藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しなが…

藍眞澄

4匹の猫たちの召使いをしながら、駅も高校もない小さな街でお日様や生き物たちに感謝しながら生きています。 遠い昔、詩を書いていました。 書けなくなって何十年かの時が過ぎ、 私は年老いました。 今でしか書けない思いを言葉に乗せて 作品にしたいと思います。

マガジン

  • 2023年詩

  • エッセイ

    なにげない日常の思いを書いてみました。

  • 2024年詩

  • いけばな作品、合唱のための作詞

    生花作品、合唱のための作詞

  • 詩 作品  2022年11月から

    1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。

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そして今

中学生の頃でした。 ラジオから聞こえた 「降り積む闇の中で風をくらい」という詩のフレーズ。 辛いことの多かったあの頃、 その一言が、なぜか私に寄り添ってくれるようでした。 学生時代。毎日毎日言葉を紡いでは作品にし、詩誌に投稿していました。 たまにご褒美のように賞をいただくことが嬉しく励みでした。 あれから数十年が過ぎ、 私は詩作からは遠ざかったまま、 すっかり年をとりました。 人生の折り返し点を過ぎて今、 昔思い描いた夢がなんだったかと自分に問う日々です。 私なりに頑張

    • 野良猫さんが子猫を連れてやって来た(4)

      翌朝、亀井さんが迎えにきてミケ子さんの入った捕獲器をそのまま連れていきました。10:00から避妊手術の病院の予約が取れているとのこと。 間も無くして、ミケ子さんが入院したと連絡が来ました。夕方4時退院の予定とのこと。 夕方退院。子猫の入ったケージとミケ子さんのケージを隣合わせに置いてくださっていると連絡がきました。良かった。また子猫たちに会えたね。 翌日、ミケ子さんは麻酔から完全に覚めました。酷く暴れて凶暴化しているとのことでした。ケージの中で暴れて顔を怪我してしまったそ

      • 野良猫さんが子猫を連れてやって来た(3)

        6月22日、いよいよ捕獲の日がやって来ました。私が仕事から戻るのは夕方6時以降になってしまいます。少しでも早い時間がいいと思いました。職場に連絡して事情を話すと店長が快く早退するのを承諾してくれました。 私が働いているのはドラッグストア、ぎりぎりの人数で仕事をこなしていますので一人欠けることがどれだけ周りのスタッフに負担をかけるか充分に理解しています、それでも、周りのスタッフたちも快諾してくれました。小さな生き物への優しい気持ちが伝わりありがたい思いになりました。 夕方、亀

        • 野良猫さんが子猫を連れてやって来た(2)

          私の住む町で保護活動をしていらっしゃる亀井さんについてお話しします。少し前まで私の住む小さな町ではまだ野良猫が物のような扱いを受ける状況にありました。亀井さんはその状況を目にしてこれではだめだと町役場に足繁く通い現状を訴えたそうです。でも遅々として改善されなかったようです。そこで、自分で動くしかないと保護活動を始めたようです。 見返りを考えず、私利私欲なく、生活を犠牲にして小さな命を守る姿を目にすると応援したい気持ちで胸がいっぱいになります。まだまだ保護活動が理解されない昔か

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        • 2023年詩
          170本
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          18本
        • 詩 作品  2022年11月から
          22本

        記事

          野良猫さんが子猫を連れてやって来た(1)

          なにか出来事が重なる日というものがあります。 6月15日、私は午前中に加藤拓未さんのバッハの講義、午後は横浜詩人会主催、詩人の松下育男さんの講演会に行く予定で以前からずっと楽しみにしていました。 早朝家事を済ませてバス電車を乗り継ぎ2時間かけて会場に着くと鍵がかかっていて誰もいません。 驚いて受付の方に伺うと講義は夕方17:30から時間変更になったのだとか。すぐにこの講義のお世話係をしているかたと加藤先生にご連絡しました。 数分後、とても丁重な謝罪のメールが届きました。どう

          野良猫さんが子猫を連れてやって来た(1)

          51「詩」召し上がれ

          かくし味はひとさじ銀河をすくって あかね色を添えて風に盛り付けよう きのうと一昨日とその前の日と 続いてきた毎日を弔うために 飛行機雲が高いところで 空を切り分ける 片方の空を丁寧に折っていく 弔われた過去をしずかに包みながら 折っていく できるだけ小さく小さく 翼の形に折っていこう そうして 風に盛り付ける 朝ごはんの準備が整いました さあ召し上がれ

          51「詩」召し上がれ

          50「詩」雨粒

          みんなたったひとつだけ いのちをもらって産まれてくるのに みんなたったひとりでいつか もらったいのちを返す日がくるのに なんだろう 産まれおちたその瞬間から 幸せと不幸せの どちらかにちかい場所にいるのは ひとりの力では どうすることもできないけれど なんとかしなきやとおもう 幸せにちかい場所にみんながいてほしい きれいごととか偽善とかそんなんじゃない ただそうおもう 自分が無力だなんてことずっと昔から 知ってるけれど それでも なにかできないか 屋根も田畑も雑木林も

          50「詩」雨粒

          49「詩」紫陽花

          紫陽花の花びらは 誰かの言葉に揺れるたびに 色を変える 時間をさかのぼって 記憶から引き出された言葉が 雨のひとつぶひとつぶに溶けて 紫陽花の根元に降り注がれる朝 湿った大地に生きている無数の生きものたちが 大きく伸びをし口いっぱいの雨で 息づく夜明けの 瑠璃色からゆっくり赤みを増していく空 の欠片をいとおしみながら 一瞬一瞬の色を身体に 塗り込め 紫陽花がなみだのように咲いている

          49「詩」紫陽花

          届いた!

