マガジンのカバー画像

ひとつなるもの すべてなるもの

242
ひみの連載ストーリー
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

第183話 産みの苦しみの果ての愛

第183話 産みの苦しみの果ての愛

 その夜は衝動的に、お風呂場にレムリアンシードクリスタルを持ち込んでいた。湯船に入ると少しの間、ここに来るまでに吸収されたクリスタル自体の不浄を溶かし出すように、手の中に入れてコロコロと遊ぶ。根拠はないけどどういう訳か、この水晶から発せられるエネルギーとはスサナル先生そのものだという気がしてならず、愛おしさが増していく。
 それからやがておへその真下に置きたくなって、下腹部の皮膚の上に優しく載せて

もっとみる
第182話 二つの目覚め

第182話 二つの目覚め

 夢を見ていた。
とある男の人が深い眠りに就いているとゾロゾロと人がやってきて、手際良く、寝ている彼の腰のあたりに細い紐を一本だけ括りつけてから去っていく。
 気づけば布団は剥がされ、自分の置かれた状況も把握できずに狼狽えて(うろたえて)いるにもかかわらず、雪山の上に連れてこられたと思う間もなくいきなり崖から落とされる。
 垂直に近い崖肌に残る雪は少なく、滑落していく背中はすぐにも鋭い岩に当たりそ

もっとみる
第181話 太陽の双子の使い

第181話 太陽の双子の使い

「ひみ。なんか一緒に事業でもするかい?」

 けーこにそう誘われてから、この『meetoo』という場が地上に具現化するまで二週間すらも猶予が無かった。

 本来だったら準備にもっと時間をかけたいタイプの私だったけど、けーこのカレンダーアプリには、その日付の欄には書いたけーこ自身でも理由のわからない「new beginings」の文字があった。それが宇宙的スケジュールだということを彼女自身が直感して

もっとみる
第180話 封印された浦島太郎

第180話 封印された浦島太郎

「浦島太郎をちゃんと知らなくちゃ。」

 鶴の肉体を纏ったスサナル先生とチャクラのまぐわいを持った朝、直感的にそう思った私は早速調べてみることにした。

 思えばもう五年も前。
私自身のツインレイの旅のスタートとなった玉置神社の山頂で、姿の見えない子供が歌う童謡を耳にしたその時からずっと、浦島太郎という存在が心の隅で気になっていた。

 そもそも浦島太郎とは、古事記におけるヒコホホデミがそのモデル

もっとみる
第179話 ツインレイという信頼関係

第179話 ツインレイという信頼関係

 真っ黒がどこまでも広がった、夜の海のような存在と会話をしていた。

「お前はお前でいろ。そうでないと俺も俺でいられない。」

 私にそれを伝えてきた“彼”の真意とはこうだった。

……自分が作り出した“彼女”が、彼女自身に不足を感じている。足りないと言わんばかりに次々と異質なものを身につけ、どんどん自己から遠ざかっている。
 そのままのお前を愛したかったのに。なのにお前は俺を傷つける。そのうち俺

もっとみる
第178話 愛と憎しみとツインレイ

第178話 愛と憎しみとツインレイ

 それから間もなく、けーこは私のことを“ちゃんづけ”で呼び始めた。どういう訳だか彼女にとっての『愛すべきコンテンツ』と化してしまった私はしばらくの間、シリウスのあれやこれやを話して聞かせた。

 自分たちが住んでいた場所は本当に田舎だということ。小川が流れていること。虹も出ること。夜空もあること。編み物の文化があったということ。リトは茶色いチョッキを羽織っていること(ベストと呼ぶより、左右の身頃を

もっとみる
第177話 花束

第177話 花束

 リトの小さな心の中には、いつもこんな想いがあった。

「また、僕の知らないところで大人たちだけで勝手に決めて、お母さんは僕を捨てて行っちゃうんだ。みんな僕のことなんてどうだっていいんだ。」

 仕方がないことではあったけど、当時の父も母も、まだ幼く戦争を理解していないリトを蚊帳の外に置くしかなかった。
 だけどそれはリトにとっては、“自分ばかりが除け者にされて、大人たちが結託してよからぬ相談をし

