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『ピクプリオバーガーを知っていますか?』バーガーバーガー感想文

 はじめに

 ピクプリオバーガーを知っていますか? 
 え?ご存じない?あのシンプルながらバカ売れしたハンバーガーを?
 では『バーガーバーガー』をご存知ですか? こちらなら聞いたことがある人も多いのではないかと思います。『バーガーバーガー』は1997年にギャップスから発売された、経営シミュレーションゲームです。プレイヤーはハンバーガーチェーン店のオーナーとなり、経営と同時になんと、ハンバーガーを自由自在に作ることができる変なゲームです。私がこのゲームと出会ったのは中学2年生の頃(2002)です。2000年3月にプレイステーション2が発売され、世はまさにプレイステーション大中古ソフト時代。休みの日ともなれば、今はもう消えてしまったゲームショップに出かけていくのが僕らの楽しみでした。以前、そんな思い出を記事にしました。ゲームの感想文とは違いますが、よかったらこちらも読んでいただけると嬉しいです。

 加藤くん

 さて、きっかけは小中学校の同級生である加藤くんでした。彼の存在はバーガーバーガーの思い出を語るには外せません。加藤くん。鈴木亜美の写真集とポケモン金銀を買うために学校を休んだ男。スーパーファミコンでは『ボンバザル』プレイステーションでは『ミスランド』と我々が見向きもしなかった面白くて変なゲームが好きな変わった男。『バーガーバーガー』も加藤くんがどこからか手に入れてきたゲームでした。
 しかしこのゲーム、中学生にはかなり難しかった。
 プレイヤーの目標は地域100店舗の達成。そのために売れるハンバーガーの開発、社員教育やノウハウへの投資(スキル開放のようなもの。ゲームの進行においてかなり重要。例「専属野菜農場との提携」→新しい野菜の入手。「バーガー制作マニュアルの作成」→バーガーの段数を増やすことができるなど)をしながらチェーン店舗を拡大していきます。この投資の部分がややこしく、やみくもにプレイしてなんとかなるわけではない。赤字になればゲームオーバー。さらにゲーム内にはライバルチェーン店も出現し、先にライバルに100店舗達成されてもゲームオーバー。選択できる難易度がEASY、NORMAL、HARDとあるのですが、ふざけてHARDを選ぼうものならあっという間に赤字になってゲームオーバーになってしまいます。人の集まりやすい駅近くに出店するとか、客の奪い合いを避けるためライバル店舗から離して出店するとか、コツがあるのですがそんなことは分かるはずもなく、私と加藤くんは少し遊んで飽きてしまいました。
 いちばん困ったことは、このゲームの醍醐味であるハンバーガー開発がかなりシビア、というか現実的なところです。ハンバーガーを作るたびに星の数で評価をされます。最大が星8つ。最初のうちは食材や段数も少ないので、最も良くて星5でしょうか。この星の数が僕らを苦しめました。実際にこんなハンバーガー売ってたら誰も買わないだろ(笑)みたいなハンバーガーを作れば評価は低く、そして当然、まったく売れません。かまぼこの天ぷらと味噌を挟んだハンバーガーを売りたいのにまったく売れません。だって、美味しそうじゃないから。
 いや、そうなんだけどさあ!
 繰り返しになりますが、自由にハンバーガーを作れるというのがこのゲームの醍醐味、セールスポイントだと私は今でも思っています。しかし、その部分がかなり現実的に作られているせいで、中学生の僕らもこれってなんだか窮屈なゲームだなという感じがしたのでした。自分が美味しそうだなあって思ったものを作りたいし売りたいけどぜんぜん売れない。はい、解散。

