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水栽培の猫

次郎ちゃんからのひかりの音、届きました。

発売されるのを楽しみに待っていた一冊です。橘さんが天国に見送った愛猫次郎ちゃんの書かせてくれた一冊とのこと。橘さんの誕生祝いに本になっておうちに帰ってきたという次郎ちゃんを私もお迎えすることにしました。注文すると思潮社の方は詩集を丁寧に梱包して送ってくださいました。

手に取ると使っている紙の手触りがいい。砂浜のような手触り。そこに曇りガラスのように透き通る帯が付いています。砂浜に打ち寄せる静かな波のような色。そっと添えられた素敵な言葉。
表紙のまんなかにじっとこちらを見つめる次郎ちゃん。本の大きさもいい。次郎ちゃんを腕のなかに抱いているようなホッとする大きさです。
いい装丁だなと思いました。

表紙をめくると、帯と同色の優しい青一色。
水栽培をイメージしました。
一枚のリーフレットが入っていました。野木京子さんがお書きになった詩集に寄せたことば。美しく心に響きました。

それから、
丁寧に一作ずつ読んでみました。
ひとつひとつの作品が物語を読んでいるようになります。ありふれた日常のなかから見つけた現実とは違う世界の入り口、そこから物語が始まります。
いろんな色のクレヨンを並べたような一冊でした。でも、なんだろう。悲しいけれど、優しくて、温かなこの気持ち。
色に例えたら?
色ではない、光だ。
無色の光!
そう気づきました。
そして、一作一作感じた色はクレヨンの色ではなく光の色だったんだと。
光はいろんな色が混ざると無色になると聞いたことがあります。

橘さんのあとがきのことばにあった
「ひかりになってこぼれつづける音色を」
一作一作は色のある光のような物語でした。

ちゃんとひかりは届きました。
次郎ちゃんがつけていた鈴は聞こえないひかりの音で鳴り続けていくはずです。

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