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短編小説『屹立』

それは、中年の痩せた男が大木に背中を預け、立っている様な絵だった。何故"立っている"ではなく、立っている"様"なのかと言えば、その男が既に死んでいるからだ。 題名は…

寝袋男
6か月前
55

短編小説『楽園と蛇と僕の間にあった木について』

”香り”から呼び覚まされる記憶がある。 私の場合は、いちごみるくのキャンディーを舐めると学生時代の通学路の光景が目の裏に現れる。 君の場合はどうだろう。 「この実…

寝袋男
6か月前
14

短編小説『Contact』

「私の何処が好き?」 そう訊かれて僕は、 「笑顔」とか「意外と男勝りなところ」とか応える。 そうすると相手は満足そうな表情を浮かべたり、はにかんだりして見せた。 し…

寝袋男
7か月前
9

ド素人、『詩』を書く。もしくは書き損ねる。

書き方を検索している時点できっと才能はないです。 いやはや。 調べてみると詩にはどうやらルールがないらしく、テーマを決めて書いてみたり、心をつらつら描写してみた…

寝袋男
8か月前
6

脊髄街『蟷螂女の肖像画』

その絵を見た時、私はそんな風に思った。 別に肌が緑とか手が鎌状であるとか、そういうことではない。顔つきが蟷螂(カマキリ)に似ていたと言うのも、正確ではない。これ…

寝袋男
1年前
5

バットマン同人小説『罪の起源』

蝙蝠が死んだ。  犯罪都市と名高い、いや名低い?それも変な言葉だ。兎に角、ネズミさえ病気になりそうなこの街で、たった一人「犯罪」というウイルス殲滅に躍起になって…

寝袋男
1年前
8

短編小説「治せないなら食べればいいじゃない!」

ワトソン博士はカレンダーを睨んでいた。 自分の持つこぢんまりとした診療所に、最後に患者が顔を見せた日が思い出せなかったのだ。一週間前?いや、先月のカレンダーを破…

寝袋男
2年前
12

極短編小説「日常」

A.気温はそれほど高くない日だったが、雨季特有のまとわりつくような湿気がどうも嫌な汗をかかせる。 張り付いたシャツが気持ち悪い。 こういう日は細かいことに苛立ってし…

寝袋男
2年前
19

ド素人が「落語」を作ってみた。

どうも、寝袋男です。 落語を聴くのが好きです。とは言え詳しいわけではなく、なんとなーく流すのが好きなのですが、今回はTwitterのやりとりの為に作った画像(見出し画像…

寝袋男
2年前
15

占いでよくある相談に「哲学者の考え方」で対応したらどうなるのかやってみた

どうも、寝袋男です。 私は心理学やら哲学の本をふらふらと読んできた者なのですが、その派生で占い方面にも多少知識の枝が伸びていたりします。 心理学、哲学、占い、時に…

寝袋男
2年前
17

短編小説「夜を覗く時」

黒尽くめは宵闇に紛れる。 夜の【散歩】にうってつけだ。 「趣味は?」と訊かれれば【散歩】と答える。 今日は何処に行こうかな。 今夜は、"どう"しようかな。 通称「42…

寝袋男
2年前
12

本棚で「性格」を生成する

どうも、寝袋男です。 今日はTwitterのやり取りから思い立って本棚を整理することに。全部出してみたら228冊でした。 全国平均データや本棚を見せてくれる友人がいないので…

寝袋男
2年前
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「官能小説」についてド素人がセオリーミリしらで考える

えっちな文化をタダで手軽に入手出来る。 竹藪と河川敷のロマンが遥か古となった時代。 あえて官能小説について考えてみようと思う。とは言ったものの、官能小説に触れた…

寝袋男
2年前
13

短編小説「ニドネ•オン•ザ•ベッド」

柔らかくて気持ち良い。興奮している。 脳の奥底から何かが溢れ出す。 彼女の潤んだ瞳。 水中から水面に顔を出す時の様に。 モコモコにカットした中高音を徐々に元に戻して…

寝袋男
2年前
6

『非往復書簡』#6を届けた隣人(ご近所観測メモ)

観測日 3月20日(日) くもり 最高気温12℃ 近所のカラスの鳴き声で目を覚ます。 同じ太さの鳴き声がここ数日響いている。カラスに縄張りがあるのだろうか。 カラスと同…

寝袋男
2年前
5

短編小説「メリーゴーランド」

「どうしたの?」 彼は振り返って、心配そうな顔で私を見つめている。 「乗りたくない。」 急激に思い起こされる幼少期の記憶。 「メリーゴーランドだよ?皆好きだ。怖いの…

