藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しなが…

藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

マガジン

  • 2023年詩

  • いけばな作品、合唱のための作詞

    生花作品、合唱のための作詞

  • エッセイ

    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

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そして今

中学生の頃でした。 ラジオから聞こえた 「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。 辛いことの多かったあの頃、 その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるようでした。 学生時代。毎日毎日言葉を紡いでは作品にし、詩誌に投稿していました。 たまにご褒美のように賞をいただくことが嬉しく励みでした。 あれから数十年が過ぎ、 私は詩作からは遠ざかったまま、 すっかり年をとりました。 人生の折り返し点を過ぎて今、 昔思い描いた夢がなんだったかと自分に問う日々です。 私なりに頑張

    • 39「詩」午後の光景

      はらはらと 落ちてくることばを 両手で捕まえようとする午後です 捕まえてしまえばあんなに光っていたのに 粉雪のように溶けてしまうのが わかっているのです 見えない音の響きが 柔らかな午後の光に包まれて ゆるゆると螺旋状に揺れています 粉雪のように四方に光を反射し その中に秘めたことばも ゆらゆらと揺れて いるのです しばらくすると あとからあとから 落ちてしまうことばたち 両手で捕まえたら ありったけの優しさで包んで 溶けないうちに大急ぎで 私をまっているひとに 渡すの

      • 38「詩」忘れもの

        いつも忘れものをしている ような気がする いつも探しものをしている ような気がする なにを探しているのか分からない やらなきゃならないことが 生きてる時間を埋めている 時計を見ながら 時間を計算する 計算された時間に 小さな穴が空くと 忘れものがあることに気づく ずっと探してきたような気がする なにを探しているのか分からないでいる  神さまのことだけを考えてつくられた遠い 遠い昔の音楽が 探しものが入っている箱の鍵を開ける ような気がする

        • 37「詩」風

          ひとがいる そのひとのこころは分からない 分からないけれど隣にいる 隣にいると 理由も分からないけれど 悲しい気持ちがつたわってくる そのひとの苦しさがつたわってくると どうしたら苦しさが減ってくれるか そればかり考える なんにもできない でも 考える いつの間に そのひとの悲しみは 自分の悲しみに変わる 理由の分からない悲しみが わたしの隣のひとにつたわり みんなの悲しみに変わっていく みんなの悲しみはやがて 暖かな風になる 今年初めて咲いた花の香を編んで 昨日から明

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        そして今

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        • 2023年詩
          68本
        • いけばな作品、合唱のための作詞
          17本
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          13本
        • 詩 作品  2022年11月から
          22本

        記事

          36「詩」願い

          私の生まれるずっと昔に 生まれた光の粒たちが 行く当てもなく 散らばっていって やっとやっと辿り着いたのは 音の波 限りなく広がる波は いくつもの笛から 奏でられ 光の粒たちは 分け隔てなく波に溶けていく 流れついた音がいつか だれかに光を渡す いつもと変わらない1日でありますように 音に願いをこめ 手のひらに包みそっと息を吹きかけてみる 目を凝らさないと見失ってしまうほど かすかな願いが裸で震えている

          36「詩」願い

          35「詩」朝焼け

          漆喰の空に一筋の光 時のゆっくりとした流れのなかで 明るさを増し 明るさは 閉ざされた心の 隙間を開けていく 泣き尽くされた涙が 乾いた空気に変わってしまっていた夜明け 一筋の光は 空のかなたにあった潤いを引き寄せ 空気に温もりを与えている どんなに苦しんだ夜にも 一筋の光がさし やがて 燃えるような朝焼けの時を迎えること 忘れないで #古楽の楽しみ 復活祭のためのミサ曲を聴きながら

          35「詩」朝焼け

          詩誌「詩人会議」4月号自由のひろば

          いただいた講評 講評は上から南浜伊作様、坂田トヨ子様、中村明美様

          詩誌「詩人会議」4月号自由のひろば

          34「詩」4月4日父の命日

          4月4日父の命日 父が食べたいと言ったあんぱんを 明日買ってくるねと約束したまま 翌朝父は亡くなった 間に合わなかったこと ごめんなさいと 何度も何度も言ってみる ごめんなさいが 間に合わないまま 空に浮いたままになっている あれから十年過ぎても 浮いたままだ

