介されていた 真偽判定、なりきりBBCレポーター、世論操作のシミュレーションまで

          中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?

          まだあまり情報が出ていませんが、どうも戦略支援部隊(SSF)がうまくいかなかったために組織を変えることにしたという見方も多いようです。私は軍事には素人なので、あくまで主としてデジタル影響工作をいろいろ調べていて感じた個人的な感想であり、備忘録の思いつきメモとしてご覧ください。 もちろん、日本や台湾では認知戦、心理戦に本格的に対応した新部隊の設立ということで危機感を持った報道が多くなることが予想される。言い方は悪いが、ウクライナとガザさらには中東情勢悪化から、台湾への国際的な

          中国、戦略支援部隊の廃止と組織変更 日本、台湾のメディアを利用して失敗を糊塗?

          気になった論文や記事2024年4月19日

          気になった論文や記事2024年4月19日資料 4月13日から4月19日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。 ●アフガニスタンで新しいファクトチェック団体ができたアフガニスタンのメディアEtilaatrozがCIRのAfghan Witness(AW)の支援を受けてファクトチェック部門Sanjahを立ち上げた。Sanjahは、アフガニスタンの政府関係者、メディア、その他の機関や組織からの主張のファク

          気になった論文や記事2024年4月19日

          深刻化するドイツの亡命・移民政策 ISDが分析した2023年の状況

          ●概要ISDが2023年のドイツの亡命・移民についてのSNSの状況を分析したレポート「Changing tides: Discourse towards migrants and asylum seekers on Facebook and X in Germany in 2023」( https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/changing-tides-discourse-towards-migrants-and-asylu

          深刻化するドイツの亡命・移民政策 ISDが分析した2023年の状況

          殺人まで拡大した「AI意思決定ロンダリング」 972マガジンのイスラエルの殺人指示AIラベンダーの記事が注目

          2024年4月3日に掲載された972マガジンの「‘Lavender’: The AI machine directing Israel’s bombing spree in Gaza」( https://www.972mag.com/lavender-ai-israeli-army-gaza/ ) が話題になっている。 イスラエル軍が使用しているAI「ラベンダー」は殺人の標的を特定しており、その精度は90%である。残りの10%は無関係の一般市民などということになる。通常時は

          殺人まで拡大した「AI意思決定ロンダリング」 972マガジンのイスラエルの殺人指示AIラベンダーの記事が注目

          中露イランがアメリカ大統領選に対するデジタル影響工作に注力というMSのレポートはちょっとよくわからない

          マイクロソフト社は2024年4月17日、「Nation-states engage in US-focused influence operations ahead of US presidential election」( https://blogs.microsoft.com/wp-content/uploads/prod/sites/5/2024/04/MTAC-Report-Elections-Report-Nation-states-engage-in-US-foc

          中露イランがアメリカ大統領選に対するデジタル影響工作に注力というMSのレポートはちょっとよくわからない

          2日と$105ドルで自動的に記事を更新する生成AIプロパガンダサイトを作った記事

          Wall Street Journalに偽情報対策で知られるNewsGuardの編集者が寄稿した記事「How I Built an AI-Powered, Self-Running Propaganda Machine for $105」( https://www.wsj.com/politics/how-i-built-an-ai-powered-self-running-propaganda-machine-for-105-e9888705 )で、2日間と$105ドルでプ

          2日と$105ドルで自動的に記事を更新する生成AIプロパガンダサイトを作った記事

          中国のCVERCがVolt Typhoonはアメリカの言いがかりという報告書を公開し、ナラティブを流布

          中国のCVERC(国家计算机病毒应急处理中心)はサイバー攻撃などについてのナラティブを担当するデジタル影響工作部隊であり、以前から欧米のサイバー攻撃に関する主張を覆すような報告書を公開していた。 中国影響工作における国家计算机病毒应急处理中心(CVERC)の役割 https://note.com/ichi_twnovel/n/na8d18436ddc9 今回はVolt Typhoonが中国由来であることを否定するレポート「Volt Typhoon: A Conspirat

          中国のCVERCがVolt Typhoonはアメリカの言いがかりという報告書を公開し、ナラティブを流布

          「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」は日本では貴重な包括的な調査だった

          昨日(2024年4月16日)、公開された国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」( https://www.glocom.ac.jp/activities/project/9439 を読んだ。といってもざっと1回読んだだけなので見落としや勘違いがあるかもしれない。あくまで自分用のメモとして書き残しておく。 ●概要国際大学グローバル・コミュニケーション・センターは毎年こうした調査を行っており、昨日公開されたの

          「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」は日本では貴重な包括的な調査だった

          情報流通への国家介入が話題になっているらしい

          ●なにが問題となったか 話題となっているのは総務省「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」第14回ワーキンググループにおいて京都大学大学院法学研究科教授曽我部真裕のプレゼンテーション「「情報流通の健全性」と憲法」」という発表。その資料は「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会 ワーキンググループ(第14回)配付資料」のページ( https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital

          情報流通への国家介入が話題になっているらしい