世界のアグリフード

世界の農業や食料問題の動きをまとめています

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世界の農業や食料問題の動きをまとめています

記事一覧

デンマークが「げっぷ税」導入へ EU全域への拡大を期待

デンマーク政府は6月25日、牛や羊に課税する「げっぷ税」を含め、農業部門から排出される温室効果ガスを対象に、2030年から世界初の炭素税を課すと発表しました①②…

世界の漁業生産は過去最高の1億8540万トン 養殖が初めて漁獲を上回る

国連食糧農業機関(FAO)が6月7日に公表した「世界漁業・養殖業白書」(SOFIA)によると、2022年の世界全体の漁業生産量(藻類除く)は1億8540万トンと…

ニュージーランドが「げっぷ税」構想を撤回 政権交代で方針転換

ニュージーランド政府は6月11日、牛や羊に課税する世界初の「げっぷ税」構想を撤回すると発表しました①②。農業界が猛反発し、中止するよう求めていたことを受け、政権…

WTO漁業交渉の部分合意から2年、いまだ発効せず

世界貿易機関(WTO)の漁業補助金の削減交渉で2022年6月に部分合意が得られてから2年が経過しました。2001年にドーハ・ラウンドが始まって以降、加盟国の対立…

米国の有機製品売上高が過去最高をまた更新

米国のオーガニック(有機)取引協会(OTA)は5月14日、2023年の米国の有機製品の売上高は前年比3.4%増の697億ドル(1ドル=156円換算で約10.9兆…

中国がゲノム編集小麦・トウモロコシの国内生産を初認可 バイオテクノロジーの活用を加速

中国の農業農村省(MARA)は5月8日、ゲノム編集小麦とトウモロコシの国内生産を初めて認可しました①②。既にゲノム編集大豆は認可しており、認可済みのゲノム編集作…

英国の食料安保は「おおむね安定」 9項目で現状分析

英政府は5月14日、食料安全保障指標(UK Food Security Index)を初めて公表しました。英国の食料安保に関し、「世界の食料供給」や「自国の食料自給」など国内外の状況…

カナダ当局、穀物メジャーの買収計画に「重大な懸念」

カナダ競争局は4月23日、米国の大手穀物商社ブンゲによるオランダの穀物商社バイテラの買収計画について、「重大な競争上の懸念がある」との見解を発表しました。両社は…

フィリピン裁判所がゴールデンライスの増殖禁じる 推進派に打撃

フィリピンの控訴裁判所は4月17日、遺伝子組み換え(GM)によって通常のコメよりベータカロテンの含有量を増やした「ゴールデンライス」について、健康や環境への懸念…

米国がバイオエタノールの混合率を一時的に15%に拡大 恒久化が焦点に

米環境保護局(EPA)は4月19日、トウモロコシを原料とするバイオエタノールのガソリンへの混合率について、夏季に限った一時的な措置として、本来の10%から15%…

EU加盟国が環境規制緩和を支持 環境団体は批判

欧州連合(EU)の加盟国は3月26日、農業・漁業理事会に先立って開かれた農業特別委員会で、欧州委員会が提案していた農業に対する環境規制緩和案への支持を表明しました…

バイエル、旧モンサントの分離を先送り 4つの課題の対応を優先

ドイツ・バイエルのビル・アンダーソン最高経営責任者(CEO)は3月5日の決算発表会で、旧米モンサントの分離を含む組織改革について、「答えは今ではない」と述べ、結論…

WTO閣僚会議、成果なく終了 漁業補助金や農業では文書採択されず

世界貿易機関(WTO)の第13回閣僚会議が2月26日~3月2日にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれ、ほとんど成果がないまま終了しました①。優先順位が高…

オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性

オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)は2月16日、「パナマ病」への抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)バナナについて、「既存のバナナと同等…

米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

米農務省(USDA)は2月13日、2022年の農業センサスを公表しました①②③。農家数は190万0487戸と、2017年の前回調査に比べ6.9%減る一方、1農家…

世界の有機農業面積は26%増の9638万ヘクタール 日本は92位に後退

スイスの有機農業研究機関FiBLとドイツのIFOAMが2月13日に発表した年次報告書によると、2022年の世界の有機農業栽培面積は前年比26.6%増の9637万…

デンマークが「げっぷ税」導入へ EU全域への拡大を期待

デンマークが「げっぷ税」導入へ EU全域への拡大を期待

デンマーク政府は6月25日、牛や羊に課税する「げっぷ税」を含め、農業部門から排出される温室効果ガスを対象に、2030年から世界初の炭素税を課すと発表しました①②③④⑤⑥。各国が追随し、欧州連合(EU)全体への拡大に期待を示しています。ニュージーランドのげっぷ税構想は農家の反対を受けて撤回されましたが、農業部門からの温室効果ガスの排出削減を目的に、新たに課税する動きが広がっています。

