藍眞澄

4匹の猫たちと3匹の地域猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き…

藍眞澄

4匹の猫たちと3匹の地域猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

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  • エッセイ

    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 2023年詩

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  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

記事一覧

60「詩」キリエ-2

人を傷つけないように言葉を選んできた それでも思いがうまく伝わらない 酷く人を傷つけてしまうことがある 取り返しのつかない記憶がふと蘇ると 居ても立っても居られなく…

藍眞澄
16時間前
12

59「詩」夕焼け

暑さは身体の細胞の中まで熟れた果実のように ねっとりと歪ませていた 夏になると水の箱買いが極端に増える 山積みになった段ボールを下ろし パックヤードから客の元に運…

藍眞澄
2日前
18

パイプオルガンコンサート「音楽と宇宙」

私の母校は創立150周年を迎え、記念にコンサートが開催されました。キャンパス近くの東京芸術劇場のパイプオルガンのコンサートは宇宙の話しとのコラボ。面白い。すぐに申…

藍眞澄
6日前
15

58「詩」居場所

焼けた陽射しが棘のように 黒々と茂った葉っぱに降っていた 夏の日 陽射しの先端が葉っぱにぶつかると いくぶんまろやかに歪んだように見え そのまま 地面に降り注がれた …

藍眞澄
7日前
19

57「詩」あなたはいつか

薄茶色のちゃぶ台が 日に焼けた畳の上にひとつだけ置いてある ちゃぶ台を囲んで祖母と母が手仕事をしている 一食の米粒を手に入れるために 背を曲げて黙々と手仕事をしてい…

藍眞澄
11日前
19

56「詩」星を見る

最初に大きな爆発が起こりました そこから原子が生まれ星が生まれました 星が生まれたその屑から人が生まれました だから人は星の欠片なのです 今こうしている間に 空のず…

藍眞澄
2週間前
22

55「詩」わたしのなまえはマリアです。

わたしはサビ猫だそうです マリアと名付けられました かすかな光だけを感じて お水がどこにあるのかも ご飯がどこにあるのかも お母さんに頼るだけでした お母さんと逸れ…

藍眞澄
3週間前
19

54「詩」真夏の昼下がり

真夏の昼下がり 雲を高い梢で編んでみた ざっくりした網目の 空の三分の一ほどの 網が出来上がる 両手を高く差し出し 無造作に端っこを掴む それから 思い切り力を込めて …

藍眞澄
4週間前
17

53「詩」コタン小路

「白はね黒とおんなじくらいに いろんな白があるんだよ」 その人は俯きながら言った 睫毛の影がうっすらと頬に映ったのが見えた その一瞬でこの人の 心の奥の遥か遠い所に…

藍眞澄
1か月前
15

52「詩」梅雨時

空一面覆い尽くした雲の いちばんてっぺんでは トビウオが跳ねているにちがいない 雲の表面を やがて来る真夏の太陽が うっすらと焦がしているのに トビウオはその暑さをモ…

藍眞澄
1か月前
20

七夕の日に

一年先の今日の日が訪れてくれました。 相変わらず私は毎日を忙しく過ごしています。 一年前と違ったところは 庭先に毎日地域猫のミケ子さんとポンちゃんがいること。 ミケ…

藍眞澄
1か月前
19

いけばな「涼感 ガラス」

花器はくじ引きで当たった指定のものを使いました。花材は白やまぶきの枝 トルコ桔梗 枝を留めて立たせるのが難しかったです。 留めた枝を取っ掛かりにして、花を立てま…

藍眞澄
1か月前
9

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(5)

ミケ子さんは元に戻され地域猫になりました。 子猫が保護されたことを知る由もありません。一晩中子猫を探して鳴き続けました。夜になると子猫が寄り添って寝ていたコンロ…

藍眞澄
1か月前
20

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(4)

翌朝、亀井さんが迎えにきてミケ子さんの入った捕獲器をそのまま連れていきました。10:00から避妊手術の病院の予約が取れているとのこと。 間も無くして、ミケ子さんが入院…

藍眞澄
1か月前
23

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(3)

6月22日、いよいよ捕獲の日がやって来ました。私が仕事から戻るのは夕方6時以降になってしまいます。少しでも早い時間がいいと思いました。職場に連絡して事情を話すと店長…

藍眞澄
1か月前
20

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(2)

私の住む町で保護活動をしていらっしゃる亀井さんについてお話しします。少し前まで私の住む小さな町ではまだ野良猫が物のような扱いを受ける状況にありました。亀井さんは…

