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酒や料理

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大好きなお酒と大好きな料理についての文章、まとめました。
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記事一覧

店主のやる気がなくなる前に。

店主のやる気がなくなる前に。

上七軒の界隈の中、もう少し詳しくいうならば、北野天満宮の目の前の交差点から南東の方へ斜めに伸びる道を下り、しばらくした後、東西にまっすぐの道と交わった点の鋭角にあたる場所に誠養軒はある。中華そばの誠養軒を知ったのはつい最近のことだけれど、近くの古本屋へ立ち寄ったついでにふらっと寄ってみようかということで、誠養軒の暖簾を潜り、お店の扉を開けたのである。

店に入る。テーブル席はたった2つ。カウンター

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瓶麦酒至上主義

瓶麦酒至上主義

例えば、居酒屋にてとりあえず生ビールを注文したとする。いうまでもなく美味しい。でも生ビールって、サーバーの手入れを頻繁に……正確には毎日行わなければビールの味が落ちてしまう。というのはよく聞く話だ。けれど、居酒屋の多忙な業務の中で毎日ビールサーバーを掃除をしているとは思えないし、そんな暇もないと思う。そういう面で、かもがわカフェのカウンターでビールを注文すれば、目の前で小瓶を開けてくれて、そのまま

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チー牛に添えられるのはいつだってタバスコだ

チー牛に添えられるのはいつだってタバスコだ

 味の好みなんてものは、自らの記憶や何気のない体験によって、いとも簡単に変えられてしまうほどに脆い幻想のようなものであるのだ。もちろん、年齢を経るにつれて味覚も変化してゆく。僕は酒が好きになってから、それまで好きではなかった茄子が好物になったし、そんな僕を茄子の方も好きになってくれていると思う。

 僕はすき家が大好きだ。少なくとも1ヶ月に1回はすき家に行きたくなる。小さい頃から決まって注文するの

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二度と行けないあの店で:西陣亭

二度と行けないあの店で:西陣亭

 人間には大きく分けて2種類あると聞くが、僕は、いわゆる「町中華」と呼ばれる中華を好む種類の人間であるようだ。満完全席のような高級中華でも、香辛料がふんだんに使われるいかにも本格的な中華でもない。おじいちゃんが1人でフライパンを振っている中華屋だ。まさに日本的な味付けがなされている中華屋に行っては、2~3品の料理と瓶ビールをいただく。これぞ「町中華」を堪能する極意なのである。

 今出川通りから智

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焼肉・オン・ザ・フライパン

焼肉・オン・ザ・フライパン

 ミシマ社での仕事を終え、出町柳枡形商店街にて、待ち人を待っていると、須藤蓮とユキカゲが出町柳枡形商店街の西側の入り口からやってくる。というのは、僕らはこの場所で肉を調達しないといけないのだ。およそ1週間前、同商店街の福引に置いてお肉交換券3,000円分を引き当てたぼくの家で、イベントの打ち上げとして、焼肉パーティーをやろうということになり、その材料調達のために集まったというわけである。古くから地

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地球屋という混沌

地球屋という混沌

 京都には、人の数よりも居酒屋の数の方が多い。というと過言なのだが、実際に街を歩いていても居酒屋の方が多いのではないかと錯覚してしまうほど、数は多いし、それぞれがちゃんと賑わっている。いろんな酒の飲み方ができる、いい町だ。

 四条河原町を少し南に下った場所に、地球屋はある。なぜ地球屋なのか。店の前に地球儀が置かれているからだろうか。いや、地球儀は後付けの理由に違いない。理由なんて、そのほとんどは

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餃子となると、話はどこからでも始まる

餃子となると、話はどこからでも始まる

 「なかじま」という餃子屋さんが美味しいという噂が『逆光』チームの中で出回った。京都は堀川丸太町から徒歩5分ほど。夷川通を少し東に進むと、白い看板が見えてくる。「夷川餃子なかじま」だ。確かここは聞いたことがある。銭湯と一緒になっているはずだ。最近はさうなブームもあり、銭湯の勢いが強いと見える(ちなみにミシマ社からも銭湯ネコ漫画『みゃーこ湯のトタンくん』が発売されているので是非とも)。