もっとみる
第176話 宇宙の因果のシナリオ

第176話 宇宙の因果のシナリオ

「わからない。ひみは一体、どこを見ているの?
あれから私とタケくんとは、『何があっても頑張るしかないね』ってお互い信じて続けていく約束をした。
 それからひみは、私とは別の道を行くようだから、私のほうからひみに対して一時的な別れを告げてる。
 それと、そんなことわかってるって思うかもしれないけど、ひみが見ているタケくんはひみ自身だよ。タケくんを盾にしてるけど、なんだか私に対して怒ってるよね。
 あ

もっとみる
第175話 迷路

第175話 迷路

 もうこれ以上、けーことは深く関わらないようにしようと決めたばかりだったけど、深夜再びタケくんの意識がやってきたことで堪らず彼女に抗議のLINEを送りつけた。

「昨日の夜中、スサナル先生の意識に繋がろうとするたびに、タケくんが割って入るように飛んできた。
 “タケ。タケ。”って自分の名前のアピールを続けるから少し浄化しようとしたんだけど、そうすると今度はけーこの意識が私とタケくんを見にやってくる

もっとみる
第174話 順風満帆・逆風満帆

第174話 順風満帆・逆風満帆

 春分のすぐ後、あきらの高校は春休みを迎えた。
朝夕の送り迎えから解放されるとその分集中して内観をすることができるのだが、それに伴ってもう一つ、厄介ごとがくっついているのがわかってしまった。

 あの日以来、タケくんのビジョンがしょっちゅう頻繁に現れる。あろうことかなんと、けーこのツインレイに憑依されてしまっていた。
 ヤマタ先生にしても今までクリアにしてきた他の男性たちにしても、気持ちをわかって

もっとみる
第173話 三次元からの奴隷解放

第173話 三次元からの奴隷解放

 鹿の夢を視ていた。

 ひときわ大きな立派な角を生やした雄鹿が一頭佇んでいる。ところが皮肉なことに、彼はその角のせいで雁字搦めになっていた。寒々しい冬の藤棚のような、空一帯に張り巡らされた古枝と角とが癒着して、またその角自体にもゴミやら布やら余計なものまで引っかかっていて全く身動きが取れていない。天を覆うその木の枝は、遥か彼方まで続いていた。

 鹿自身、前にも後ろにも一歩も進めずにいるのにもか

もっとみる
第172話 蠱惑

第172話 蠱惑

(こわく)

 いろんな想いが錯綜している。

 プレアデスの私が完璧じゃなかったからこそ、やがて闇と光のカオスである地球へとやって来ることへと繋がりそこでもがく中で、己の闇感情やレプティリアンなど、本来愛すべき存在の真価を見つけることがようやくできた。

 プレアデスの私が闇を知らなかったからこそ闇を学ぶためオリオンへと向かい、絶望の中で闇側の戦士同士として、あきらというかけがえのない希望に出会

もっとみる
第171話 人生でいちばん受け入れ難い日

第171話 人生でいちばん受け入れ難い日

「自分は、愛されてはいけないのではないか。」

 そんな思いが頭を掠める。
この前、スサナル先生に抱きしめられたことで出てきたおかしな違和感。これを自分なりに探っていくと、そんな答えに突き当たった。自分で自分を許せない何かが、さらに奥底に沈んでいた。

……

「ひみさん。相変わらずじゃんじゃん進んでいきますね。もう、“ひみさん”っていうのは一つの職業だね。おしごと。」

 次から次から課題を自ら

もっとみる
第170話 春雷

第170話 春雷

(ハルノイカヅチ)

 冷えた体に温かい食事をいただくと、けーこと二人で少し通りをひやかして歩いた。小町通りをぐるっと回って若宮大路に差し掛かると、彼女がこんなことを言い出した。

「さっきからなんか、もう調整始まってるのかなぁ。神社の途中からさぁ、新しいガイドが付いたっぽいんだよね。沖縄の……シーサーとか、あー、あとは、ジーニーみたいなムキムキっぽい人。あんまり言うと怒られそうだけどね。あ、ちょ

もっとみる