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遊んだもの、楽しんだものの感想文
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記事一覧

読書感想文『推し、燃ゆ』

 「推し」が燃えた。
 一人のアイドルを推すことに全てを捧げ、同時にそれを支えとして生きている女子高生、あかり。「推し」の炎上を受けて、彼女はより一層推しのことを想い、生きていこうとするのだが……

「推し」は一推しの「推し」と聞いたことがあるけれど、今ではもっとたくさんの意味が込められているんじゃないだろうか。
 主人公の「推し」に対する好きとも少し違う、信仰に近い純粋な感情と、どうにもならない

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読書記録『俳句いきなり入門』

『俳句いきなり入門』千野 帽子/著 NHK出版新書

 本書は「句会があるから俳句を作る」をスタート地点にして、様々な俳句やその入門書を取り上げながら、基本的なルールと作句法を学ぶ入門書。
先に読んだ『やくざときどきピアノ』と同じく、この本も書いてある一言一言にパワーがあって読んでいて面白かった。
事あるごとに

「君、俳句向いてないねえ。やめたほうがいいよ」
「君、俳句下手だねえ。やめたほうがい

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読書記録『グレーテルの白い小鳥』

読書記録
『グレーテルの白い小鳥』斉藤洋/作 森泉岳土/絵 偕成社

 図書館の児童読書相談コーナーで働く私のもとには、相談だけでなく、なぜか不思議な話が集まってくる。
 図書館を舞台にした奇譚集「ビブリオ・ファンタジア」の三作目。
 表紙の色、デザイン、挿絵大好き。
このシリーズの一作目『アリスのウサギ』のプロローグは読んでいてすごく気持ちが良い。主人公が図書館で働くことになる理由がすごく好きな

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読書記録 絵本『のりかえの旅』

読書記録
『のりかえの旅』長田真作/作 あすなろ書房 

 表紙はぽつねんとバス停。すでに可愛い。本屋で見かけて一目ぼれした。
 どうやら主人公は旅へ出かけるようで、ページをめくるたびにいろんな乗り物に乗り換えていきます。それだけなんだけどすっごい面白かった。出てくる乗り物もどれも可愛らしい。描かれているのは乗り物と場所。立体じゃなくて平面で描いてあるからかなあ、想像する余白がたっぷりあって、今、

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読書感想文『あの本は読まれているか』を読んだ。

『あの本は読まれているか』
ラーラ・プレスコット/著 吉澤 康子/訳 東京創元社

 あらすじ
 冷戦中、CIAはある作戦に着手した。ソ連で書かれながら反体制的とみなされ出版禁止となった小説『ドクトル・ジバゴ』を入手し、それをソ連国民の手に渡すこと。文学の力で人々を、世界を変えようというのだ。

 ロシアからアメリカへ渡ってきたCIAの新人タイピスト、イリーナ。
 一線から退いていたCIAのベテラ

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『ピクプリオバーガーを知っていますか?』バーガーバーガー感想文

『ピクプリオバーガーを知っていますか?』バーガーバーガー感想文

 はじめに ピクプリオバーガーを知っていますか? 
 え?ご存じない?あのシンプルながらバカ売れしたハンバーガーを?
 では『バーガーバーガー』をご存知ですか? こちらなら聞いたことがある人も多いのではないかと思います。『バーガーバーガー』は1997年にギャップスから発売された、経営シミュレーションゲームです。プレイヤーはハンバーガーチェーン店のオーナーとなり、経営と同時になんと、ハンバーガーを自

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『CITY』感想 あらゐけいいち先生に謝りたい

 整理したほうがいいんだけど、読み終わった勢いのまま、漫画『CITY』の感想を書く。早いとこ、あらゐけいいち先生に謝らなくては…!

https://morning.kodansha.co.jp/c/city.html

 まず、面白い……!!すごく面白い!
 でも、あの、新連載始まるって聞いて、モーニングで一話を読んだとき、正直言って戸惑った。
「これは面白いのかもしれないけれど、自分には分

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SF小説『三体』を読んで

三体 感想。

https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014259/pc_detail/

あらすじ

 ナノテク素材の研究者「ワン・ミャオ」はとある会議に召集された。そこで彼は世界中の著名な科学者たちが自ら命を絶っていることを聞かされる。さらにその原因は、いまだかつてない巨大な敵からの攻撃だというのだ。
 その敵と深く繋がる「科

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『APE OUT』を遊ぶ

あなたはゴリラだ。檻の中にいる。
周りにはニンゲンがいて、偉そうな顔をしてこちらを眺めている。
ふと、あなたは気づくだろう。
なぜ、大人しく捕まっていなければならないのか?
次の瞬間、あなたは檻の外へ飛び出している。
吹き飛んだ鉄格子に潰される寸前、ニンゲンが何か叫んだ。
「APE OUT!!」
ニンゲンの言葉など分かりはしないが、しかしその音の響きは心地よかった。

スーパーゴリラティックアクシ

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『1917 命をかけた伝令』みました。

あらすじ

 1917年4月6日。
 第一次世界大戦下のヨーロッパ。前線にいる1600人の味方を敵の罠から救うため、若きイギリス兵二人に伝令が託された。そこへ向かうためには数多くの難所を越えなければならない。しかし、友軍が罠に自ら飛び込んでいくまでもはや一刻の猶予もない。二人は決死の覚悟で敵地へと踏み込んでいく。彼らの長い長い1日が始まる。

 映画館のでっかいスクリーンで見てよかったーって思える

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『ベルリンうわの空』感想

漫画配信アプリ「ebookjapan」で無料配信されている香山哲さんの漫画『ベルリンうわの空』を読み終わった。あー、面白かった!あー、終わってしまった!
異国ベルリンでの生活で「わかったこと」を描いた優しくて不思議な連作漫画。政治や社会の問題も出てくるけれど、それを中心にするんでなくてあくまでその中での個人の生活を描いているところが好き。どの話も好きだけれど「カフェ」や「差別について」「つまづき石

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ワンス・アポン・ア・タイム・インハリウッド 感想

[映画の内容に大きく触れています]

書いたことのざっくりしたまとめ。
①作り物だからこそ、夢や希望や願いを込められる。だからこそ儚くて美しい。
②ともかくディカプリオとブラピの顔が好き。
③フィクションの力、フィクションだからできることを強く感じた映画でした。

タランティーノ監督を最初に知ったのはキルビルでした。布袋寅泰のデーデーデッ!のあの曲、音ハメ、謎の寄り、アクション、トンチキ日本語…面

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漫画『sketchy』がとても面白かったので

sketch(スケッチー)/マキヒロチ/講談社

レンタルビデオ店で働く川澄憧子(あこ)
その同僚の小日向しほ
そして出版社で働く竹花
それぞれの事情で立ち止まってしまった三人の女性たちが出会ったのはスケートボードの世界。ゆっくりと、しかし確実に前に進む。
ガールズスケーター群像劇。

スケートボードに乗った少女が街を走っていく。風の強い日。人の姿はなくて、街にはスケートボードの進む音とそして彼

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『陶芸マスター』で遊んだ

可能性を秘めた陶芸シミュレーションゲーム。

旅に出た友人から陶芸館の運営を任されたあなた。陶芸館は作業場とギャラリーが一つになっている建物で、作業場で作った作品をそのままギャラリーに並べることができる。あなたは陶芸を作り、それを展示し、陶芸館を運営していくことになる。

 陶芸シミュレーションゲーム『陶芸マスター』を遊びました。
 さて、陶器、作りましょう。
『陶芸マスター』での陶器を作る工程は

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