ナナタ-10秒で読める散文

都内在住。恋に勉強、SNSやソシャゲで忙しい現代人のために、すぐ読める散文を書いていま…

ナナタ-10秒で読める散文

都内在住。恋に勉強、SNSやソシャゲで忙しい現代人のために、すぐ読める散文を書いています。

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  • 30秒で読める小説 / 古今東西の「愛してる」

    古今東西の「愛してる」シリーズをまとめています。

  • ギリギリ、人生の役に立つかもしれない共通点

    「ギリギリ、人生の役に立つかもしれない共通点」シリーズをまとめていきます。

記事一覧

古今東西の「愛してる」:映画

黄昏が空から落ちてくる。 まるで映画のワンシーンのようだ。 膝の上では、妻が寝息を立てている。 その体勢は、人間はここまで無防備になれるんだと教えてくれてるみたい…

古今東西の「愛してる」:小学生

小学生の頃は、 足が速いだとか、 勉強ができるだとか、 おもしろいってだけで、 その人の事を好きになれたのに。 一体いつから、こんなに難しいものに変わっちゃったんだ…

古今東西の「愛してる」:対極

「何だ起きてたの」 深夜2時、妻が帰ってきた。 「うん。」 「シャワー入ってくるね」 お湯が出る音を聞きながら、 気づいたときには妻の携帯を握りしめていた。 「今…

古今東西の「愛してる」:光景

息を飲むような夕焼けの下。 石のように固まった表情から、とろけるような視線を送りつつ、男が口を開く。 「愛してる」 緊張のせいか、砂漠のように乾ききった喉から出…

古今東西の「愛してる」:アナログ派

私の本棚には昔の手帳が並んでいる。 カバーには、当時の趣味が色濃く出ていて、JKの時のは今見ると酷いセンスだ。 酷いと感じる今が、何かを失ったのかもしれないが。 …

古今東西の「愛してる」:行末

こんな深夜に、高い人口密度を保てるのもここぐらいだろう。 怪しげなライトと、胸に響くノイズに包まれたフロアには、同じような人種が集まっている。 「名前は?」「ど…

古今東西の「愛してる」:瞳

「ブレーキランプを5回点滅させると、愛してるのサインなんだって!お母さん知ってた?」 後部座席で娘が妻と話している。 「もちろん。ね、お父さん?」 不敵な笑みが…

古今東西の「愛してる」:鬱憤

朝はいつも起きてこないし、帰りだって毎晩遅い。 たまの休みの日だって、PCとにらめっこで全然かまってくれないじゃん。 私のこと、見えてますかー? お前なんかな、「…

古今東西の「愛してる」:鉄柵

「ああ、ヨハン。どうしてあなたはヨハンなの…」 「…」 「愛してる」 この想いを嘲笑うかのように、立ちはだかる鉄柵。 隙間から覗き見る2つの目と2つの目には、それぞ…

古今東西の「愛してる」:掃除

掃除をしていたら、昔の携帯が出てきた。 懐かしい起動音。 メールボックスにはあの頃が詰まっていて、 当時の彼女とのやり取りは、青春でできていた。 「私のこと好き?…

古今東西の「愛してる」:賽の目

久しぶりに手にした包丁で、玉ねぎを切る。 ザクザクという音色と一緒に、賽の目状になっていくそれらを眺めながら、頭の中に映像が蘇る。 あの時も、こんな感じで台所に…

古今東西の「愛してる」:2114年

夜ベッドに入り、枕元にあるスイッチを押すと、目の前に半透明の画面が現れる。 彼の名前に触れて数秒。 頭の中に、彼の声が現れる。 「...おはよう」 「何いってんの、…

古今東西の「愛してる」:電車

残業で疲れた私を待っていたのは、 酒の匂いが充満した山手線。 席に座ると、隣の女の子が スマホでドラマを見ている。 あ、これ元カレが好きだったやつだ。 「愛してる…

古今東西の「愛してる」:常連

この店が好きだ。 コーヒーは美味しいし、パンケーキはクリームが多い。 緑に囲まれているのも、休日なのに店内が静かなのも嬉しい。 なんてものは全部建前で、 全てはあ…

古今東西の「愛してる」:筆談

どんどん便利になっていく。 彼女もそう思っているはずだ。 僕らの会話はいつも、携帯のメモ帳で繰り広げられる。 僕が入力し、彼女が入力し、二人で読んで笑う。 それを…

