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ドMの晩酌 〜なぜか、がんばってしまうアナタへ〜

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記事一覧

《ドMの晩酌:第一夜》 心拍数マックスの人生

《ドMの晩酌:第一夜》 心拍数マックスの人生

長男からのツッコミ
私は現在、45歳の会社員、10歳と8歳の息子を育てているシングルマザーだ。

5年ほど前のある日、息子たちがミニカーで遊んでいる姿を横目に、茶碗を洗っていた時のこと。

長男がミニカーを床に走らせながら私のほうを見てニコリと微笑んだ。
それが実際にあった出来事だ。

しかし私には、長男が微笑みながら「お母さんってさー、パッと見ちゃんとしてそうだけど、全然自分の人生生きてないよね

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《ドMの晩酌:第二夜》 ドMのバイト(ラーメン屋 : 前編)

《ドMの晩酌:第二夜》 ドMのバイト(ラーメン屋 : 前編)

滑った瞬間に思い出した過去息子たちはラーメンが好きだ。私がたまに仕事で遅くなった時は、彼らと駅前で待ち合わせ、ラーメン屋に行く。もちろん私には大切な晩酌が控えているため、息子たちだけがカウンターに座る。その間、私は、待っている客など誰もいないのに、脇のベンチに座っている。

お店の主人はこの状況に慣れているので今さら何も言わないが、周りの客は私たち親子をどう思っているのだろうか。貧乏ながらも子供に

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《ドMの晩酌:第三夜》 セミのチャイム

《ドMの晩酌:第三夜》 セミのチャイム

今の時代なら通報されるレベル私は虫が怖い。

私も「いい大人」と言われる年齢になったので、その理由を論理的に分析するならば、それは「次の一手が読めない」ということだと思っている。

虫はどこを見ているかよくわからないし、どっちに飛ぶのか動くのか予測がつかない。それが心底怖いのだ。

私は、幼い頃から相手の心情を推察し、自分から積極的に働きかけることで、家庭内の不穏な空気を変えようとしてきた。

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《ドMの晩酌:第四夜》 女囚ノリコ

《ドMの晩酌:第四夜》 女囚ノリコ

ドMな誓い私には十歳と八歳の元気すぎる息子がいる。
正直、私は子供好きな人間ではないし、母親業よりも仕事の方が好きな人間だ。

そんな私でも、子供を育てる上で努力し続けていることがある。
いや、努力というよりも「誓い」と言ったほうが合っているかもしれない。
この誓いを破ったら、とてつもない罪悪感が襲ってくることを私は知っている。

その誓いとは、彼らに対して「誠実さ」と「正直さ」を徹底することだ。

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《ドMの晩酌:第五夜》 謎の中国人

《ドMの晩酌:第五夜》 謎の中国人

ドMのこだわり私は、ずっと「自分の人生」を生きてこなかった。
というよりも、かなり大人になるまで、そんな生き方があることを知らなかった。

いつだって「相手が望む自分」でいようと努め、二重以上の人格を前のめりに演じてきた。

しかし、「ノリコさん、●●して〜」といった要望にそのまま答えるのは、正直つまらない。

要望に対してそのまま応えたことも無くはないが、そういう時はいつだって「こんなことに時間

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《ドMの晩酌:第六夜》 意図せぬ筋トレ

《ドMの晩酌:第六夜》 意図せぬ筋トレ

もう一人のターミネーター昨日の晩酌(第五夜)で、当時の自分の母親を「ターミネーター」に例えたが、実は、もう一人、私の人生において、もっと「ターミネーター」な人物がいたことを思い出した。

彼もまた、嫉妬してしまうほど、私の想像を超えた人物であり、私のドM力を遺憾なく発揮させてくれた人物でもある。今夜の晩酌は、その、もう一人の「ターミネーター」について思い出してみることにする。

あれは私が高校一年

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《ドMの晩酌:第七夜》 役に立たない牧羊犬

《ドMの晩酌:第七夜》 役に立たない牧羊犬

お母さん、僕、犬を飼いたい仕事から帰宅して、私が一番最初にすることは掃除機をかけることだ。

なぜなら、息子たちが学校から帰宅後に食べたお菓子のかけらがカッピカピになって、まるで「マキビシ」の様に床に散乱しているからだ。

それだけでなく、お煎餅などを個装している袋も床に散乱している。

当然、それらはソファーの隙間にも、しっかりはさまっている。

「もー、お菓子のかけらやら、袋やら、捨てられない

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《ドMの晩酌:第八夜》 ドM流試験勉強法

《ドMの晩酌:第八夜》 ドM流試験勉強法

アドラー心理学を都合よくつい先日、中学1年生になった長男の中間試験なるものがあった。

私の息子は「やりたいこと」で日常を埋め尽くすことに1ミリの不安も持たない人種らしく、各教科に2時間ほど費やしたレベルで、それはまぁ堂々と試験を受けに出かけて行った。