現地からの

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世界の漁業生産は過去最高の1億8540万トン 養殖が初めて漁獲を上回る

世界の漁業生産は過去最高の1億8540万トン 養殖が初めて漁獲を上回る

国連食糧農業機関(FAO)が6月7日に公表した「世界漁業・養殖業白書」(SOFIA)によると、2022年の世界全体の漁業生産量(藻類除く)は1億8540万トンと、2年前に比べ4.5%増え、過去最高を更新しました。漁獲漁業が1.3%増の9100万トンにとどまったのに対し、養殖業が7.6%増の9440万トンと大きく伸び、初めて漁獲漁業を上回りました。中国やインドなどアジアを中心に養殖業の拡大が鮮明にな

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ニュージーランドが「げっぷ税」構想を撤回 政権交代で方針転換

ニュージーランドが「げっぷ税」構想を撤回 政権交代で方針転換

ニュージーランド政府は6月11日、牛や羊に課税する世界初の「げっぷ税」構想を撤回すると発表しました①②。農業界が猛反発し、中止するよう求めていたことを受け、政権交代により2023年11月に誕生した国民党などの連立政権が方針転換に踏み切りました。農業界からは歓迎する声が聞かれる一方、環境団体などは「気候変動対策が後退した」と批判しています。

げっぷ税構想は、牛や羊がげっぷによって強力な温室効果ガ

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WTO漁業交渉の部分合意から2年、いまだ発効せず

WTO漁業交渉の部分合意から2年、いまだ発効せず

世界貿易機関(WTO)の漁業補助金の削減交渉で2022年6月に部分合意が得られてから2年が経過しました。2001年にドーハ・ラウンドが始まって以降、加盟国の対立でほとんど成果を生み出せない中、数少ない成果として当時はアピールされましたが、その後の正式な受諾手続きが進まず、いまだに発効しないという異常事態が続いています。WTOの弱体化が一段と進んでいます。

WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は

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米国の有機製品売上高が過去最高をまた更新

米国の有機製品売上高が過去最高をまた更新

米国のオーガニック(有機)取引協会(OTA)は5月14日、2023年の米国の有機製品の売上高は前年比3.4%増の697億ドル(1ドル=156円換算で約10.9兆円)となり、過去最高を更新したとの調査結果を発表しました。このうち食品が638億ドルと9割以上を占めています。食品の値上がりが続く中でも、健康や環境への意識の高まりを追い風に、割高な有機食品の需要拡大が続いています。

有機製品は、化学肥

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中国がゲノム編集小麦・トウモロコシの国内生産を初認可 バイオテクノロジーの活用を加速

中国がゲノム編集小麦・トウモロコシの国内生産を初認可 バイオテクノロジーの活用を加速

中国の農業農村省(MARA)は5月8日、ゲノム編集小麦とトウモロコシの国内生産を初めて認可しました①②。既にゲノム編集大豆は認可しており、認可済みのゲノム編集作物は3作物となります。中国は食料安全保障の強化を目的に、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシや大豆の商業栽培も本格化させ、バイオテクノロジー技術の活用を加速させています。

新たに国内生産を認可したのは、中国科学院の研究所と中国企業が共同開

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英国の食料安保は「おおむね安定」 9項目で現状分析

英国の食料安保は「おおむね安定」 9項目で現状分析

英政府は5月14日、食料安全保障指標(UK Food Security Index)を初めて公表しました。英国の食料安保に関し、「世界の食料供給」や「自国の食料自給」など国内外の状況を9項目に分けて現状を分析し、評価したものです。大半の項目が「おおむね安定している」との評価となり、全体としても「おおむね安定している」と結論付けました。複数の客観的なデータを基に、「現時点では英国の食料安保に大きな問

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カナダ当局、穀物メジャーの買収計画に「重大な懸念」

カナダ当局、穀物メジャーの買収計画に「重大な懸念」

カナダ競争局は4月23日、米国の大手穀物商社ブンゲによるオランダの穀物商社バイテラの買収計画について、「重大な競争上の懸念がある」との見解を発表しました。両社はもともとカナダで大きなシェアを占めているため、買収によってさらに巨大化すれば、穀物の調達や菜種油の販売で競争を阻害することになりかねないと指摘しました。買収が実現すれば、穀物メジャーによる寡占化が一段と進むことになりますが、一部資産の切り離

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フィリピン裁判所がゴールデンライスの増殖禁じる 推進派に打撃

