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デンマークが「げっぷ税」導入へ EU全域への拡大を期待

デンマーク政府は6月25日、牛や羊に課税する「げっぷ税」を含め、農業部門から排出される温室効果ガスを対象に、2030年から世界初の炭素税を課すと発表しました。各国が追随し、欧州連合(EU)全体への拡大に期待を示しています。ニュージーランドのげっぷ税構想は農家の反対を受けて撤回されましたが、農業部門からの温室効果ガスの排出削減を目的に、新たに課税する動きが広がっています。
 
現地からの報道によると、デンマークは温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比70%削減し、2045年までに実質ゼロとする目標を掲げています。ジャップ・ブルース税務大臣は声明で、今回の発表について、「目標の達成に大きく前進する。われわれは農業に炭素税を課す世界初の国となる。他国にも影響を及ぼすだろう」と表明しました。デンマークは乳製品や豚肉の生産・輸出が多く、特に酪農業界が影響を受けることになりそうです。
 
炭素税は、農業部門から排出される温室効果ガスについて、2030年から二酸化炭素(CO2)換算で1トン当たり120デンマーク・クローネ(DKK、1DKK=23円換算で2760円)が課され、2035年から300DKKに増税されます。平均的な牛1頭当たりでは、2030年から672DKK、2035年から1680DKKとなります。デンマークでは、2022年6月末時点で148万頭の牛が飼養されています。税収は農業部門の環境対策に充てられるということです。
 
デンマークでは農業部門が温室効果ガスの最大の排出源で、新たな対策がなければ、2030年に農業部門の排出シェアは46%に達すると予測され、削減が急務となっています。炭素税の導入により、2030年に温室効果ガスを180万トン減らし、70%の削減目標を達成できると試算されています。
 
デンマーク政府は今回の決定に先立ち、農業界と食品業界、環境団体から成る「緑の三部会」と協議を行い、合意を取り付けました。炭素税を実際に導入するには、国会の承認が必要となります。

国家審議は2024年秋に始まる見通しですが、関係者間で既に合意が得られているため、承認される可能性が強いとみられています。今後は、デンマーク議会の動きと、EUなど他国・地域の動向が焦点となりそうです。
 
今回の決定について、農業・食品団体は「合意が成功したことをうれしく思う」と歓迎するコメントを出しました。「長期にわたる非常に困難な交渉」で、「難しい妥協を迫られた」と振り返りつつ、「デンマークの将来の食料生産や次世代の農家にとって、重要な足跡を残すことができた」とアピールしました。
 
自然保護協会も「生物多様性が優先された。今回の合意により、われわれは正しい方向に大きな一歩を踏み出した」と評価するコメントを出しました。
 
一方、緑の三部会に参加しなかった別の農業団体は「政府は農家の声を聞いていない」と今回の決定を批判しています。炭素税が導入されれば、「世界で最も環境にやさしい農業生産国であるこの国で、必要となる技術への投資を妨げる」と主張しています。関係者がすべて合意しているわけではないようです。
 
 

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