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46「詩」画用紙

まっさらな一枚の画用紙がある
朝をむかえると
昨日書きなぐった薄汚れた画用紙のうえに
用意される
用意したのが誰だっていい
ただ用意されていることが重要なんだ

なにを描こう
どんな形を
どんな色で描こう
なんでも描いていいのがうれしい

まず青がいい
青い色鉛筆を手に取る
画用紙の端っこから
ほんとうの空にまで青が溶け始める
空には雲が浮かんでいる
雲は雨を降らそうかどうか迷っている
迷わず思い切り青で塗りつぶす
塗りつぶされた雲の隙間から
陽が射してくる

陽射しが向かっている先なんて
どこだっていい

向かっていることが重要なんだ

黒は使わない
色を塗り重ねていけばどうせ黒っぽくなるからね
塗り重ねていって
なにを描いたかって分からなくなっても
心配なんかいらない
描いたものはさっきの陽射しが向かう先に
差し出せばいい
陽射しのなかで画用紙が透き通る
透き通ったなかに描いたものがぼんやり
見えてくるんだ

そうして
一日が終わる頃
黒っぽく薄汚れてしまった画用紙が
くたくたになって床に落ちる
明日になればまた
まっさらな画用紙が用意される
用意したのが誰かなんか
どうでもいい

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