藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しなが…

藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

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    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 2023年詩

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  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

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そして今

中学生の頃でした。 ラジオから聞こえた 「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。 辛いことの多かったあの頃、 その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるよう…

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36「詩」願い

私の生まれるずっと昔に 生まれた光の粒たちが 行く当てもなく 散らばっていって やっとやっと辿り着いたのは 音の波 限りなく広がる波は いくつもの笛から 奏でられ 光の…

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35「詩」朝焼け

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32「詩」朝日

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藍眞澄
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そして今

そして今

中学生の頃でした。
ラジオから聞こえた
「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。

辛いことの多かったあの頃、
その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるようでした。

学生時代。毎日毎日言葉を紡いでは作品にし、詩誌に投稿していました。
たまにご褒美のように賞をいただくことが嬉しく励みでした。

あれから数十年が過ぎ、
私は詩作からは遠ざかったまま、
すっかり年をとりました。
人生の折り返し

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二十歳の頃の作品

二十歳の頃の作品

二十歳の頃堀辰雄の「風立ちぬ」を読みました。登場人物の節子が絵を描いている美しい風景が頭に残りました。「そうだ油絵を描こう!」
思いつくと絵に詳しい友人と一緒に大学近くの画材屋に行き、最低限の油絵の道具を選んでもらいました。

道具は揃いました。
週末栃木に帰省した折、小さな頃から通っていた教会のミサに行きました。神父様の肖像画を描いて誕生日に贈った青年がいました。絵が好きで学んだものの実家の家業

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40「詩」朝に

40「詩」朝に

お友だちから山菜が届きました
蕨やタラの芽 こしあぶら サンショウ
山菜の香には雑木林の木漏れ日が入っていました

お友だちから縮緬と柚子味噌が届きました
瀬戸内の波打ち際の
揺れる陽射しが入っていました

お友だちから刺身こんにゃくが届きました
土を耕し芋を育てた人の汗が入っていました

お友だちから老舗の牛タンが届きました
頑張ってとお友だちの心が入っていました

ぜんぶ美味しくいただきました

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上手宰さんの詩集

上手宰さんの詩集

上手宰さんの「香る日」を読みました。
定年後書き溜めた作品を65歳の時にお作りになった詩集だそうです。
宝石のような美しい世界が結晶になった作品でした。そうだね、そうだね、と頷きながら上手さんの世界の隣に立っている気がしました。

歳をとるということは悪くないです。
鏡を覗けば皺とシミだらけのお婆さんになった私。よくもこんな顔を人前にさらしているもんだと呆れたりします。
中身はちっとも変わってない

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39「詩」午後の光景

39「詩」午後の光景

はらはらと
落ちてくることばを
両手で捕まえようとする午後です
捕まえてしまえばあんなに光っていたのに
粉雪のように溶けてしまうのが
わかっているのです

見えない音の響きが
柔らかな午後の光に包まれて
ゆるゆると螺旋状に揺れています
粉雪のように四方に光を反射し
その中に秘めたことばも
ゆらゆらと揺れて
いるのです

しばらくすると
あとからあとから
落ちてしまうことばたち

両手で捕まえたら

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38「詩」忘れもの

38「詩」忘れもの

いつも忘れものをしている
ような気がする
いつも探しものをしている
ような気がする

なにを探しているのか分からない

やらなきゃならないことが
生きてる時間を埋めている
時計を見ながら
時間を計算する
計算された時間に
小さな穴が空くと
忘れものがあることに気づく

ずっと探してきたような気がする

なにを探しているのか分からないでいる 

神さまのことだけを考えてつくられた遠い
遠い昔の音楽が

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37「詩」風

37「詩」風

ひとがいる

そのひとのこころは分からない
分からないけれど隣にいる
隣にいると
理由も分からないけれど
悲しい気持ちがつたわってくる
そのひとの苦しさがつたわってくると
どうしたら苦しさが減ってくれるか
そればかり考える

なんにもできない
でも
考える

いつの間に
そのひとの悲しみは
自分の悲しみに変わる
理由の分からない悲しみが
わたしの隣のひとにつたわり
みんなの悲しみに変わっていく

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36「詩」願い

36「詩」願い

私の生まれるずっと昔に
生まれた光の粒たちが
行く当てもなく
散らばっていって
やっとやっと辿り着いたのは
音の波
限りなく広がる波は
いくつもの笛から
奏でられ
光の粒たちは
分け隔てなく波に溶けていく

