「詩」一本のマッチ
暗い夜道にたっている
静けさが刺すように凍りついていた
かじかんだ手に息を吹きかける
寒さの痛みは両手だけではなく
心さえ凍らせてしまいそうだった
遠くに灯りが見える
ぼんやりオレンヂ色の光
光のなかに家族の笑い声が見える
一本のマッチを擦ってみる
小さく燃える炎もまたオレンヂ色だ
私がまだほんの小さな子どもだった頃に
出会ったような
もしかしたら
私がまだ生まれない頃に
出会ったような温もり
また
一本のマッチを擦ってみる
オレンヂ色の炎の中に誰かがいる
私がまだ気付けない小さな子どもだった頃に
大切にしてくれた
もしかしたら
私がまだこの世にいない頃から
ずっとずっと大切にしてくれた人
一本のマッチを擦ってみる
(「マッチ売りの少女」へのオマージュ)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?