          6月10日 仕事が終わって家に帰るとご褒美のように小笠原鳥類さんの「吉岡実を読め!」が届いていた。 ずっしり重い。 帯に印刷された広瀬大志さんのことばがなんてステキなんだ。 「あやしいものがガチャガチャ並んでいる」。 あやしいもの、悪くない。むしろ好きだ。 表紙をめくる。 一瞬落書きかと錯覚してしまうがちゃんとしたサインがある。そうだった。注文する時にサイン入り本と記載されていたのを思い出す。 「他の人ができることができないことが、あまりにも多かった。」(吉岡実を読め!5ペ

          届いた!

          48「詩」キリエ

          その時の男の瞳を忘れることができない みすぼらしい男に なにひとつ奇跡など起こせなかった ただ怯えた犬の目をして 人間を憐れむことしかできなかった 憐れみは 人間の汚れた部分にただ 静かに降り積もり 汚れた部分を包んだ 包まれた汚れが そのままのかたちで天に昇った 男にはそれしか出来なかった あなたを許します ひとつのことばによって 生きてみようと歩き出す人間がいる みんな大切なものが違うのだ そんなこと分かっているはずなのに  やっぱりいちばん大切なものは 確かにあるよ

          48「詩」キリエ

          水栽培の猫

          次郎ちゃんからのひかりの音、届きました。 発売されるのを楽しみに待っていた一冊です。橘さんが天国に見送った愛猫次郎ちゃんの書かせてくれた一冊とのこと。橘さんの誕生祝いに本になっておうちに帰ってきたという次郎ちゃんを私もお迎えすることにしました。注文すると思潮社の方は詩集を丁寧に梱包して送ってくださいました。 手に取ると使っている紙の手触りがいい。砂浜のような手触り。そこに曇りガラスのように透き通る帯が付いています。砂浜に打ち寄せる静かな波のような色。そっと添えられた素敵な

          水栽培の猫

          47「詩」あやしげな

          ※「あやしげな絵でなければならない」   と小笠原鳥類さん                    出典 あやしげなものがなにか考えてる カップ麺にお湯をいれながら考えてる 中から洗濯機がふやけて出てきたらあやしげか あやしげではない うるさいだけだ 暗闇で幽霊が隣にいたらあやしげか あやしげではない  ひとりぼっちじゃなくてよかった と幽霊の手を握って友だちになってしまうだろう 黒い傘をさして目出し帽をかぶりサングラスをかけたらあやしげか 日焼け対策が完璧とどこかのマダ

          47「詩」あやしげな

          美味しいものはみんなで

          遠い昔、戦争中のお話です。 母方の実家は専業農家でした。 母は、11人兄弟、5人目にして初めて産まれた女の子でそれはそれは大切にされて育ったようです。 戦争中、上の4人の兄たちは戦争に行き、まだ10代の母が兄たちに代わって畑仕事などをこなしていました。 薩摩芋を収穫していた時、気づくと小さな子どもをおんぶした女性がいました。 「疎開でここに引越してきました。収穫出来ないような小さな薩摩芋をいただいていいでしょうか。」女性はそう言ったそうです。 畑仕事をしていた母と祖父は、

          美味しいものはみんなで

          忘れられない思い出

          ほんの些細なことなのに忘れられないことがあります。 私は卒業した後絵本と児童書の編集だけをする小さな会社に就職しました。当時としては珍しく女性ばかりの会社で社員は10人足らず。加えて印刷屋さんのご実家から編集見習いで派遣されていた一学年歳上の青年がひとり。 社長はもと大手出版社S社から独立したのだそうです。それで、ほとんどの編集はS社から出版される書籍でした。 人数が少ない会社でしたので、最初から画家や執筆者とのやり取りもしなければなりませんでした。自信などないのですが、そ

          忘れられない思い出

          46「詩」画用紙

          まっさらな一枚の画用紙がある 朝をむかえると 昨日書きなぐった薄汚れた画用紙のうえに 用意される 用意したのが誰だっていい ただ用意されていることが重要なんだ なにを描こう どんな形を どんな色で描こう なんでも描いていいのがうれしい まず青がいい 青い色鉛筆を手に取る 画用紙の端っこから ほんとうの空にまで青が溶け始める 空には雲が浮かんでいる 雲は雨を降らそうかどうか迷っている 迷わず思い切り青で塗りつぶす 塗りつぶされた雲の隙間から 陽が射してくる 陽射しが向かっ

          46「詩」画用紙

          夢の延長線上

          大学生の頃住んでいたアパートの下の階にヨシダさんという方が住んでいました。ヨシダさんは私の通っている大学を卒業した後W大学の文学部に学士入学したのだとアパートの大家さんから伺いました。 私はほぼ毎日夕方からアルバイトをしていましたのでアパートに帰り翌日の予習が終わるとたいてい深夜でした。そろそろ寝ようかと雨戸を閉めようとするといつもヨシダさんの部屋にはまだ明かりが灯っていました。 友人から新聞に関するアンケートの回答を出来るだけ集めて欲しいと頼まれたことがありました。私はヨ

          夢の延長線上