流れついた音がいつか
だれかに光を渡す

いつもと変わらない1日でありますように

音に願いをこめ
手のひらに包みそっと息を吹きかけてみる
目を凝らさないと見失ってしまうほど
かすかな願いが裸

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35「詩」朝焼け

35「詩」朝焼け

漆喰の空に一筋の光
時のゆっくりとした流れのなかで
明るさを増し

明るさは
閉ざされた心の
隙間を開けていく

泣き尽くされた涙が
乾いた空気に変わってしまっていた夜明け
一筋の光は
空のかなたにあった潤いを引き寄せ
空気に温もりを与えている

どんなに苦しんだ夜にも
一筋の光がさし
やがて
燃えるような朝焼けの時を迎えること
忘れないで
#古楽の楽しみ
復活祭のためのミサ曲を聴きながら

詩誌「詩人会議」4月号自由のひろば

詩誌「詩人会議」4月号自由のひろば

いただいた講評

講評は上から南浜伊作様、坂田トヨ子様、中村明美様

34「詩」4月4日父の命日

34「詩」4月4日父の命日

4月4日父の命日

父が食べたいと言ったあんぱんを
明日買ってくるねと約束したまま
翌朝父は亡くなった

間に合わなかったこと
ごめんなさいと
何度も何度も言ってみる

ごめんなさいが
間に合わないまま
空に浮いたままになっている

あれから十年過ぎても
浮いたままだ

33「詩」桜

33「詩」桜

今朝窓を開けると
わたゆきのような朝のひかりが
ふわりふわりと揺れながら降ってきました
春になったのです

ひかりは吹き溜まりにまで積もります
柔らかなふかふかした肌触りで
産まれたばかりの子どもの頬をひと撫でして
ひかりのない隅っこに降っていきます

人の背丈ほどに降り積るまで
あとからあとから降ってくるのです
そうして街の人々がすっぽり
包まれてしまうと

桜の木の葉脈をつたって
蕾の先端まで

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32「詩」朝日

32「詩」朝日

一晩中泣きあかした日にも
いつもと変わらない朝日がさしました

昨日とはぜんぜん変わってしまった心にも
いつもと変わらない朝日がさしました

なにもかも失くしてしまった
瓦礫で埋まった行き止まりの道にも
朝日がさしています

精一杯の願いをこめて
遠く離れた星から
おくった光は
ちゃんと
ここに
届いているのです

ココア共和国4月号に掲載していただきました。

ココア共和国4月号に掲載していただきました。

ココア共和国4月号、佳作Iに電子版ですが掲載していただきました。久々のココア共和国に帰国できて嬉しい春になりました。

今年のお正月は今まで経験したなかで1番悲しいお正月になりました。悲しみや苦しみを抱えて歩き出せないでいる人たちがたくさんいらっしゃると思います。
また受験や就活で上手くいかず、行きどころを失っている人たちもいらっしゃることでしょう。

そんな方たちすべてに
ほんの少しでも春の光を

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31「詩」雨の朝

31「詩」雨の朝

雨の朝
流れてきたテレビのニュース
猫が塗料に使う毒液に落ちて逃げました。
毒液に触れると皮膚炎を起こします。
猫に触れないでください。

猫は喉が渇いて水を飲みたかったんだろうか
水だと思って飲もうとしたんだろうね
毒液に落ちて必死にがんばって這い上がったんだ

濡れた身体を舐める
口や身体が爛れてくる
理由も分からない痛みに苦しむ

可哀想などとそんな言葉では言い表せない
理不尽さに
立ち尽く

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30「詩」静けさの中に

30「詩」静けさの中に

静けさの中に響く声をきけ
音にならない溢れるほどの声
言葉にならない溢れるほどの心

誰も責めない
誰も憎まない
誰も僻まない
誰も見下さない

生きものたちが
おなじ星のうえで
おなじように生きている

すべての生きものたちが
おなじ時の
中で
おなじように生きている

奇跡のように生きている

耳を澄まし
自分のなかの要らない心を捨てた時にだけ
聞こえてくる静けさの中の声がある