寝袋男
2年前
6
短編小説『屹立』

短編小説『屹立』

それは、中年の痩せた男が大木に背中を預け、立っている様な絵だった。何故"立っている"ではなく、立っている"様"なのかと言えば、その男が既に死んでいるからだ。
題名は『遺体』。
その男の胸にはナイフが深く突き刺さっており、そこから赤い筋が白いシャツの裾に向かって流れ、ズボンにまで伸びている。シャツの上に描かれた顔には絶望からの弛緩が見て取れた。静的だが、インパクトのある絵だ。嫌に生々しく、リアリティ

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短編小説『楽園と蛇と僕の間にあった木について』

短編小説『楽園と蛇と僕の間にあった木について』

”香り”から呼び覚まされる記憶がある。
私の場合は、いちごみるくのキャンディーを舐めると学生時代の通学路の光景が目の裏に現れる。
君の場合はどうだろう。

「この実は勝手に食べちゃ駄目。」
母は幼い僕と柚子の木の間に立ってそう言った。普段にない厳しい表情だった。その小振りな黄色い果実を母の肩越しに見つめる。一見、蜜柑に似ている様に見えるけど、食べちゃいけない。なんでだろう。

しかし食べてはいけな

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短編小説『Contact』

短編小説『Contact』

「私の何処が好き?」
そう訊かれて僕は、
「笑顔」とか「意外と男勝りなところ」とか応える。
そうすると相手は満足そうな表情を浮かべたり、はにかんだりして見せた。
しかし僕は本当の事を話してはいない。勿論彼女の笑顔や、そのさっぱりとした性格を魅力と感じているのは事実だ。しかし本当のところ、それらは付属品として、後から魅力と感じただけで、僕がそもそも彼女に惹き付けられた理由は違うところに存在する。

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ド素人、『詩』を書く。もしくは書き損ねる。

ド素人、『詩』を書く。もしくは書き損ねる。

書き方を検索している時点できっと才能はないです。
いやはや。

調べてみると詩にはどうやらルールがないらしく、テーマを決めて書いてみたり、心をつらつら描写してみたりと、皆さん好き勝手やっておられる様なので、私も倣って。

しかし、私には滲み出す様な内なる情熱や社会批判めいたものが見当たりませんので、今回は、

『詩を書いてみようと思います』という言葉から出発して、それらしく弄ってみようと思います。

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脊髄街『蟷螂女の肖像画』

脊髄街『蟷螂女の肖像画』

その絵を見た時、私はそんな風に思った。
別に肌が緑とか手が鎌状であるとか、そういうことではない。顔つきが蟷螂(カマキリ)に似ていたと言うのも、正確ではない。これはあくまで直感的な話なんだ。

女は小綺麗な格好していた。
普段からそうしているタイプかは知らないが、なんとなく神経質で、それで狡猾な印象を受けた。微笑みを湛えた両頬の筋肉も、双方均一に持ち上がっていて、どこまでも左右対称に感じる顔つきをし

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バットマン同人小説『罪の起源』

バットマン同人小説『罪の起源』

蝙蝠が死んだ。 

犯罪都市と名高い、いや名低い?それも変な言葉だ。兎に角、ネズミさえ病気になりそうなこの街で、たった一人「犯罪」というウイルス殲滅に躍起になっていた男が死んだ。
野次馬の一人が、死んだ男の奇妙なマスクを恐る恐る剝がした。
野次馬たちはそれぞれ、目をまん丸にしてその顔を覗き込んだり、悲鳴を上げたり、隣のやつとあーだこーだと議論を始めるやつ、ただ息を飲んで見守っているやつとか、反応は

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短編小説「治せないなら食べればいいじゃない!」

短編小説「治せないなら食べればいいじゃない!」

ワトソン博士はカレンダーを睨んでいた。
自分の持つこぢんまりとした診療所に、最後に患者が顔を見せた日が思い出せなかったのだ。一週間前?いや、先月のカレンダーを破る時に「最近お暇そうですね」と看護師のメアリーに嫌味を言われた記憶はある。そう!記憶がある!!!私の灰色の脳細胞が機能していないわけじゃない。本当に患者が来ていないのだ!ワトソン博士は引き出しから双眼鏡を取り出すと窓辺に立って町を見下ろした

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極短編小説「日常」

A.気温はそれほど高くない日だったが、雨季特有のまとわりつくような湿気がどうも嫌な汗をかかせる。
張り付いたシャツが気持ち悪い。
こういう日は細かいことに苛立ってしまう。
他人の笑い声、やたら引っ掛かる信号機、湿度で曇る眼鏡、のんびりした歩行者、ぶつかるバッグ。
許容範囲を超えてしまいそうだ。
表面張力の様に、ギリギリで持ち堪えているフラストレーション。
そしてついにその時が来た。
駅のホーム。

