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大日本末期文学全集

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終末感が滲み出る文章がまとまったら、ここに投稿します。イラストと文を合わせて一つの作品になっていることもあるので、雑誌のような感覚でお楽しみください。
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2023年2月の記事一覧

『「どこか良くないところでも…?』

『「どこか良くないところでも…?』

「院長お呼びでしょうか!?

「サイト管理はキミだっけ?

「うちのホームページですか!?

「そう

「はい!僕が更新しています

「いいかげんにしろよ

「は…はい?

「いいかげんにしろっつってんの

「どこか良くないところでも…?

「どこかじゃねーってコレだよコレ!

「あぁー!

「あぁーじゃないよまったく

「人気あるんですよ院長!実際の質問ですし

「俺が人気あるのはわかってんの!

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『卒業式だよ?』

えっうそ

岡崎君きょうおやすみなの?

どうして?

卒業式だよ?

せっかくわたしの

三年間の想いを

きょうようやく

ぶつけてみようと思ったのに

肝心の岡崎君が

いないだなんて…

しばらく放心状態で

教室から

体育館へ向かって

卒業証書を貰って

校歌が流れて

みんな泣いて…

だったらしいけど

わたしはいっさい

覚えていなくて

また教室へ戻って

いよいよほんとに

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『「そういうの、いけないんだよ」』

『「そういうの、いけないんだよ」』

突然玄関のチャイムが鳴って

料理の途中だったものだから

なんだかわたし慌てていて

覗き穴も確認せずに

ドアを開けてしまったの

「〇〇警察署のものですが…」

警察にやっかいになる覚えはない

何事かと思えば

「詳しくは申し上げられませんが…」

向かいのマンションに

凶悪犯が潜んでいる可能性があって

その張り込みのために

わたしの部屋を使わせてほしいとのこと

おんなの一人暮らし

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『ग्रेट इंडियन आर्मी मोटरसाइकिल कॉर्प्स』

『ग्रेट इंडियन आर्मी मोटरसाइकिल कॉर्प्स』

「俺は上の右端とっぴする」

「いや待てよ去年おまえあの位置やったべ?連続はずるいわ」

「ずるいとかないって。実力。華があるやつがやるべき」

「おまえが華があるなんて誰が言ってんだよ?」

「みんな言ってるしな」

「みんなって誰だよ?」

「うるせえ俺のが女にモテる」

「は?俺のがモテるに決まってんだろ」

「じゃあバレンタインのチョコの数」

「おまえから言えや」

「せーので言う?」

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『ペンションUNIZUKA殺人事件 ~セ、セキララ…~』

『ペンションUNIZUKA殺人事件 ~セ、セキララ…~』

(まえがき)
読み始めたあとは自己責任でお願いします。

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「この中に、犯人はいます!」

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いちおう名乗っておこう。僕の名前はLEVIN。私立衛府乱大学の4回生だ。

