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詩 作品  2022年11月から

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1995年に地方新聞社主催のコンクールで優秀賞を受賞して以来、2023年10月まで、長い間詩を書くことができないでいました。 また、とぼとぼと昔の道を歩き出した頃の作品たちです。
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記事一覧

「詩」夕焼けの光景

「詩」夕焼けの光景

おつかれさま
おつかれさま
沈みかけたお日様が
オレンジ色に染まった空を
赤々と照らしながら
消えいるような声で
語りかける

重い荷物を引きずり
重い足を引きずり
家路につく

今日が無事に過ぎたことを感謝する
ほんのわずかな収入を得て
ほんのささやかな食卓を囲めることを感謝する

おつかれさま
おつかれさま
お日様が山の端に一瞬
透き通った光を放って
沈んでいく

お日様が沈んだ後の西の空は

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「詩」夜が明ける

「詩」夜が明ける

闇の中で無数の星たちが
声にならない声を
光に変えて降り注いでいた

「あなたが生まれるずっとずっと前に
 私は生まれた
 今あなたが見ている私が
 あなたに届く頃
 私は闇に戻っているかもしれない」

何万光年離れた星たちの光が
今こうして
私の目に届いている

もうじき
夜が明ける

眠りから覚めた朝の陽射しが
人々を眠りから覚ます前に
星たちの光は
見えなくなるだろう

見えないけれど
確か

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「詩」降誕

「詩」降誕

暗い夜空に宝石を散りばめたような
星たちが遥かかなたから光を降り注いでいた

その人がお生まれになったと
真っ先に気づいたのは
最も貧しい羊飼いたちだった

その人はもっとも貧しい人間たちの寝ぐらより
さらに貧しい動物たちの寝ぐらに
産まれた

誰も知らない
誰も気づかない
世界から忘れ去られた
片隅に生きる人々の涙に
その人は犬の目にような目をして
一緒に涙した

涙は一筋の光に変わった

一筋

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「詩」川

「詩」川

それでも
流れていくしかない

岩にぶつかり
時に岩をくだき
流れていくしかない

魚を育み
その子どもたちを見ることもなく

ーやがて海に辿り着き
 とてつもなく大きくなって
 ここに帰ってくるー

川辺に樹々を育み
その彩られた葉っぱを見ることもなく

ーやがて命が尽きる頃
 葉っぱたちはこんなに
 鮮やかなのだー

激しい流れが渦を巻き
飛沫は空に
大きな弧を描く

描かれた弧が
日差しの中

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「詩」一本のマッチ

「詩」一本のマッチ

暗い夜道にたっている
静けさが刺すように凍りついていた

かじかんだ手に息を吹きかける

寒さの痛みは両手だけではなく
心さえ凍らせてしまいそうだった

遠くに灯りが見える
ぼんやりオレンヂ色の光
光のなかに家族の笑い声が見える

一本のマッチを擦ってみる
小さく燃える炎もまたオレンヂ色だ

私がまだほんの小さな子どもだった頃に
出会ったような
もしかしたら
私がまだ生まれない頃に
出会ったような

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「詩」道

「詩」道

遠くまで歩いてきてしまった
振り返えらず歩いてきた
足元まで続く後ろに出来た道は見たくなかった

前に
ただ前に

見えない道を手探りで歩いている

空には飛行機雲が
どこまでも伸びていた
飛行機雲の先には
何か
とても優しい
そして暖かな何かが
あるような気がした

見えない道はやがて
空へと続き
とても懐かしい
昔確かに自分がいた処に
導いてくれるはずだ

後ろに出来た道を振り返れば
自分が傷

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「詩」一筋の光

「詩」一筋の光

ごめんなさい
ごめんなさい

ここに生まれてきて

ごめんなさい

あなたにとって良いように
一生懸命に考えて

言ったこと
した事
すべてが
あなたを傷つけてしまった

私はごめんなさいを言う事しか