          34「詩」4月4日父の命日

          33「詩」桜

          今朝窓を開けると わたゆきのような朝のひかりが ふわりふわりと揺れながら降ってきました 春になったのです ひかりは吹き溜まりにまで積もります 柔らかなふかふかした肌触りで 産まれたばかりの子どもの頬をひと撫でして ひかりのない隅っこに降っていきます 人の背丈ほどに降り積るまで あとからあとから降ってくるのです そうして街の人々がすっぽり 包まれてしまうと 桜の木の葉脈をつたって 蕾の先端まで 辿り着き 祈りのような 薄桃色の 桜の花が咲くのです

          33「詩」桜

          32「詩」朝日

          一晩中泣きあかした日にも いつもと変わらない朝日がさしました 昨日とはぜんぜん変わってしまった心にも いつもと変わらない朝日がさしました なにもかも失くしてしまった 瓦礫で埋まった行き止まりの道にも 朝日がさしています 精一杯の願いをこめて 遠く離れた星から おくった光は ちゃんと ここに 届いているのです

          32「詩」朝日

          ココア共和国4月号に掲載していただきました。

          ココア共和国4月号、佳作Iに電子版ですが掲載していただきました。久々のココア共和国に帰国できて嬉しい春になりました。 今年のお正月は今まで経験したなかで1番悲しいお正月になりました。悲しみや苦しみを抱えて歩き出せないでいる人たちがたくさんいらっしゃると思います。 また受験や就活で上手くいかず、行きどころを失っている人たちもいらっしゃることでしょう。 そんな方たちすべてに ほんの少しでも春の光を届けたくて書きました。 たったひとりでもいいのです。 私からの春の光を受け取って

          ココア共和国4月号に掲載していただきました。

          31「詩」雨の朝

          雨の朝 流れてきたテレビのニュース 猫が塗料に使う毒液に落ちて逃げました。 毒液に触れると皮膚炎を起こします。 猫に触れないでください。 猫は喉が渇いて水を飲みたかったんだろうか 水だと思って飲もうとしたんだろうね 毒液に落ちて必死にがんばって這い上がったんだ 濡れた身体を舐める 口や身体が爛れてくる 理由も分からない痛みに苦しむ 可哀想などとそんな言葉では言い表せない 理不尽さに 立ち尽くしてしまう 猫は死んでいると思われます。 触れないでください。 ニュースは続

          31「詩」雨の朝

          30「詩」静けさの中に

          静けさの中に響く声をきけ 音にならない溢れるほどの声 言葉にならない溢れるほどの心 誰も責めない 誰も憎まない 誰も僻まない 誰も見下さない 生きものたちが おなじ星のうえで おなじように生きている すべての生きものたちが おなじ時の 中で おなじように生きている 奇跡のように生きている 耳を澄まし 自分のなかの要らない心を捨てた時にだけ 聞こえてくる静けさの中の声がある

          30「詩」静けさの中に

          29「詩」古い一冊のノート

          古い一冊のノートがある ノートにはひとつの付箋がある なんどもなんどもページをめくり その付箋のページに辿り着く こどもの頃もそうだった 長い時間を生きてきた今もそうだ ノートに書いてあるのは母の言葉 「他になんにも取り柄が無いけれど  おまえは  素直で真面目なことだけが取り柄なの。」 2年ぶりに実家に里帰りする母は 小さなわたしの手を引きながらそう言った 母は滅多に実家に帰らなかった 夜明け前に起き竈門に火を起こし 学生だった義理の弟たちの弁当をつくった 事業

          29「詩」古い一冊のノート

          28「詩」春の風

          何も書いてない一枚の紙片が 春の風に飛んでいきました 大切な言葉を 伝えるために用意した紙片だったのです 私のなかで 伝えたかった言葉が置き去りにされています ひとりぼっちになった言葉が バランスを崩したまま 取り残されています そんなことは知るよしもなく 春の風は 楽しそうに鼻歌歌って 満面の笑みで 一気に暖かくなった野原を ふわりと踊るように吹いていくのです

          28「詩」春の風

          異国での出来事

          2022年3月11日 読売新聞朝刊「気流」に掲載していただいた記事です。 日本から遠く離れた異国の地で、心を寄せてくれるたくさんの人に出会いました。

          異国での出来事