親としていろいろと思うことはあるが、やれと言ってやるわけでもない。

アドラー心理学のアルフレッド・アドラー氏も「子供が勉強するしないは子供の問

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《ドMの晩酌:第九夜》 ドMのバイト(ラーメン屋 : 後編)

《ドMの晩酌:第九夜》 ドMのバイト(ラーメン屋 : 後編)

焦らされる感じがたまらない秋。乾燥と闘うシーズン到来だ。

母親として水仕事を避けて通ることはできないため、この季節からハンドクリーム様に頼る生活がスタートするわけだが、塗ればスマホがテッカテカになるし、ちょっとしっとりしたかな、というところで次の食事の準備がやってくるわけで、無駄にハンドクリームを消費してるだけなんじゃないかとすら思ってしまう。

息子たちがオンライン授業を選択したために、平日の

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《ドMの晩酌:第十夜》 海水浴には瓜だけ持って

《ドMの晩酌:第十夜》 海水浴には瓜だけ持って

「あの感じ」を味わいたいうー、朝晩冷える。この季節に入ると、手肌の乾燥だけでなく足の冷えが気になる。何をしていても「足が冷たい」という意識が頭の片隅にある。

時間がある時は、桶にお湯を張り足湯に入ることもあるが、息子たちが目を輝かせ「わーい!足湯だ!ボクも入る!」と、靴下の毛玉のついた足を突っ込んできて、みるみるお湯の表面が汚れ温度が下がっていく。

足を真っ赤にしてご満悦になった息子たちが去っ

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《ドMの晩酌:第11夜》 戦時中の女学生

《ドMの晩酌:第11夜》 戦時中の女学生

パートナーに求めること最近、息子たちとの早歩きでの散歩やジョギングを日課にしている。

我が家にしては珍しく1ヶ月以上続いているので、ここは力強く「日課」と書いてみた。

9月以降、息子たちがオンライン授業を選択している(というか、タブレットでオンライン授業を映しながら、引きこもり生活を楽しんでいると言ったほうが正確かもしれない)ため、彼らはずーっと家にいる。

そして授業が終わったら終わったで、

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《ドMの晩酌:第12夜》 哀犬チョンボ

《ドMの晩酌:第12夜》 哀犬チョンボ

大いなる勘違い最近、自分の物忘れが顕著になっているように感じる。

人の名前や誕生日を覚えることは昔から苦手ではあるが、これについては全く気になっていない。

なぜなら、私は、その人の雰囲気や交わした会話、自分自身に湧き上がった感情などを映像のように記憶できるという特技があり、久々に対面しても名前を呼ぶ以上の関わりで余裕でリカバリーできてしまう。

しかし、細部まで過去のことを覚えすぎているために

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《ドMの晩酌:第13夜》 理想の家を造りたい

《ドMの晩酌:第13夜》 理想の家を造りたい

別次元のごっこあそび
オンライン授業を選択中の長男、自由登校スタイルの次男と、私はここ数ヶ月ずっと一緒に過ごしている。最初の頃はリラックスできなかったが、今ではすっかりそれに慣れ、各々好きなように過ごしている。

我が家の暗黙のルールは、誰かがオンラインゲームや電話で話し始めたら、残りの二名は黙るということ。

最近は、次男が仲間と会話しながらオンラインゲームをしている時間が長いため、長男と私が長

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《ドMの晩酌:第14夜》 忍者の修行

《ドMの晩酌:第14夜》 忍者の修行

無理することが生き甲斐朝のひと通りの家事を終え、おもむろにFacebookを開くと、6年前に投稿した写真が出てきた。どこかの公園で息子たちが泥んこになっている写真だ。

あー、この頃は彼らのお世話が大変だったな。

息子たちに当時の苦労話を聞いてもらおうとスマホの写真を見せるも「うんうん、お母さん、よくがんばったよね」と、ゲームに目線を向けたまま、かぶり気味にねぎらいの言葉を返すだけ。

はいはい

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