Motoyasu Nagafuchi

元報道カメラマン、広告カメラマンで現在は地域を繋ぐ広告代理店を運営する傍ら障害者の雇用…

Motoyasu Nagafuchi

元報道カメラマン、広告カメラマンで現在は地域を繋ぐ広告代理店を運営する傍ら障害者の雇用サポートをしているNPO法人を運営しております。

記事一覧

人生行路完全版vol.7『コーヒーを識った日』前編

僕の内心はとても苛立っていた。 エチオピアにて取材中に軍事基地を撮っていたとのでっち上げのタレコミにより、軍事スパイの疑いをかけられると、エチオピア軍兵士に取り…

子ども王国の日常vol.6

家を訪ねると、半開きの扉の奥から声が聞こえる。 「これからうちに大切なゲストが来るから!!」 もしかしたら、僕のことなのかもしれない。。。 少し早く来すぎたかな…

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人生行路vol.6『僕の答え』後編

本当に無我夢中だった。 頭の中には、弾が当たるとか、命を落とすとか、そんな恐怖に怯えている余裕すらなく、ただ目の前にある“救える命”だけを捉えていた 地を這うよ…

人生行路vol.6『僕の答え』前編

2003年、焼けつく暑さの中、僕はイラク第二の都市モスルにいた。 ここはつい先日、サダムフセインの息子のウダイとクサイが多国籍軍によって殺された街だ。 今回の戦争…

子ども王国の日常vol.5

怪しげに他人の視線を気にする少女たち。 僕が 「何しているの?」 と尋ねてみると、少女の一人が 「大きな声で話しかけないで、見つかってしまうから。」 と一言。 …

子ども王国の日常vol.4

「あのね、ママがお仕事している時は、シーって静かにしてるの。」 「でもね、離れると寂しいから、ママの仕事が終わるまで、くっついてるの。」 2004年 インドネシア

『少しずつ、少しずつ』

報道カメラマン時代、 幾度となく、日本からの送金が滞り解散していく、児童養護施設を目の当たりにしてきた。 そこで生活をしていた子ども達は、国や場所によっては、引…

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『自分なりの決断』

今から15年近く昔。 「写真で世界を平和にしてやる!!」と本気で思い、 正義心と勢いで突っ走っていた時代。 毎回毎回、取材の度に手書きで遺書を書いて、 20kgの荷物を…

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子ども王国の日常vol.3

マオイストの取材の為、訪れたネパール。 事前にエージェントを通して、取材アポを取っていたものの、ネパールに着いたところで、向かう予定だった空港がマオイストの別の…

人生行路vol.5『キオクを探して』

フィリピンの首都メトロマニラは、この日も一年前と同じ照りつけるような暑さだった。 いつものようにチャイナタウンを抜け、取材先であるフィリピン最大のスラムの広がる…

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人生行路vol.4『君の国は何年生きられる?』

ボクはエチオピアのアカキという街をカメラをぶら下げ練り歩いていた。 別に観光が盛んな観光地でも、高い建物が立ち並ぶ経済都市でもなければ、何らかの政治的な問題を抱…

人生行路vol.3『クリスティンの夢』

 ふかふかのマットレスの上を歩くかのように軽い地面、蔓延した埃と煙がフィルターをかけるようにボクの視界から色彩を奪っていく。茹だるような暑さの中、僕はフィリピン…

子ども王国の日常vol.2

額の汗をぬぐいながら、疲れ切った足をゆっくりと自分のホテルまで運ばせる途中にある路地をよぎると、ふと、背中越しに少女に呼び止められる。 「いらっしゃい!!」 僕…