藍眞澄
1か月前
33
60「詩」キリエ-2

60「詩」キリエ-2

人を傷つけないように言葉を選んできた
それでも思いがうまく伝わらない
酷く人を傷つけてしまうことがある
取り返しのつかない記憶がふと蘇ると
居ても立っても居られなくなって
この世から消えてなくなりたくなる
何億という条件が揃ってやっと
産まれてきた大切な命だと知っていても
どうしようもなく
消えてしまいたくなることがある

「その時の男の瞳を忘れることができない
みすぼらしい男に
なにひとつ奇跡な

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59「詩」夕焼け

59「詩」夕焼け

暑さは身体の細胞の中まで熟れた果実のように
ねっとりと歪ませていた

夏になると水の箱買いが極端に増える
山積みになった段ボールを下ろし
パックヤードから客の元に運ぶ
繰り返し繰り返し

仕事を終える
くたくただ
話すのも億劫になっている

空を見上げる
夕焼けの色が粒子になって放射状に降っている
私の肩に降ってきた粒子を
片手で受け止めると
やわらかい

よく見ると秋の粒子が混じっている

歪ん

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パイプオルガンコンサート「音楽と宇宙」

パイプオルガンコンサート「音楽と宇宙」

私の母校は創立150周年を迎え、記念にコンサートが開催されました。キャンパス近くの東京芸術劇場のパイプオルガンのコンサートは宇宙の話しとのコラボ。面白い。すぐに申し込みました。

このホールがある場所は私か学生の頃は広い原っぱでした。当時この街は汚くあまり治安の良くない感じでした。そこにある大学のキャンパスだけが別世界のようでした。

オルガンの演奏者はチャペル専属のオルガニスト崎山浩子さん。以前

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58「詩」居場所

58「詩」居場所

焼けた陽射しが棘のように
黒々と茂った葉っぱに降っていた
夏の日
陽射しの先端が葉っぱにぶつかると
いくぶんまろやかに歪んだように見え
そのまま
地面に降り注がれた
木陰の間では幼子が踊りはじめる
踊っている空間に「居場所」はある

「居場所」はどんな時も味方だった
世界中の誰もが自分を認めなくても
「居場所」は自分を認めてくれるだろう

幼子の笑い声が
木漏れ日を縫って響いていく
笑い声に応える

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57「詩」あなたはいつか

57「詩」あなたはいつか

薄茶色のちゃぶ台が
日に焼けた畳の上にひとつだけ置いてある
ちゃぶ台を囲んで祖母と母が手仕事をしている
一食の米粒を手に入れるために
背を曲げて黙々と手仕事をしている
懐かしいけれど心のどこかが痛む景色が
ちゃぶ台の周りによみがえる
背を向けて
鮮やかな足取りで今に向かって歩いてくる
一人の少女がいる

後を振り向かないで
まっすぐに今に向かって歩いておいで

灰色の雲が悲しい記憶を弔うように

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56「詩」星を見る

56「詩」星を見る

最初に大きな爆発が起こりました
そこから原子が生まれ星が生まれました
星が生まれたその屑から人が生まれました
だから人は星の欠片なのです

今こうしている間に
空のずっと高いところには宇宙が
確かにある
何百光年離れた星から
長い時を隔てたこの手のひらに
ちゃんと光が届く

何千億という奇跡が重なわなければ
宇宙が誕生してから人は生まれていない
ひとりひとりが偶然の奇跡の重なりで出来ている

こう

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55「詩」わたしのなまえはマリアです。

55「詩」わたしのなまえはマリアです。

わたしはサビ猫だそうです
マリアと名付けられました

かすかな光だけを感じて
お水がどこにあるのかも
ご飯がどこにあるのかも
お母さんに頼るだけでした

お母さんと逸れて
とてもとても長い時間が過ぎたように
思えたのは真夏のお日様が
あまりにも暑かったから
日陰がどこにあるのかも分かりませんでした

どこが危ない場所なのかも分からないで
どこが高くてどこが低いのかも分からないで
ただ真っ直ぐに歩い

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54「詩」真夏の昼下がり

54「詩」真夏の昼下がり

真夏の昼下がり
雲を高い梢で編んでみた
ざっくりした網目の
空の三分の一ほどの
網が出来上がる
両手を高く差し出し
無造作に端っこを掴む
それから
思い切り力を込めて
成層圏に届くように放ってみる