フィリピン裁判所がゴールデンライスの増殖禁じる 推進派に打撃

フィリピンの控訴裁判所は4月17日、遺伝子組み換え(GM)によって通常のコメよりベータカロテンの含有量を増やした「ゴールデンライス」について、健康や環境への懸念があるとして、商業増殖を禁じる決定を下しました。フィリピン当局は安全性に問題はないとして世界で初めて商業栽培を認可しましたが、反対派が禁止を求めて提訴していました。GM食品をめぐる対立が改めて浮き彫りとなり、推進派にとっては大きな打撃となり

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米国がバイオエタノールの混合率を一時的に15%に拡大 恒久化が焦点に

米国がバイオエタノールの混合率を一時的に15%に拡大 恒久化が焦点に

米環境保護局(EPA)は4月19日、トウモロコシを原料とするバイオエタノールのガソリンへの混合率について、夏季に限った一時的な措置として、本来の10%から15%に拡大すると発表しました。トウモロコシの需要拡大策として農業界が要望していたことに対応しました。農業界では、一時的でなく恒久化への期待が強まっており、実現するかどうかが次の焦点となります。

米国では、バイオエタノールは主にトウモロコシを

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EU加盟国が環境規制緩和を支持 環境団体は批判

EU加盟国が環境規制緩和を支持 環境団体は批判

欧州連合(EU)の加盟国は3月26日、農業・漁業理事会に先立って開かれた農業特別委員会で、欧州委員会が提案していた農業に対する環境規制緩和案への支持を表明しました①②。農家の不満が高まり、域内各地でデモが相次いでいることを受け、共通農業政策(CAP)に基づく直接支払い条件を見直すという内容です。農業団体は「前向きなシグナル」と歓迎する一方、環境団体は批判しており、論議はまだ続きそうです。

ベルギ

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バイエル、旧モンサントの分離を先送り 4つの課題の対応を優先

バイエル、旧モンサントの分離を先送り 4つの課題の対応を優先

ドイツ・バイエルのビル・アンダーソン最高経営責任者(CEO)は3月5日の決算発表会で、旧米モンサントの分離を含む組織改革について、「答えは今ではない」と述べ、結論を2年以上先送りする考えを表明しました①②。緊急に対応しなければならない4課題として、①医薬品開発の強化②米国のラウンドアップ訴訟への対応③負債の削減④官僚主義の打破ーを挙げ、まずはこれらの対策を優先させるということです。一方で、組織改革

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WTO閣僚会議、成果なく終了 漁業補助金や農業では文書採択されず

WTO閣僚会議、成果なく終了 漁業補助金や農業では文書採択されず

世界貿易機関(WTO)の第13回閣僚会議が2月26日~3月2日にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれ、ほとんど成果がないまま終了しました①。優先順位が高かった漁業補助金や農業分野では、何の合意も得られず、成果文書すら採択されないという惨憺たる結果となりました。全世界から約4000人が集まり、多くのコストが投入されただけに、世界的な税金の無駄遣いとの批判が強まりそうです。

閣僚会議はWT

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オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性

オーストラリアとニュージーランドがGMバナナを世界で初承認 パナマ病に抵抗性

オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)は2月16日、「パナマ病」への抵抗性を高めた遺伝子組み換え(GM)バナナについて、「既存のバナナと同等の安全性と栄養価がある」として、食品としての流通を承認したと両国政府に通知しました①。GMバナナの承認は世界で初めてです。

パナマ病は、世界中のバナナ生産に深刻な被害を及ぼしているとされ、このGMバナナへの期待が高まりそうです。ただ、開

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米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

米国農家が190万戸に減少 平均年齢は58歳に上昇

米農務省(USDA)は2月13日、2022年の農業センサスを公表しました①②③。農家数は190万0487戸と、2017年の前回調査に比べ6.9%減る一方、1農家当たりの農地面積は5.0%増の463エーカー(1エーカー=約0.4ヘクタール)となりました。農家の平均年齢は58.1歳と、5年間で0.6歳上昇しました。農家の減少と規模拡大、高齢化は、日本を含め多くの国で共通しています。米国の農業関係者から

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世界の有機農業面積は26%増の9638万ヘクタール 日本は92位に後退

世界の有機農業面積は26%増の9638万ヘクタール 日本は92位に後退

スイスの有機農業研究機関FiBLとドイツのIFOAMが2月13日に発表した年次報告書によると、2022年の世界の有機農業栽培面積は前年比26.6%増の9637万6196ヘクタールとなり、過去最高を更新しました。オセアニアや欧州、南米、北米、アジア、アフリカの全ての大陸で増えており、有機農業が世界的に拡大し続けていることが示されました。日本は27.7%増の1万5319ヘクタールと大きく伸びましたが、

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