夷川

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夜の広島でずっと飲み歩いていたい

夜の広島でずっと飲み歩いていたい

モンクという名のカフェを出てもまだおやつの時間と言われる頃だ。僕とフクナガはこっちでもない、あっちでもないと言いながら、広島の街を歩き回り、ようやく1軒の居酒屋を見つけ、入ることにする。カウンターでの立ち飲みと、店の奥の方では角打ちのような簡易的なテーブルが設けられ、とはいえ、落ち着いた雰囲気できれいな内装で、メニューも凝っている。例えば、ポテトサラダには麻婆がかかっているし、広島菜で作られたキム

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酒を飲むのって、結構お金がかかる

酒を飲むのって、結構お金がかかる

 最近、あることに気がついた。お酒を飲むというのは、お金がかかる。暇さえあれば古着屋を巡り、めぼしいものはとりあえず買い漁っていた約2年前、給料日前はカツカツな経済状態であった。そして現在、服なんてほとんど買わなくなった。1ヶ月に1度ほど馴染みの古着屋に顔を出し、2~3ヶ月に1度くらい服を買う。1ヶ月の支出のうち、服に対する支出は大きく減少した。
 だが、給料日前にカツカツになる経済状態に変化はな

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スーパーでおにぎりとビールを買った

スーパーでおにぎりとビールを買った

 某出版社でのアルバイトを終えた僕は、家の近くのスーパーによる。夜ご飯を手に入れるためだ。僕の自炊と言えば、4パターンくらいしかない。レトルトカレー・レトルトおでん・冷凍餃子・野菜炒め。この4種類である。レトルトカレーについては、祖母から定期的に送られてくる。鍋で湯煎をしたり、お皿に移し替えてレンジで温めることすら面倒が臭い僕は、T-faLの水の中にレトルトカレーを打ち込み、沸騰させる。そうすると

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いかにも中国的な中国料理店、龍門

いかにも中国的な中国料理店、龍門

 「龍」という字がつく中華料理店が多いのは、京都特有のものなのだろうか。それとも、全国的に中華料理店の屋号には「龍」という文字がつけられやすいのだろうか。僕が好きな「龍鳳」という中華料理店もそうだし、「大登龍」というお店も見たことがある。ちょっと検索してみれば、白竜、龍園、龍客、龍香……たくさん中華料理店が出てきた。
 「龍」というのは中国の伝説で出てくる生き物だという話を聞いたことがある。そう思

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呑んで愉快、読んでは深い、お酒至上主義

呑んで愉快、読んでは深い、お酒至上主義

 個人的な趣向の話をするならば、僕はどちらかというと大衆的な居酒屋で、友達とくだらない話をしながら、時にたばこを吸って、気持ちよく酔っぱらうお酒の飲み方が大好きだ。「ビールは最初のひと口だけなら美味しいんだけどなぁ」なんて言いながら梅酒とチューハイばかり飲んでいた頃が懐かしい僕は、今ではビールとウイスキーが大好きで、帰宅時には缶ビールを買って帰ることが習慣となり、ひとり暮らしをしているアパートの部

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鉄板焼き居酒屋での大三元、すなわち役満

鉄板焼き居酒屋での大三元、すなわち役満

 バイト先であるGAPから電話がかかって来た。「バイトの子が風邪を引いて、明日の夕方以降のシフトがマネージャー1人になっちゃったから入れない?」と聞かれ、ぼくは悩んだ。その日の夜は、六曜社地下店マスターであるオクノ修さんのライブを観に行こうと思っていた。チケットとかはないので、金銭的な無駄が生じることはないのだけれど、せっかくの機会だし、もしかすると修さんとお話ができるかもしれない。なんとしてもラ

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身をもって感じる「オーセンティック」

身をもって感じる「オーセンティック」

 これは、とあるバーに行ったときのお話。「次行くところは行きつけのところなんだけど、オーセンティックなバーで…」と話している先輩2人の横で、「オーセンティック」という言葉を使ったことがない僕は、「オーセンティック」について考えていた。「オーセンティック」ということは、おそらく「オーセント」という言葉の形容詞だろう。オーセント…と言ってもよくわからない。「オーセント」と口に出してみてもイメージが膨ら

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