網にかかるのは大量のトビウオだ
これからどうなるかなんて考えていない
これからどうなるかなんて考えても仕方ない
ただ飛んで泳いでいる
トビウオが食べているのは
人間の陰の部分だ
意地悪だったり悪意だっ

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53「詩」コタン小路

53「詩」コタン小路

「白はね黒とおんなじくらいに
いろんな白があるんだよ」
その人は俯きながら言った
睫毛の影がうっすらと頬に映ったのが見えた
その一瞬でこの人の
心の奥の遥か遠い所にある一点を感じた

ユトリロの絵が見たかった
いろんな白を見たかった

神田神保町を
足が棒のようになるまで
歩く
一冊の画集を買った
一つの作品が目に留まった

コタン小路

この白を見ようと思った
アルバイトをしてお金を貯めた
フラ

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52「詩」梅雨時

52「詩」梅雨時

空一面覆い尽くした雲の
いちばんてっぺんでは
トビウオが跳ねているにちがいない
雲の表面を
やがて来る真夏の太陽が
うっすらと焦がしているのに
トビウオはその暑さをモノともせず
一直線に泳いでいるに違いない

なにものにも邪魔をされない
なにものも入り込めない
一粒の傷さえ許さない
生まれたばかりの空間を目指して
一心に向かう

雲の下では
雑多な思いがひしめきあっている
それぞれの正しさが
譲る

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七夕の日に

七夕の日に

一年先の今日の日が訪れてくれました。
相変わらず私は毎日を忙しく過ごしています。
一年前と違ったところは
庭先に毎日地域猫のミケ子さんとポンちゃんがいること。
ミケ子さんの悲しいストーリーが終わった後で、
私がこの子たちを大切にしていこうと思ったこと。
明日もとびきり暑い一日になりそうです。
銀河の向こう側からみたら地球は宝石のように見えるに違いありません。
その美しい地球の上で、人が人の命を奪っ

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いけばな「涼感 ガラス」

いけばな「涼感 ガラス」

花器はくじ引きで当たった指定のものを使いました。花材は白やまぶきの枝 トルコ桔梗

枝を留めて立たせるのが難しかったです。
留めた枝を取っ掛かりにして、花を立てました。

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(5)

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(5)

ミケ子さんは元に戻され地域猫になりました。
子猫が保護されたことを知る由もありません。一晩中子猫を探して鳴き続けました。夜になると子猫が寄り添って寝ていたコンロの中や段ボール箱を覗きこんで鳴きました。
ミケ子さんのおっぱいもかなり張ってきました。

ミケ子さんが可哀想で不憫で私も一緒に泣きました。鳴き続けて4日目、ミケ子さんは少しずつ鳴かなくなりました。

ポンちゃんと仲良く1日の大半をうちのデッ

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野良猫さんが子猫を連れてやって来た(4)

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(4)

翌朝、亀井さんが迎えにきてミケ子さんの入った捕獲器をそのまま連れていきました。10:00から避妊手術の病院の予約が取れているとのこと。
間も無くして、ミケ子さんが入院したと連絡が来ました。夕方4時退院の予定とのこと。

夕方退院。子猫の入ったケージとミケ子さんのケージを隣合わせに置いてくださっていると連絡がきました。良かった。また子猫たちに会えたね。

翌日、ミケ子さんは麻酔から完全に覚めました。

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野良猫さんが子猫を連れてやって来た(3)

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(3)

6月22日、いよいよ捕獲の日がやって来ました。私が仕事から戻るのは夕方6時以降になってしまいます。少しでも早い時間がいいと思いました。職場に連絡して事情を話すと店長が快く早退するのを承諾してくれました。
私が働いているのはドラッグストア、ぎりぎりの人数で仕事をこなしていますので一人欠けることがどれだけ周りのスタッフに負担をかけるか充分に理解しています。それでも、周りのスタッフたちも快諾してくれまし

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野良猫さんが子猫を連れてやって来た(2)

野良猫さんが子猫を連れてやって来た(2)

私の住む町で保護活動をしていらっしゃる亀井さんについてお話しします。少し前まで私の住む小さな町ではまだ野良猫が物のような扱いを受ける状況にありました。亀井さんはその状況を目にしてこれではだめだと町役場に足繁く通い現状を訴えたそうです。でも遅々として改善されなかったようです。そこで、自分で動くしかないと保護活動を始めたようです。
見返りを考えず、私利私欲なく、生活を犠牲にして小さな命を守る姿を目にす

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