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右腹 『恋する天使は報われない』 : 人を大切に思う気持ち

書評:右腹『恋する天使は報われない』(マーガレットコミックス)

本書に描かれているものを「恋心」だと思いこむと、間違ってしまうだろう。
ここに描かれているのは「人を大切に思う気持ち」である。
だから「報われる」必要はない。

「恋心」というものは、どこかで必ず「報われる」ことを期待している。
結果的に「報われる」ことがないことは多々あるし、時には「報われなくてもいい」と自分に言い聞かせることもあるだろうけれど、やはり、私のさしむけた「恋心」に気づいて欲しい。そして「報いて欲しい」というのは、当然の感情なのだ。

しかし、「人を大切に思う心」というのは、その人に「幸せでいて欲しい」という気持ちであって、そこに「私によって」という条件は付かないし、その幸せに貢献した私に「報いて欲しい」という気持ちもない。
ただただ、その人が「幸せ」でいてくれさえすれば、それで私も「幸せ」になれる。
「人を大切に思う気持ち」とは、そういうものなのだ。
だから「恋心」のような華々しさはなくても、温かくて尊い。

けれども、しばしば「人を大切に思う気持ち」と「恋心」とは、手を携えてやってきたりもする。
そんなときは、この天使のように、ちょっと切ない思いにとらわれることもあるだろう。でも、それは「美しい恋心」である。


初出:2019年12月11日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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