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52「詩」梅雨時

空一面覆い尽くした雲の
いちばんてっぺんでは
トビウオが跳ねているにちがいない
雲の表面を
やがて来る真夏の太陽が
うっすらと焦がしているのに
トビウオはその暑さをモノともせず
一直線に泳いでいるに違いない

なにものにも邪魔をされない
なにものも入り込めない
一粒の傷さえ許さない
生まれたばかりの空間を目指して
一心に向かう

雲の下では
雑多な思いがひしめきあっている
それぞれの正しさが
譲ることも受け入れることも出来ずに
ぎくしゃくした重たい雨になり
沼地のような水たまりをつくっている

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