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【800字コラム】 英会話って

語学に興味がある人って、独特の嗅覚のようなものがある気がする。
一般には余り知られない言葉の由来や歴史的背景にも興味があって、いつでも貪欲に吸収しているから、単語にとどまらない知識と教養が深まって、ますます語彙や表現に幅や厚みがでてくることが多い。

反対に、一種のファッションで語学ができるつもりの顔をしている人種は、ひとつの単語にひとつの意味だけ当てはめて他の意味を一切認めなかったり、僕から見ても分かってしまうほど出鱈目な英作文をSNSにアップしていたり、ひどいのになると「この単語は英和辞典に載ってないから和製英語だ(!)」と言い出したりする。
その人の貧しい知識だけで見渡す世界は視野が狭くなるし、話していてもつまらない。

僕は努めて前者でありたいと思うけれど、馬齢を重ねるにつれ、自分の過去の経験だけがよりどころになって、知性も体験もアップデートされずに、自分の土俵で相撲を取りたいだけの後者になってしまわないよう自戒せねばなるまい。
僕がいろんな本を読むのも、自分に経験がないという自覚があって、それを何らかの手段で補わなければ自分のものになってゆかないと強く思うから。

ところで僕は「英会話」なるジャンルがよく分からない。
英語で会話するのは目的ではなく手段。
英語で何を話したいから学ぶっていう視点がないのに英会話を目的化してどぉするんだろう、ということ。
もちろん、海外駐在で現地に暮らすといった特定の目的があってスクールに通うことはあるし、僕も駐在前にイタリア語学校に通っていたことがあるけど、仕事で使いもしないのに
「いやー最近英会話やってるんですよボク」
などと言ってくる人は、一体何がしたいんだろうと考えてしまう。

パン屋に行って「パンください!」と言われても、ふつうなら店員は困ってしまうと思うんだけど、その得体の知れないパンを提供しているのが英会話学校なのだろうか。
逆に興味が湧いてきてしまう。

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