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第181話 太陽の双子の使い


「ひみ。なんか一緒に事業でもするかい?」

 けーこにそう誘われてから、この『meetoo』という場が地上に具現化するまで二週間すらも猶予が無かった。

 本来だったら準備にもっと時間をかけたいタイプの私だったけど、けーこのカレンダーアプリには、その日付の欄には書いたけーこ自身でも理由のわからない「new beginings」の文字があった。それが宇宙的スケジュールだということを彼女自身が直感しており、四月二十日の稼働を目標にあらゆる準備を進めていく。
 また、けーこのガイドだったカルさんは、いつの間にか今度は私のガイドとして異動してきて厳かに調整が進んでいった。

 そんな、時間も体力も限られた中でも二人で出かけることは忘れなかった。もしかしたら「ミーティングを兼ねたお出かけ」と称してはいても、私たちのほうが神社から呼ばれていたと言ったほうが正解なのかもしれないが。


 横浜市、師岡(もろおか)熊野神社。
ある朝、八咫烏の夢を見るという予兆があった次の日に招かれたこちらの神社はイザナミを主祭神とし、太陽の眷属である八咫烏を神紋に持っている。初代神武天皇(※)を導いたのもまた八咫烏とされていて、日の丸(太陽)を掲揚する国旗掲揚塔とは、八咫烏が神武天皇の弓に留まった様子を模していると言われている。

 道路を挟んだ向かいの池に坐す(おわす)イチキシマヒメ、本殿のイザナミとご挨拶を終え、それから裏手へと回り込む。気持ちよく整備された池の周りにはいくつかの摂末社があり、多くの神々が迎えてくれた。

 聖徳太子のように、昔から色々な物事において一度に複数のことをこなせてしまうけーこはそれらの社の真ん中に立つと、十の耳を駆使して同時に彼らからのメッセージを受け取る。
 対してそんな離れ技のできない私はちまちまと、一つ一つのお社に向かってお一人お一人ご挨拶をしていく。すると当然、毎回私を待つことになるけーこが、私の参拝の間を縫ってこんなことを聞いてきた。

「ひみー、ここにいるさぁ、コノハナサクヤヒメとククリヒメとセオリツヒメ(※)。この中で誰が一番美しい?私、次はかわいくて綺麗なお姫様のガイドが欲しい。」

「ええー?この方々はみんな美人だって言われているけど……。」

 ビジョンの多くにおいて、私の場合は何故だか顔かたちに関してはぼやけて視えないことが殆どで、彼女からそう聞かれても主観を交えて答えることができなかった。

「うん。なんかこの人たちから“引かれた”のがわかったからいいや。
 あっ、そうだ。お願いすんの忘れてた。
ええと、金とイケメンをください。お願いします!」

 手を合わせ、大きな声でそう言ったけーこに対してこの三柱の女神さまから「あなたも大変ね。」との声をかけられ、労いを受けて笑ってしまった。まさか名のある神々からけーこのことで同情を受ける日が来るとは。

 それから最後に神明社の前でご挨拶をすると、アマテラスからこんな言葉をいただいた。

「あなたは太陽の巫女。あなたが照らすのよ。」

 思いもよらないそのお言葉に少しだけ、心臓がふわふわと浮ついてしまった。それを聞くなり直感したのだ。『太陽の巫女とは日の巫女、ヒミコ。』
 なぜ今まで、ずっと“ひみ”の名で生きてきたのかが今日ここにきて繋がってしまった。
 それからふっと我に返り、その意をちゃんと汲み直した。

「お役目、努めさせていただきます。」


『カラスに注意』。
神明社の由緒書の立て札の棒には、普通はそんな所に付けない筈なのに何故か、太陽の使いであるカラスに注意せよとの看板までもが貼られていた。

 行き先は、私の男性性であるスサナル先生がきっと導いてくれると思った。八咫烏を羅針盤に、meetooという船のための海図を広げる支度をした。




※神武天皇……前回の浦島太郎、ヒコホホデミの子孫にあたり、同時に彼もまた素戔嗚尊です。

※セオリツヒメ……師岡熊野神社においてはミツハノメノカミとして祀られています。


(参考)
第28話 『緑の人』


written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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けーこはいつも、その時ついてるガイドと色々絡むタイプなんですが、一方私はというとどなたがいても日常的に絡むことは少な目です。
いいんだか悪いんだか、よほどの時しか存在を感知しません。

でね、そんな私とこのカルさん。
実は少し前のお話『愛と憎しみとツインレイ』で書いた、大きな気づきがあった時。
「お前もわりと気づくの早かったな。お前の場合はもっとかかるかと思った。」と言われました。

ガイドスピリットさんたちって、例えその人との間でやり取りを感じられてないように思えても、やっぱり教育係というか、目標基準まで導いてくれてるんだなって思います。

あとカルさんとの思い出は、私の浄化の種類で、おでこ一帯に無数の針を刺されて電流流されたような痛みがピリピリ、チクチクと続いて「イー!!」ってなる時があるんですが、その時うっかり手で押さえようとしたら、「触るな!」って一喝されたこと笑
それ以来言いつけ守ってます笑

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←今までのお話はこちら

→第182話 二つの目覚め

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