【ギリ共通】ゴミ

「ゴミ」と「勇気」は、出した方が良い。

古今東西の「愛してる」:映画

古今東西の「愛してる」:映画

黄昏が空から落ちてくる。
まるで映画のワンシーンのようだ。

膝の上では、妻が寝息を立てている。
その体勢は、人間はここまで無防備になれるんだと教えてくれてるみたいだ。

「愛してる」

誰にも届かない声を出す。
棚の上の記念写真は、笑顔でこちらを見つめてる。

これは、映画のワンシーンすぎるな。

===後記===
「何でもないようなことが幸せだったと思う。」と誰かも歌っていたけれど、これはきっ

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古今東西の「愛してる」:小学生

古今東西の「愛してる」:小学生

小学生の頃は、
足が速いだとか、
勉強ができるだとか、
おもしろいってだけで、
その人の事を好きになれたのに。

一体いつから、こんなに難しいものに変わっちゃったんだろう。

近所迷惑になるぐらいの口論を終えた部屋には、彼が倒したグラスの破片が光っている。

「愛してる。」が欲しかっただけなのに。

===後記===

恋愛はいつから、難しくなっていくのだろう。

古今東西の「愛してる」:対極

古今東西の「愛してる」:対極

「何だ起きてたの」

深夜2時、妻が帰ってきた。

「うん。」
「シャワー入ってくるね」

お湯が出る音を聞きながら、
気づいたときには妻の携帯を握りしめていた。

「今日はありがとう。」
「愛してる。」
「僕も。」

画面に映る知らない男とのやり取り。
こんなにも苦しくなる、愛の交換があるんだな。

===後記===

愛をささやきあうのは、とても美しいものだと思えたりするけど、真逆に位置する意

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古今東西の「愛してる」:光景

古今東西の「愛してる」:光景

息を飲むような夕焼けの下。

石のように固まった表情から、とろけるような視線を送りつつ、男が口を開く。

「愛してる」

緊張のせいか、砂漠のように乾ききった喉から出たその音は、潤いを求めて彷徨ったまま、日没とともに暗闇に溶けていった。

===後記===

レトリックは、人間の想像力を試す。

☆このシリーズの詳細はこちら

古今東西の「愛してる」:アナログ派

古今東西の「愛してる」:アナログ派

私の本棚には昔の手帳が並んでいる。

カバーには、当時の趣味が色濃く出ていて、JKの時のは今見ると酷いセンスだ。
酷いと感じる今が、何かを失ったのかもしれないが。

そのピンクの、ヒョウ柄の手帳を開くと蛍光色で慎ましい文字が現れる。

「愛してる」

この頃、ってどんなんだっけ。

===後記===
年齢を重ねるにつれて、いろいろな経験を経ていく。
それは、ある種人生に新しい刺激を与えているような

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古今東西の「愛してる」:行末

古今東西の「愛してる」:行末

こんな深夜に、高い人口密度を保てるのもここぐらいだろう。
怪しげなライトと、胸に響くノイズに包まれたフロアには、同じような人種が集まっている。

「名前は?」「どこから来たの?」「ひとり?」

浅はかな質問を浴びながら、昨日別れた男の事を思い出す。

「愛してる」

今、ここにいる私も浅はかだ。

===後記===

人が本当に孤独になった時、どこへ行くのが一番良いのか。

家に一人で閉じこもるか

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古今東西の「愛してる」:瞳

古今東西の「愛してる」:瞳

「ブレーキランプを5回点滅させると、愛してるのサインなんだって!お母さん知ってた?」

後部座席で娘が妻と話している。

「もちろん。ね、お父さん?」

不敵な笑みがバックミラーに映る。

何しろ、私は点滅させて告白した張本人なのだから。

鏡越しの瞳は、下手な告白に笑っていたあの頃と同じだった。

===後記===

こんな雨の日には、いつもより車のブレーキランプが目立つ。あれも愛を伝える媒体の

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古今東西の「愛してる」:鬱憤

古今東西の「愛してる」:鬱憤

朝はいつも起きてこないし、帰りだって毎晩遅い。
たまの休みの日だって、PCとにらめっこで全然かまってくれないじゃん。

私のこと、見えてますかー?

