〈あなた、きれいだわ。笑うと、特に素敵〉 平日16時、スーパーのレジ。私の前に並んでいた、インテリ風お洒落のちょっといかしたお姉さま(年の頃、50歳ちょっとと見た…
久しぶりに神戸の夢を見た。 むかし、職場で知り合ったおじさま、Kさんが登場する夢だった。痩せてひょろりと背が高く、雨の日も風の日も、冬も春も―、紙切れみたい…
焦らすようにゆっくり、少しずつ。 コンコルド広場からピンクのトラックがやって来る。 ーぼぉおん、ぼぉん! 時折、大きなホーンを鳴らして。周りにはレインボー…
ジジッ、ジジジ… 薬指の上で電動針が踊っています。 「猫にひっかかれるのと同じだよ」 彫師のお兄さんはそう微笑みましたが、いえいえいえ。 猫のそれがヒリヒリなら…
「150年後には、パリも海の下に沈むらしいよ。」 あちらにも、こちらにも。まばゆい陽射しをいたるところに、ピンで留めたような午後だった。樹も人も黒々とした影を…
“ 旅する女はみな逃避行者である ” 深夜、ベッドで広げた本に、そんな言葉を見つけてドキリとする。 2015年の秋、私は逃避行者になった。41歳だった。 正確には…
Mio
2018年10月1日 00:55
〈あなた、きれいだわ。笑うと、特に素敵〉 平日16時、スーパーのレジ。私の前に並んでいた、インテリ風お洒落のちょっといかしたお姉さま(年の頃、50歳ちょっとと見た)が、つぶやいた。〈あら、そんな…。メルシ、マダム〉 いわれたレジのお姉ちゃんはくすぐったそうに肩をすくめ、にんまり。そりゃ、そうだ。〈きれいよ、素敵よ〉唐突にそんな言葉をかけられて、うれしくない女なんていない。しかも゛同性に゛だもん
2018年8月17日 22:20
久しぶりに神戸の夢を見た。 むかし、職場で知り合ったおじさま、Kさんが登場する夢だった。痩せてひょろりと背が高く、雨の日も風の日も、冬も春も―、紙切れみたいに薄い黒コートをひょいと引っかけ、ひとり飄々と歩いていたKさん。「月夜の電信柱」、見ていると宮沢賢治のお話を思い出した。細い声でぼそぼそ喋り、時折こそっと冗談を交えるKさんは、学生時代からずっと詩を書いていて、数年に一度、自費で詩集を出し
2018年8月9日 23:31
焦らすようにゆっくり、少しずつ。 コンコルド広場からピンクのトラックがやって来る。 ーぼぉおん、ぼぉん! 時折、大きなホーンを鳴らして。周りにはレインボーの旗を纏って歌い、踊る人びと。ほぼほぼ裸だったり、パンクだったり、ドラッグクィーンだったり!あふれる色、スタイル、混沌、氾濫、そしてミックス!見上げるとパステルブルーの空に、綿あめみたいな雲がふわりふわり。「うん? きらきらしてる、あれ
2018年8月8日 16:15
2018年8月8日 15:43
2018年8月7日 23:52
ジジッ、ジジジ…薬指の上で電動針が踊っています。「猫にひっかかれるのと同じだよ」彫師のお兄さんはそう微笑みましたが、いえいえいえ。猫のそれがヒリヒリなら、こちらはジンジンとでもいいましょうか。それでも思ったよりずっと痛くありません。なのに、じっとりとからだが熱い。指の上を這うバイブレーション、電動針の機械音に私はすっかり怖気づいています。「大丈夫、すぐに終わるよ
2018年8月7日 20:46
「150年後には、パリも海の下に沈むらしいよ。」 あちらにも、こちらにも。まばゆい陽射しをいたるところに、ピンで留めたような午後だった。樹も人も黒々とした影を引きずり、じっと暑さに耐えている。 パリだけじゃない。ロンドンだって、街中に大きな川がある都市は、温暖化による海面上昇でみんな沈むという。「まぁ、その頃にはもう、僕らはこの世にいないけどね」「さぁ、それはどうかな。吸血鬼にでもなって
2018年8月7日 20:42
“ 旅する女はみな逃避行者である ” 深夜、ベッドで広げた本に、そんな言葉を見つけてドキリとする。 2015年の秋、私は逃避行者になった。41歳だった。 正確には、逃げ出すほどの現実すら持たない、実に身軽な〈エセ・逃避行者〉だった。 パートナー、家庭、子供。何かしらのまとまった経験値と(キャリアと呼んでもいい)、それに伴う自信や能力、責任。あるいは夢、目標、何かしらの帰属意識。人生とい