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短編小説

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記事一覧

短編小説。 ノンフィクション。

短編小説。 ノンフィクション。

夏の終わり。僕は何の変哲もない日常を送っている。テレビでは、ある映画で、主演女優賞を取ったというニュースが流れる。僕は電源をきり、出かける用意をする。僕は休日、レンタルビデオ屋に来た。旧作は1本100円で借りることが可能で、新作は少し高い。期限さえ過ぎなければ、お手頃である。何本か借りていく。僕は久しぶりにあの作品が見たくなってそれを借りた。DVDを再生する。少し前に流行った映画の広告と、おことわ

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短編小説。 夜想。

短編小説。 夜想。

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強い風が吹く。私は別れが嫌いだった。これから先、その人と会えなくなるような別れも、遊び終わって家に帰る別れも。どんな別れも嫌いだった。分かれ道に着いてから私は悲しくなる。どんなに楽しい時間、幸せな時間を過ごしても、家族でもない限り、長い時間、一緒にいることはありえないことは分かっている。分かりたくなかった。終わりのある始まりが嫌いな私のことを、人はわがま

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短編小説。 ビー玉。



きれいなビー玉を買ってもらった。百円ショップにあったそれは量産物であるにも関わらず、僕の心をとてもワクワクさせた。透明感の溢れ出るその玉は水色や緑色や青色があってまるで宝石やダイヤモンドを持っている気分になった。中でも一番綺麗なのが金色っぽいビー玉で、特にそれを大事に机の中にしまい、たまにみるのが楽しみになっていた。

その頃、僕は中学生になって、遊ぶことが仕事だった小学生があっという間に

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短編小説。 『ひまわりへ。』

あの日、僕たちはドライブに出かけた。2日前に別れた君が突然現れた。家に忘れ物をした君が物を取りにきて、でもなんか寂しくて2人で最後にドライブに行った。もちろん、友達として。僕はなぜかあの時、2人でいたいって思った。というよりも2人でいなければならないと思っていた。僕たちは2人でなければ意味がなく、1人だったらダメになってしまう。実際、僕はこの君がいなかった間、死んだような生活だった。具合も悪くない

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短編小説。 『かけっこ。』

感謝。後悔。

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私は、もうすぐ死ぬ。この老人ホームに入ってもうすぐ2年になる。人の死期はわからぬが、自分の死期は案外わかるものだ。だから、ここの施設の感想でもここに書いておこう。

環境はいい。毎日3食、美味いご飯が出てくる。孤立した生活が送れる。世間からも、家族からも。家族とは、もう何年もあっていない。妻が亡くなったあと、私は家族に迷惑をかけたく

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短編小説。 『カエル。』

短編小説。 『カエル。』

・ここに観察日記を書いておこうと思う。思い出せる限り。

・初日。

 30分残業した仕事を終わり、家に帰る。家から職場まで約1時間かかる。もうそれにも慣れた結婚生活10年目。夏のじめじめした日。関東では、明日更新されるであろう今季最高気温が観測された。

新婚の時、電車に乗ってる間に今日は何をしてあげよう、どうやって喜ばせてやろうなどと考えていたが、最近はめっきり。このつまらない日常になにか刺激

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短編小説。 『銀河と出会い。』

・私という人物。

私は地球単位で考えると生涯の、どのあたりでスポットが当たるのだろう。そんなことを考えながら今日も世界は明日を迎える。世界から見たらちっぽけなこの私は夢の中でだけ宇宙に行くことができる。宇宙の果て、惑星から惑星にジャンプして飛び越えることができる。そして何万光年も先にある銀河を目指す途中で夢から醒め、昨日と順番が違うだけの授業がある学校に向かい歩く。

人生は一度きりで私

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短編小説。虹の見える丘。

0、 日常。
1、 変化。

登場人物
ぼく
盲目の彼女
クラスのみんな

(僕の知識不足で、盲目の方は普通のクラスにいないことが多いかもなのですが、あくまでフィクションとして見てやってください)

0 日常。

雨が降っている。普通だ。慣れたことだ。僕はいつも持ち歩いている折り畳み傘で今日も帰るんだ。僕が、なにか気合いいれて出かけたり、行事があったりすると雨が降る。最初は僕が原因

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短編小説『去り際の終電』第2話

大学2年生になった。そのころになると先輩は就活で必死になり大変そうだった。先輩のツイッターを見ると、就活辞めたい、か、酒飲みたい、か。無言で日本酒の画像を、上げていた。日本酒の画像に一番いいねがついていてクスッと笑える。先輩がリツイートした漫画を読んでいると先輩からLINEが来た。今からウチ来ない?日本酒あるよ?というものだった。日本酒は苦手だし、先輩の家も遠い。だが終電間際の時間に家を飛び出し、

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短編小説『去り際の終電』

あの日もこんな日だった。いくら待っても彼女は来ない。次はもう、終電だ。

彼女とは、大学で会った。2個上の先輩で学科と学部が一緒、あとサークルも。そのサークルには同じ学科と学部の人は僕と彼女しかいなかった。新入生歓迎会では、その人の隣に座り、いろんな話を聞いた。チョコのような匂いの香水とタバコはピアニッシモを吸っていて、チョコミントを彷彿とさせた。先輩は日本酒が好きでよくベロベロに酔ってしまう

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短編小説 『のろい』

短編。

「知らないんです」
取り調べ室の男は言った。彼の様子から見るに、それは事実らしい。どうやら本当に知らない間に他人に暴行を加えたらしい。

ーーーー僕には呪いが見える。
唐突に彼は呟いた。そして、彼は何があったかをブツブツと語り始めた。

呪いというのは、なにかに対して想いが強くなりすぎると現れる物だ。僕にとっての呪いは僕自身だ。

僕が駅のホームで待ってるとそいつは現れた

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