〈可愛い〉は最強…。
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〈可愛い〉は最強…。

書評:遠藤達哉『SPY×FAMILY』第2巻(ジャンプコミックス)

これだけ評判も高く、よく売れている作品を、いまさら後追いで褒めるというのは、批評家を自認する者のすることではない。そう考えて、第1巻ではレビューを控えたのだが、今回、第2巻を読み、少し気づいたことがあったので、手短に書かせていただくことにした。

本作では、とにかくアーニャが可愛い。本作のファンとは、アーニャの魅力にやられた人が大半なのではないか? かく言う私自身そうなのだが、今回気づいたのは、〈可愛い〉のは、アーニャひとりではなく、「ちち」「はは」は無論、主な登場人物が全員〈可愛い〉ということだ。

作中人物の魅力というのは、当然のことながら、なにも〈可愛い〉に限られるものではない。〈カッコイイ〉でも〈シブい〉でも〈クール〉でも良いのだが、本作に関しては、全員〈可愛い〉のだ。

〈可愛い〉が最強だというのは、よく言われることだが、しかし、なぜ〈可愛い〉が最強なのだろうか。
それはたぶん、頭を使わなくてもいいからだろう。

様々にある魅力は、しかしたいがいの場合、一定の想像力や理解や共感といった知的作業を、無意識にではあれ行った上でのものなのだが、しかし〈可愛い〉という生理学的反応は、そうした知性を介するものではなく、種を存続させるという目的において、生物にとって、最も本源的かつ直接的なものなのだ。だから、強い。迷いがない。
それは、いちばん簡単に押せる脳内スイッチであり、そこを押されれば、否応なく快楽ホルモンが脳内でドピュドピュ放出される。
そこで読者は、脳内麻薬によって、あっさりと「可愛い!」そして「守りたい」と反応させられて、嫌でも(?)本作を褒めないではいられなくなってしまうのだ。
つまり、〈可愛い〉は、最強の魔力であり、作者はそれを操るのが得意な魔術師なのだと言えよう。

悔しいが、〈可愛い〉の魔力には抗えない。
これが私の、ささやかな抵抗である。

初出:2019年10月6日「Amazonレビュー」

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ありがとうございます。お返しもできない不器用な奴ですみません。
その名のとおり、読書が趣味で、守備範囲はかなり広範ですが、主に「文学(全般)」「宗教」「社会問題」に関連するところ。昔から論争家で、書く文章は、いまどき流行らない、忌憚のない批評文が多い。要は、本音主義でおべんちゃらが大嫌い。ただし論理的です。だからタチが悪いとも言われる。