卒業を目前に控えたこの冬、僕はひとりミステリを読み耽るためこの山深いペンションを訪れたってわけ。それがとんでもない悲劇の始まりだということも知らずに…。

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「残念ながら、そう結論を導かざるを得ません。なぜならお

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『「gっはは!おべおもしれ!たこじゃね、たこ!」』

『「gっはは!おべおもしれ!たこじゃね、たこ!」』

「うぁだば、じじゃ酒ざぁづってぐいんぐいんだぁばmouどばんでだだでぁ」

久しぶりに訊く曾祖母の方言が懐かしい。

「だぁづてあいけどnn、それだんばたのしみでぇや」

両親も祖父母も使わないこの土地の言葉、幼いころの耳に残っているから、僕はかろうじて聞き取れる。

「往生でねぇの」

盆でも正月でもないこの季節に、僕はなぜだか故郷に帰りたくなって。ひとり列車を乗り継いで、曾祖母のもとへ。

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『「最っ低」』

『「最っ低」』

洋翔を連れて、”親子三人でみずいらずの休日”を過ごすのは半年ぶりだ。

月にいちど俺は息子に会うことになっているんだが、海外出張が続いていたりなんかして結果、季節がふたつも通り過ぎた。

あと少しで4年生になるのでモノへの興味がだんだん大人びてくる。どっちに似たのかしらないが博物館へ連れていけという。恐竜の化石が見たいそうだ。

別れたのは痴話げんかからではない。洋翔には気の毒だが俺も元妻もワーカ

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『キムタクおばちゃん』

『キムタクおばちゃん』

「うちにキムタクおんで」

キムタクおばちゃんは

いつも赤いカーディガンを着て

ニチイのビニール袋を持って

それで

キムタクがうちにいるからって

道端で声を掛けてくる

あぁそうそう

キムタクの顔が描かれた

風船が目印

「おでんも食べや」

近所ではゆうめいで

学校や親からは

危ないから近づいちゃいけないと

注意されていたけど

キムタクに会えるかもっていうのと

おでんが食

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『知らなかったでポリスはいらぬ』

『知らなかったでポリスはいらぬ』

こないだの週末に

ちょっとドライブがしたくなって

2億光年先のффф星まで

朝はやく出て

夕方には自宅に戻ろうと思ったら

なんと渋滞で真夜中に

宇宙首都高から宇宙東名に切り替わる

ジャンクションのところで

玉突き事故があったらしくて

だからしょうがないから

高速降りて

帰りは下の宇宙一般道で

そしたら面倒なことに

宇宙検問に引っかかった

ヘルメットに

チューブを繋がれ

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『ホンジツノエイギョウハシュウリョ…」』

『ホンジツノエイギョウハシュウリョ…」』

「…ですからお客様…何度も申し上げておりますように、そのような質問にはお答えしかねます…」

「もういいわ」

ピッ

--

ピッピッ ピッピッピッピッ ピッピッピッピッ

トゥルルル

「コチラハセイキュウヒャッカテンオキャクサマセンターデス、ホンジツノエイギョウハシュウリョ…」

ピッ

--

ピッピッ ピッピッピッピッ ピッピッピッピッ

トゥルルル

「パティスリーウメダでございます」

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『「なんだか興奮してきたな!」』

『「なんだか興奮してきたな!」』

「さいきんの牛肉は流線型なんだな」

夫の斜め上のコメントに

わたしはさいしょ

戸惑ったけれど

たしかに言われてみれば

米沢牛のサーロインスライスも

近江牛の肩ロースブロックさえ

見事な流線型を保って

我が家に届いたんです

「やっぱ新鮮さのアピールかな」

なるほどね

我が夫のその発想力にはあっぱれ

いまどき

ふるさと納税も

クリックしたら5秒後に

インターフォンが鳴るも

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『&A』

『&A』

昨今、世界的にその多様性への理解と幇助の必要性が叫ばれるLGBTQ。

そこへまたひとつ、新たな概念が加わろうとしているようで。

「おうワシはまだまだ元気じゃ!身体はピンピンしとるから元気に働いとる!だけど若ぇオンナに介抱されるのは格別いい気分なもんだ!おーちょっと姉ちゃんよ!便所に連れてってくれんかの!ワシのあっちがビンビンぞな!」

「ねーまま!ぼくはきょうもがんばってかいしゃにいくよ!えら

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『一緒にインスタ会社(どこだよ)に』

『一緒にインスタ会社(どこだよ)に』

新しくウチの店に

バイトで入ってきた

同い年のコ

めっちゃかわいいから

さっそく俺

LINE垢きいたわけ

「LINEやってない」

だって

だったらインスタ

フォローさせてよ

って言ったら

「インスタ…壊れてる…」

とかわけわかんない

もう脈ないから

諦めたんだけど

そのコ

なんだかすごい真剣な顔で

「やっぱやりすぎたかな…」

なんてつぶやいてる

「一緒に謝って

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『人呼んで「頭が丘C地区」。』

うちの実家がそもそも都心から車で最低でも5時間はかかる僻地。

とはいえ小さな都市経済圏を形成しているから、田舎でも暮らしには困らないんだけど。

その街から直線距離で言ったらほんの数キロ先、峠をひとつ隔てたところにその地区はあって。

人呼んで「頭が丘C地区」。

外部からの交通は原則遮断されていて、その地区に通じる道路すらない。ウィキペディアにすらその情報は掲載されていなくて、グーグルアースに

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