 ピクプリオバーガー登場

 とはならず、話はここで終わりません。『バーガーバーガー』で遊んでからしばらくして、加藤くんが私に言いました。
「のび、前にやったバーガーバーガーの話だけど」
 まだやってんのかと正直思いました。
「全クリしたよ」
(…は?まじで?) 
 後日、家へ遊びに行くと加藤くんは『バーガーバーガー』で作った一つのハンバーガーを見せてくれました。その名は、
 ピクプリオバーガー
 ご存じ、ピクプリオバーガーです。レシピを紹介しましょう。
 バンズ
 ケチャップ
 パティ
 ピクルス
 パティ
 以上です。
 シンプルですよね。というかオーソドックスなハンバーガーですよね。しかしこれが高評価。確か星5だったと思います。そしてバカ売れ。めちゃくちゃに売れました。ハンバーガーの値段もプレイヤーが設定するのですが、よっぽどな高値をつけないかぎりは売れました。経営は順調。驚いている私に加藤君は言いました。
「これも買っちゃった」
 それは一冊の本。そうです、攻略本です。あらゆるゲームに一冊は存在するといわれるあの本です。『バーガーバーガー』にもそれは存在したのでした。本の中にはまだみぬ食材たちが載っていて、かなりテンションが上がったことを覚えています。
「これがあれば怖いものなしだよ」
 その中の一つを加藤くんが指さしました。その食材が私たちの遊び方をさらに大きく変えることになったのです。

 宇宙人とキャビア

 キャビア。高級食材、三大珍味の一つ、チョウザメの卵の塩漬け。その食材はどういうわけか簡単に顧客の人気を得ることができて、あっさり高評価のハンバーガーを作ることができます。極端なことをいうと、バンズでキャビアのみを挟んだキャビアバーガーを作ったっていいのです。それでさえゲーム内ではバカ売れします。そんなゲームバランスを破壊してしまう食材を手に入れるためには、あるキャラクターを雇う必要があります。彼の名前はミシュラン星人。星人というくらいなのでどう見ても宇宙人です。青い肌のナイスガイです。このミシュラン星人の社員旅行イベントでキャビアを手に入れることができます。そしてこのミシュラン星人はゲーム開始時から雇うことができます。お分かりですね。キャビア入手まではピクプリオバーガーで資金を稼ぎつつ、ノウハウへの投資と店舗増設をじっくり行い、キャビアを入手してからはキャビアを使ったハンバーガーをバンバン作り、店舗の数を増やしていく。キャビアバーガーのピクプリオバーガーという強固な二本の柱で支えられた加藤ハンバーガー帝国の出来上がりです。大げさではなくて、ちょっと感動してたと思います。そしてそのノウハウを教わったのびバーガーも100店舗を達成し全クリすることができました。こうして一気に簡単になってしまった『バーガーバーガー』目標も達成した僕らはいつものようにそれをゲームショップに売りに行ったのかというと、そうではありません。むしろ私たちの『バーガーバーガー』はここから始まったのです。

 ゲームバランスが破壊されたあとに残ったもの

 宇宙人の店員とピクプリオバーガーとキャビアでゲームバランスを徹底的に破壊したその結果、私たちは改めて『バーガーバーガー』を楽しむことができるようになりました。バーガーバーガーの醍醐味(私がそう思っているだけなんですけどね)を思い出してください、そうです、オリジナルバーガー作りです。私と加藤くんはさっそく頓挫していた新作バーガーの開発を再開させました。売れないだろうと思ったものはその通り売れなかったし、これは美味しそうじゃないかと思って作ったものも売れなかったけれど、私たちには関係ありませんでした。楽しんだもの勝ちです。しかしながら、どんなハンバーガーを作ったかはまったく覚えてないのです。あれだけ楽しんだのにも関わらず、一切覚えていない。それなのにピクプリオバーガーのことだけはずっと覚えているのです。今回、感想文コンテストがあったから思い出したわけではなく、中学校を卒業してから十数年たった今でも、年の近い同僚との仲良くなるきっかけの定番エピソードになっています。すっかりハンバーガーを食べることもなくなったし、加藤くんとも中学卒業後まったく会っていません。連絡先も知らないしこれからも会うこともないだろうと思います。それでも、ピクプリオバーガーのことだけはずっと覚えているような気がします。思い出というものはそういうものなのかもしれません。

 最後に

 『バーガーバーガー』はハンバーガーを自由に作ることができるという他にはない面白さを評価システムがシビアすぎるせいで閉じ込めてしまっている。しかしそこを突破することができたなら、自分の創造性を思う存分に発揮できる夢のようなゲームです。プレイヤーにはプレイヤーの数だけ自分だけの『ピクプリオバーガー』があるんじゃないのかなと私は思っています。大人になってから知ったことですが、キャビアのバランスブレイカーぶりはかなりネタにされているようですね。あれ、本当にバグじゃないのかなあ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
のび

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