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中国がゲノム編集小麦・トウモロコシの国内生産を初認可 バイオテクノロジーの活用を加速

中国の農業農村省(MARA)は5月8日、ゲノム編集小麦とトウモロコシの国内生産を初めて認可しました。既にゲノム編集大豆は認可しており、認可済みのゲノム編集作物は3作物となります。中国は食料安全保障の強化を目的に、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシや大豆の商業栽培も本格化させ、バイオテクノロジー技術の活用を加速させています。
 
新たに国内生産を認可したのは、中国科学院の研究所と中国企業が共同開発したゲノム編集小麦と、別の中国企業が開発したゲノム編集トウモロコシです。期間は2029年5月までの5年間で、対象地域は中国全域です。
 
ゲノム編集小麦はうどんこ病への耐性を強め、ゲノム編集トウモロコシは収量を増やす効果があるということです。開発企業によると、うどんこ病は中国で小麦の収量減につながる3大病害の一つとされています。
 
中国は世界最大の小麦生産国であり、世界最大の小麦消費国です。家畜の飼料向けが中心のトウモロコシに対し、小麦はパスタや麺、パンなど人間が直接食べるため、中国がゲノム編集小麦を認可したことが国際的に関心を集めているようです。
 
中国ではGM作物とともにゲノム編集作物への消費者の懸念は根強いため、消費者の反応をみながら慎重に導入を進めるとみられますが、他国が追随する可能性もあります。小麦を多く輸入する日本にもいずれは入ってくるかもしれません。種子業界の幹部はロイター通信に対し、「これは大きな一歩だ。中国が他の食用作物の認可に踏み切る光が見える」と語りました。
 
ゲノム編集小麦の開発企業によると、小麦と同じようにうどんこ病に悩まされているイチゴやトマト、キュウリにも同じ技術は適用できるということです。他国でもゲノム編集作物の認可取得を検討していることも明らかにしました。
 
MARAは同じ日、除草剤耐性や害虫抵抗性を高めたGMトウモロコシも新たに認可しました。開発した中国企業オリジン・アグリテックは、近く市場投入する計画を明らかにした上で、「農業の生産性と持続可能性を大幅に向上させ、農家が害虫をより効率的に管理でき、農業の環境への影響を軽減できるようになる」とアピールしました。
 
同社は収量増加を狙ったゲノム編集トウモロコシの開発にも取り組んでおり、商品化を目指していることも明らかにしました。栽培試験では従来品種より50%以上も収量が増えたといい、「トウモロコシ生産の生産性やコストパフォーマンスを飛躍的に向上できる」と強調しました。

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