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花島南
2024年4月28日 07:12
祖父母がドーナツを買って来た。五歳の長女はチョコ。もうすぐ二歳の次女は抹茶を選んだけれど、一口食べてやめてしまった。「なんで抹茶を選んだんだろ」首を傾げる大人たちに、長女が「マスカットだと思ったんだよ」。「ああ、大好きだもんね」長女の名解説に大人たちは目を細めたのでした。※「星々」様の「春の星々140字小説コンテスト」に応募した作品です。note掲載にあたりに加筆修正しました。
2024年3月26日 19:28
ガチャリ。玄関の開く音。「なんか来たー!」と叫ぶ母。姉の手を引き、リビングにいた私のところに駆けてくる。不穏な空気を感じ、頭が空っぽになる。三人で玄関の方をうかがう。暗がりに大きな人影。ゆっくり近づいてくる。母と姉が大声をあげながら、何かを投げつけている。人影が灯りの下に入る。真っ赤な顔。口から牙。両手を上げて向かってくる。「ぎゃー」と大泣きする私。視界が真っ黒に染まる。
2024年3月9日 15:56
♪春のこもれ陽の中で♪ラジオから森田童子「ぼくたちの失敗」が流れてきた。いまにも消えそうな、ささやくような歌声。♪ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた♪貧乏学生だったあの頃。木造モルタルアパート「富士見荘」の2階。(富士山が見えるわけではない)風呂なし、台所・トイレ共用の四畳半一間。窓を開けると、目の前に大家さんの庭の柿の木。(どれも渋かった)朝、電熱器でお湯を沸かし、コ
2024年2月24日 18:01
夜中。隣に寝ている愛しい人が、くっ、くっ。くしゃみを2度我慢したあと、ぷぅ。小さなオナラをした。私は、笑いを堪え、体を震わせた。愛しい人は寝息をたてている。私は、愛しい人に脚を絡めた。あったかい。突然、ひえええー。愛しい人の叫び声。そーです。私が、冷え性なんです。
2024年1月11日 07:47
みつき、年末年始はマリコ部長のお家におじゃましました。もちろん後輩のエイコも一緒。年越しお泊まり女子会です。北京ダックとお寿司をつまんで、紅白歌合戦にツッコミなど入れながら(首振りダンスむずい、けん玉、途中で失敗してただろ、キャンディーズの親衛隊がいまやみんな老人だー、生田ちゃんは坂道系では一番の大物になったわね、だのだの)、ビール、ワインで泥酔。新年は朝からおこたに丸まって、お餅、おせ
2023年12月26日 11:36
オフィス。コーヒーブレイク。マリコ部長、スマホで小説を読んでいる。みつき(以下み)「なに読んでいるんですか」マリコ部長(以下マ)「ん? 青空文庫。岡本かの子の『越年』(1939)。年の暮れ、終業時間。男性社員からいきなり平手打ちされて憤慨するOLのお話。そのまま会社を辞めてしまった彼を探し回るの」み「おもしろそうですね。なんでビンタされちゃうのかしら」み「それは読んでのお楽しみ」み「あ
2023年12月23日 14:32
みつき、新聞が大好き。東京新聞を定期購読して、時々コンビニで朝日新聞を購入している。新聞は衰退産業だ、将来消滅するなんて週刊誌でけなされているけれど、情報、知の宝庫ですよ。例えば12月19日(火曜日)付の朝日新聞。こんなにたくさんの記事が気になったり、ためになったり、切り抜いたりした。まずはニュース。「安倍派・二階派きょう捜索」「自民支持率下落」。当然よ。この十数年、政治に関する
2023年12月10日 16:53
オフィス・コーヒーブレイク。みつきはいま、いつものようにマリコ部長とおしゃべりしています。マリコ部長(以下マ)「みて。家の机、整理してたら引き出しからこんなのが出てきた」みつき(以下み)「電車の切符? 幸福行き!」マ「そう。愛国駅から幸福駅へ。北海道のよ。『愛の国から幸福へ』。1970年代にブームになったの。小学生かな、家族で旅行に行った時に買った」み「なんて素敵なんでしょう」みつ
2023年10月28日 16:48
五歳の長女が、オバー、オジー相手に読み聞かせをしている。と言っても、まだ字を覚え始めたばかりなので本は読めない。即興で物語を作っている。「ハロウィンです。ママは魔女です。私は猫です。パパは骨です。そしてパパはお化けになりました。妹はユニコーン。やっぱり、ママもユニコーン、パパはパンプキン。オジーはカオナシの洋服を着ました。オバーはミイラの服を着ました。私は大喜びです。オジー
2023年10月16日 19:19
長女(五歳)がオジーとおしゃべりしている。長女「ブーブーブー。なんでしょう」オジー「えーっと」長女「バイクがブー。ブーブーブー」オジー「車がブー」長女「ブー、違うよ。小ブタがブー。ブーブーブー」オジー「おならがブー」長女「ピンポン」オジー「ブーブーブー」長女「なに?」オジー「高木ブー」長女「なに、それ、かわいい。♪ブーブーブー、高木ブー♪」長女、大笑いしながら歌っている