『人呼んで「頭が丘C地区」。』


うちの実家がそもそも都心から車で最低でも5時間はかかる僻地。

とはいえ小さな都市経済圏を形成しているから、田舎でも暮らしには困らないんだけど。

その街から直線距離で言ったらほんの数キロ先、峠をひとつ隔てたところにその地区はあって。

人呼んで「頭が丘C地区」。

外部からの交通は原則遮断されていて、その地区に通じる道路すらない。ウィキペディアにすらその情報は掲載されていなくて、グーグルアースにはモザイクがかかっている。

だから頭が丘C地区の噂は、あまり一般的には広まっていない。

さいきんになってユーチューバーなんかが幾人も突撃を試みてるようだけど、悉く何も得られぬまま帰って…来られればいいほうで。

きけば頭が丘C地区には、年間に何百人という単位で送り込まれているんだとか。

いっぽうで向こうから出てくる人間はひとりもいないというから恐ろしい話。

まぁなんだかんだ大げさに表現したけども、どうやら簡単に言えば現代版の流刑地みたいなものだそうだ。刑事でしっかりと裁かれず、どうにも刑務所へ送るわけにはいかない連中を、そこへぶち込む。

だから回転寿司でネタをペロッとしてまた皿をレーンに戻したり、牛丼屋で紅ショウガを直接箸で口へ掻きこんだり、そういう奴らが送られていくみたいだね。

"取材"に行ったユーチューバーがあんまり戻って来ないのも、もしかしてそういう理由なのかも。

ちなみに頭が丘C地区には、コンビニはもちろん、飲食店に、それからカラオケだってあるから、娯楽と働き口には困らないそうだよ。






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