紅葉
私たちはもうじき散っていきます
人間たちの世界から離れた山奥に
私たちは生まれました
まだ寒さの残る春の初め
私たちは樹の幹から小さな顔を出しました
それから
日の光を浴びて
大きな一枚の葉っぱになりました
夏になると私たちの仲間が
押し合うほどに茂り
たまに私たちの下を通る旅人に
木陰を作ってあげました
急に雨が降り出した時は
遠足に来た子どもたちを雨宿りさせました
私たちは
ありがとうと言われる事もなく
黙って
そっと
人間たちを見守りました
秋になって
冬が近づくと
私たちは一番美しい色に変わります
誰に見られるでもなく
誰に褒められるでもなく
私たちは自分たちの思い出のために
美しい色に変わります
もうじき散って
私たちはその下に
蝶や蛾や虫たちの命を育みます
やがて春になり
虫たちが大空に飛び立っていく頃
私たちは
大地に帰っていくのです
(写真 O.Mikio)
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