お前なんかな、「愛してる」って言わせてやるからな。

今に見てろ。

===後記===

明らかに不穏な、恨みつらみが立ち込めるシチュエーションでも、セリフに「愛してる」を据えるだけで、なんだかホッとできる物語になる説。

☆このシリーズの詳細はこち

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古今東西の「愛してる」:鉄柵

古今東西の「愛してる」:鉄柵

「ああ、ヨハン。どうしてあなたはヨハンなの…」
「…」
「愛してる」

この想いを嘲笑うかのように、立ちはだかる鉄柵。

隙間から覗き見る2つの目と2つの目には、それぞれ涙と悔しさが溢れている。

そんなやり取りが行われているとも知らない幼稚園児たちは、この檻の中のトラとライオンに興味津津だ。

===後記===

恋をするのは、人間だけの特権ではない。

とすればきっと、人間と同じような悲劇も、

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古今東西の「愛してる」:掃除

古今東西の「愛してる」:掃除

掃除をしていたら、昔の携帯が出てきた。
懐かしい起動音。

メールボックスにはあの頃が詰まっていて、
当時の彼女とのやり取りは、青春でできていた。

「私のこと好き?」
「うん」
「ちゃんと言って」
「愛してる」

だって。

「何してるの?」

妻が二階から降りてきた。

===後記===

懐かしいものを見ると、その当時の思い出が蘇る、あの感覚。

ガラケーのメールボックスなんて、その究極系で

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古今東西の「愛してる」:賽の目

古今東西の「愛してる」:賽の目

久しぶりに手にした包丁で、玉ねぎを切る。

ザクザクという音色と一緒に、賽の目状になっていくそれらを眺めながら、頭の中に映像が蘇る。

あの時も、こんな感じで台所に立っていて、後ろではB級映画を観てたな。あいつが。

「愛してる」

B級役者の言い回しほど、勘に触るものは無い。

あー。涙でてきた。

===後記===
なんでもない瞬間に、かけがえのなかった瞬間がフラッシュバック。

☆このシリー

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古今東西の「愛してる」:2114年

古今東西の「愛してる」:2114年

夜ベッドに入り、枕元にあるスイッチを押すと、目の前に半透明の画面が現れる。

彼の名前に触れて数秒。

頭の中に、彼の声が現れる。

「...おはよう」
「何いってんの、もう夜よ」

なんて、いつものやり取りが始まる。

「愛してる」
「私もよ。それじゃあ、おやすみなさい」

一日の中で、この時間が一番だ。

===後記===
手紙がメールに変わり、メールがLINEに変わったように、想いを伝え

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古今東西の「愛してる」:電車

残業で疲れた私を待っていたのは、
酒の匂いが充満した山手線。

席に座ると、隣の女の子が
スマホでドラマを見ている。

あ、これ元カレが好きだったやつだ。

「愛してる」

小さな画面の中で、綺麗な女優がそう呟いた。
音は聞こえないが、記憶が教えてくれる。

頭が痛くなってきたのは、
酒の匂いのせいだろう。

===後記===

最近はもう、電車に乗るとみんなスマホを覗き込んでいる。

一昔前は、

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古今東西の「愛してる」:常連

古今東西の「愛してる」:常連

この店が好きだ。
コーヒーは美味しいし、パンケーキはクリームが多い。
緑に囲まれているのも、休日なのに店内が静かなのも嬉しい。

なんてものは全部建前で、
全てはあの娘がいるから。

いつかあの娘と付き合って、
「愛してる」って言い合う関係。

そんな妄想を膨らませている
窓際の変態が私である。

===後記===

人間はみんな、妄想をしているし、変態だと思っている。

それを表に出さないよう、

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古今東西の「愛してる」:筆談

古今東西の「愛してる」:筆談

どんどん便利になっていく。
彼女もそう思っているはずだ。

僕らの会話はいつも、携帯のメモ帳で繰り広げられる。
僕が入力し、彼女が入力し、二人で読んで笑う。
それをお風呂でもできるんだから、幸せ以外の何物でもない。

「愛してる」

寝る前に見せてきたその4文字は、
なんだか照れてるようにも見えた。

===後記===

「時代は5G」だとか「AI」だとか、どんどんテクノロジーは進化していくみたい

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