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ド素人が「落語」を作ってみた。

ド素人が「落語」を作ってみた。

どうも、寝袋男です。
落語を聴くのが好きです。とは言え詳しいわけではなく、なんとなーく流すのが好きなのですが、今回はTwitterのやりとりの為に作った画像(見出し画像参照)が思いの外よかったので、なんとなーく落語を作ってみようかなと思います。
まず、

落語とは?江戸時代に成立した伝統話芸の一種。
最後に「落ち(サゲ)がつくこと、会話形式が中心であることを特徴としている。
滑稽噺、人情噺、怪談噺

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占いでよくある相談に「哲学者の考え方」で対応したらどうなるのかやってみた

占いでよくある相談に「哲学者の考え方」で対応したらどうなるのかやってみた

どうも、寝袋男です。
私は心理学やら哲学の本をふらふらと読んできた者なのですが、その派生で占い方面にも多少知識の枝が伸びていたりします。
心理学、哲学、占い、時に相容れない三者ですが、やはり切っても切り離せない文化な気がします。それはやはり「人間が抱える形のない部分の探求」という点で共通するからでしょう。
ここ数年は社会に不穏な空気が漂っているせいか、哲学の有用性が今一度見直されているそうで、今回

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短編小説「夜を覗く時」

短編小説「夜を覗く時」

黒尽くめは宵闇に紛れる。
夜の【散歩】にうってつけだ。
「趣味は?」と訊かれれば【散歩】と答える。
今日は何処に行こうかな。
今夜は、"どう"しようかな。

通称「42団地(シニダンチ)」。
別に42棟あるって訳でも無いし、番地でも無い。
名前の由来は諸説ある。八という字がつく村があったから。都市開発の際に42人の変死体が出てきたから。
自殺の名所だからとか。
変な噂が受け継がれるのも仕方がない

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本棚で「性格」を生成する

本棚で「性格」を生成する

どうも、寝袋男です。
今日はTwitterのやり取りから思い立って本棚を整理することに。全部出してみたら228冊でした。
全国平均データや本棚を見せてくれる友人がいないので、多いか少ないかもよく分かりませんが、とりあえず「うわ、引っ越しの時嫌だなぁ」が率直な感想です。

全部取り出して見てみると分かりますが、
やはり「本棚には性格が現れる」なぁと。

本棚に性格が現れる

これは裏を返せば、

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「官能小説」についてド素人がセオリーミリしらで考える

「官能小説」についてド素人がセオリーミリしらで考える

えっちな文化をタダで手軽に入手出来る。
竹藪と河川敷のロマンが遥か古となった時代。

あえて官能小説について考えてみようと思う。とは言ったものの、官能小説に触れた時間はそう多くはない。
学生時代スリル欲しさに授業中読むという戯れをした記憶。
最近では後学の為と書店でどんなタイトルや表紙が流行っているのかとたまに見てみる程度の付き合い。
そんな私に官能小説を書く友人が出来た。
読んでびっくり、セック

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短編小説「ニドネ•オン•ザ•ベッド」

短編小説「ニドネ•オン•ザ•ベッド」

柔らかくて気持ち良い。興奮している。
脳の奥底から何かが溢れ出す。
彼女の潤んだ瞳。
水中から水面に顔を出す時の様に。
モコモコにカットした中高音を徐々に元に戻していく時の様に。
音の解像度が上がる。
その中でアラームの音をより鮮明に掴んだ。
瞼が上がる。

[am 7:00]

アラームを止めて、枕に顔を埋める。昨晩の酒で頭が痛い。
夢の続きが見たい。
もう少し寝かせてくれ。
さっきのは念の為の

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『非往復書簡』#6を届けた隣人(ご近所観測メモ)

『非往復書簡』#6を届けた隣人(ご近所観測メモ)

観測日 3月20日(日) くもり 最高気温12℃

近所のカラスの鳴き声で目を覚ます。
同じ太さの鳴き声がここ数日響いている。カラスに縄張りがあるのだろうか。

カラスと同じくらい喧しい主婦の声も聞こえる。
マンションの向かいに居を構える飯田さんと橋本さんところの奥様方だ。
ぽっちゃりとガリガリ。深くてやたらと地に響く笑い、トンガってキンキンしてる笑い。

私の302号室の隣、303号室には女が住

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短編小説「メリーゴーランド」

短編小説「メリーゴーランド」

「どうしたの?」
彼は振り返って、心配そうな顔で私を見つめている。
「乗りたくない。」
急激に思い起こされる幼少期の記憶。
「メリーゴーランドだよ?皆好きだ。怖いの?」
彼は無邪気に笑う。その幼さの残る顔に今は嫌悪感を覚えてしまう。
「帰る。」
なんとなく遊園地に足が伸びなかったのは、絶叫マシーンに乗せられるのが嫌だからだと思い込んでいた。
なんで忘れてしまってたんだろう。
「待ってよ」と彼に声が

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