できなかった

悪意など欠片もなく
生きてきたと思う

それでも
悪意ある人は悪意ある心で
私の心を推し量った。

どこまでも
私は深く落ちていく
底のない
暗闇に

いったいどのくらい経ったろう

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川

情熱的に
怒りにも似て
その激しさはどこから来るのだろう

目の前の川の流れは
同じように見えて
同じ形など一度としてない

最初は一滴の雨粒だった
一滴の雨粒が
木々に降り
土に帰っていく
数えきれなり雨粒が
土に帰って
やがて一つの流れになる

空の思い出を身体に染み込ませて
雨粒が憧れたものはなんだったろう

魚を育むことか
田畑を潤し人を育むことか

一つの方向へ
川は流れていく

やがて

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紅葉

紅葉

私たちはもうじき散っていきます

人間たちの世界から離れた山奥に
私たちは生まれました
まだ寒さの残る春の初め
私たちは樹の幹から小さな顔を出しました

それから
日の光を浴びて
大きな一枚の葉っぱになりました

夏になると私たちの仲間が
押し合うほどに茂り

たまに私たちの下を通る旅人に
木陰を作ってあげました

急に雨が降り出した時は
遠足に来た子どもたちを雨宿りさせました

私たちは
ありが

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「詩」声

「詩」声

(疲れたもの
重荷を背負うものは
誰でも私のもとにきなさい)

がんばってきた
いつも
いつもだ
きまって最後は
行き止まりだった

周りの人を傷つけたくなかった
どうしたら傷つけないか
そればかり
考えてきた
大切な人が口にした
おまえは勝手に生きてる
その言葉に
過去がすべて否定された

消えてなくなりたかった

遠く汽笛が聞こえた
何か大きなものに引きずられるように
私は聞こえる方向に歩んだ

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「詩」夕焼け

「詩」夕焼け

遥か遠く
暗い闇の中で
故郷はぼんやり祭りのように
あたたかい

思い出の中
薄明かりの下で
母が破れた服を繕っている

貧しかったはずなのに
貧しいと感じなかったのは
お金に代えられない
豊かなものがあったから
比べることの出来ない
豊かなものがあったから

人々の一日の疲れを労うように
日の沈んだ西の空には
夕焼けがひときわ明るさを増している

母は重い足を引き摺りながら
家路につく
疲れを笑

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「歌詩」メリークリスマス

1
もしも あなたが
悲しくて辛い時には
思い出してほしい

あなたの横にはいつも
イエスさまが
いっしょにいてくださる

あなたはけっして
ひとりではない
イエスさまといっしよなら
苦しい気持ちも半分になるでしょう

2
もしも あなたに
うれしいことがあった時には
思い出してほしい

あなたの横ではいつも
イエスさまが
いっしょに喜んでくださる

あなたはけっして
ひとりではない
イエスさまと

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「詩」花を生ける

「詩」花を生ける

花を見つめる

角度を変えてみると
表情が変わる

どの角度から見るのが一番美しいか
何度も何度も
角度を変える

そうしてやっと
一番美しく見える角度を見つける

あなたはなんという名前?
どこでだれに育ててもらったの?
遥か昔あなたの祖先はどんなふうに生きたの?

心の中でそっと
花に話しかけながら

花をみつめる

ぼんやりと形が見えたような気がする
花がなりたい形をはっきりと伝えてくるまで

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「詩」朝まだき

「詩」朝まだき

朝まだき
暗い空に
オリオン座の大三角形がまたたいている
昨日から抜けきれない今日が
始まろうとしている

思い出したくない辛い思い出が
ずるずるとよみがえり
立ち止まってしまった昨日

遠い昔
道はどこにもないように思った
がんばってもがんばっても
なにひとつ上手くいかなかった

「今 目の前にある事
やらなきゃならない事だけ
一緒懸命にやってごらん。」
そう言ってくれた人

遠くを見ないで

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