子ども王国の日常vol.1

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人生行路完全版vol.7『コーヒーを識った日』前編

人生行路完全版vol.7『コーヒーを識った日』前編

僕の内心はとても苛立っていた。

エチオピアにて取材中に軍事基地を撮っていたとのでっち上げのタレコミにより、軍事スパイの疑いをかけられると、エチオピア軍兵士に取り押さえられ投獄された。

そこから三日に渡る取調べに至っていたからである。

ここエチオピア北部は、エリトリアとの国境紛争を繰り返し、毎日のように国境線が塗り替えられている場所である。

集中力を切らさずに、生活をし続けることは並大抵のこ

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子ども王国の日常vol.6

子ども王国の日常vol.6

家を訪ねると、半開きの扉の奥から声が聞こえる。

「これからうちに大切なゲストが来るから!!」

もしかしたら、僕のことなのかもしれない。。。

少し早く来すぎたかな・・・

そう感じた僕は、家の前で空を眺めながら、少しの間ぐるぐるぐるぐる家の前を回る。

すると、ギーッと金属が擦れる音が聞こえるとともに、扉の奥から小さな影が姿を見せた。

それはそれは小さく愛らしい影。

それが君との出会いだっ

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人生行路vol.6『僕の答え』後編

人生行路vol.6『僕の答え』後編

本当に無我夢中だった。

頭の中には、弾が当たるとか、命を落とすとか、そんな恐怖に怯えている余裕すらなく、ただ目の前にある“救える命”だけを捉えていた

地を這うように重心を落としながら走る。

心臓の鼓動と、自分の息づかいが頭の中で反響している。

普段は何気ない道幅が、やけに長く遠い。

足は地面を舐めるように回転しながらも、左眼では飛び込む先を見据え、右眼で子どもの脇下を見据える。

やがて

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人生行路vol.6『僕の答え』前編

人生行路vol.6『僕の答え』前編



2003年、焼けつく暑さの中、僕はイラク第二の都市モスルにいた。

ここはつい先日、サダムフセインの息子のウダイとクサイが多国籍軍によって殺された街だ。

今回の戦争でより自由になったクルド人も多い為か、ここに来る前に立ち寄ったフセイン支持派の多いティクリートの街とは正反対に、明るく活気に満ちている。

僕は、タバコに火を点けると、街角のレンガの段差に腰を下ろしながら暫く人の往来を眺めていた。

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子ども王国の日常vol.5

子ども王国の日常vol.5

怪しげに他人の視線を気にする少女たち。

僕が

「何しているの?」

と尋ねてみると、少女の一人が

「大きな声で話しかけないで、見つかってしまうから。」

と一言。

どうやら、かくれんぼをしているようだ。

すると、僕らの話を聞いていた友達が近づいてきて、

「そう言っているあなたの声の方がうるさいよ。」

と少女の耳元で囁く。

「あっ、いけない。」

思わず、ほくそ笑む少女。

遠くの方

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子ども王国の日常vol.4

子ども王国の日常vol.4



「あのね、ママがお仕事している時は、シーって静かにしてるの。」

「でもね、離れると寂しいから、ママの仕事が終わるまで、くっついてるの。」

2004年 インドネシア

『少しずつ、少しずつ』

『少しずつ、少しずつ』

報道カメラマン時代、
幾度となく、日本からの送金が滞り解散していく、児童養護施設を目の当たりにしてきた。

そこで生活をしていた子ども達は、国や場所によっては、引き取り手がいなければ、再びストリートに戻るしか無く、その光景を見つめ、下唇を噛み締めながら自分の無力さに泣いた。

いくら、「なんとかしてよ!!」と袖を掴まれても
ボクは、写真を撮ることしか出来ないカメラマンでしかなかない。

僕らの仕事

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『自分なりの決断』

『自分なりの決断』

今から15年近く昔。

「写真で世界を平和にしてやる!!」と本気で思い、
正義心と勢いで突っ走っていた時代。

毎回毎回、取材の度に手書きで遺書を書いて、
20kgの荷物を背負いながら、1日中走り回っていた。

今思えば、若かったからこそ、失うことを恐れぬ強さがあったのだと思う。

無謀な勇気や好奇心のままに突き進み、
目を覆いたくなるような現状を見つめ、
感情のままに人と向き合う。

報道として

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子ども王国の日常vol.3

子ども王国の日常vol.3

マオイストの取材の為、訪れたネパール。

事前にエージェントを通して、取材アポを取っていたものの、ネパールに着いたところで、向かう予定だった空港がマオイストの別の部隊に襲われたということで、急遽、陸路で向かうことに。

避暑地としても名高いポカラから、山岳ルートとは別のルートで登っていくことになる訳であるが、彼らのアジトは、8091mもあるアンナプルナの中腹の崖に築いているという。さすがに山岳ゲリ

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人生行路vol.5『キオクを探して』

人生行路vol.5『キオクを探して』

フィリピンの首都メトロマニラは、この日も一年前と同じ照りつけるような暑さだった。

いつものようにチャイナタウンを抜け、取材先であるフィリピン最大のスラムの広がるトンド地区へ。

一年というブランクを感じさせない程、軽快に運んでいく足。

磁力が導くように、顔なじみの友人を見つけては、駆け寄っていく。

カメラバックの中には、昨年、このエリアの取材をしていた2ヶ月間で撮り貯めた、街の人々の何気ない

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人生行路vol.4『君の国は何年生きられる?』

人生行路vol.4『君の国は何年生きられる?』

ボクはエチオピアのアカキという街をカメラをぶら下げ練り歩いていた。

別に観光が盛んな観光地でも、高い建物が立ち並ぶ経済都市でもなければ、何らかの政治的な問題を抱えている都市でもない。

至って何処にでもあるような小さい街だ。

今回の目的であった取材がようやく終わり、僕はくたくたに疲れていた。

そんな状態で、アジズアベバに帰る途中、車窓越しに飛び込んできたのがこの長閑な街の景色。

もしかした

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人生行路vol.3『クリスティンの夢』

人生行路vol.3『クリスティンの夢』

 ふかふかのマットレスの上を歩くかのように軽い地面、蔓延した埃と煙がフィルターをかけるようにボクの視界から色彩を奪っていく。茹だるような暑さの中、僕はフィリピンのトンド地区にあるスモーキーマウンテンにいた。

スモーキーマウンテンとはいわゆるゴミの山が数十メートルにわたり積み上げられたゴミ山のことである。気温の上昇とともにメタンガスが自然発火し、山からもくもくと煙が立ちこめている姿からそう名付けら

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子ども王国の日常vol.2

子ども王国の日常vol.2

額の汗をぬぐいながら、疲れ切った足をゆっくりと自分のホテルまで運ばせる途中にある路地をよぎると、ふと、背中越しに少女に呼び止められる。

「いらっしゃい!!」

僕は、少し時間を巻き戻すように歩みを戻し、彼女のお店に立ち寄る。

どうやら、アイスクリーム屋さんらしい。

店も看板もアイスクリームもイマジネーション次第だが、それもそれで面白い。

「世界一伸びるアイスはどうですか?」

店員さんのオ

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