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書いている小説

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書いている小説をまとめました。 こちらはホラー小説です。 https://note.com/maki0806/m/m6453eb5d2608
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記事一覧

イノセントワールド 小説

イノセントワールド 小説

 直哉は机にあった鏡で自分を見た。

そこには、十七歳の少年が映っている。
自分はこんな顔だったのだろうかと驚いた。
大量の汗と、悲痛な表情。
これが自分だと理解出来なかった。
思考回路が急速に、ある終着点に向かっていくのがわかった。頭の中でそれを否定するが、どうしてもそこにたどり着こうとする自分がいた。
嫌だ。
嫌だ。
いやだ?
いやだ?
それをするのがいやだ?
いや、考えるのももう嫌だ。
いや

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いのせんとわーるど #2000字のホラー

いのせんとわーるど #2000字のホラー

 駅は人で溢れていた。ホームでは「人身事故の影響により電車が遅延している」というアナウンスが流れている。私はスマホをいじりながら電車の運行が再開されるのを待った。近くに別の駅があれば勿論そっちに行っているけど、最悪にして歩いていける距離にはなかった。学生の自分にはタクシーを使うという選択肢はないので、こうやって待つしかなかった。

 それにしても、何故この時間を選んだのだろう。どうせ死ぬならこの時

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うらぼんに #2000字のホラー

うらぼんに #2000字のホラー

 高い肉を食べ、ここに来た。こんな時でもおいしい肉を食べたくなるのが不思議だったけど、まあ最後だから良しとしよう。
 柵を乗り越えて、竹やぶの中に入った。進路は真っ暗。空を見上げるとまん丸い月が光っている。僕はスマホの明かりを頼りに歩き出した。ここに来るのは子供の頃以来。なんとなく覚えているつもりだったのに、少し歩くとその自信はなくなった。
 こんなに竹って生えていたのかな?
 落ちていた木の枝を

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臨命終時 #2000字のホラー

臨命終時 #2000字のホラー

臨命終時 #2000字のホラー

 白い壁が見える。頭が割れるように痛い。自分の目で確認した訳ではないのに、体の様々な場所から血が出ているのがわかる。経験した事のない痛みが襲っている。痛い。
「助けて」
 意識が遠のく。

 懐かしい景色が目の前に広がっている。子供の頃によく兄弟たちで遊んだ公園だ。大きな池も見える。ここに来るのはいつ以来だろうか。入口からゆっくりと中に入った。
 桜の花が咲いてい

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はっぴぃえんど 2000字のホラー小説

はっぴぃえんど 2000字のホラー小説

 はっぴぃえんど

 朝起きて、家を出て、電車に乗る。会社に着いて、仕事して、帰る、そんな日々を繰り返し、気がついたら30代に突入していた。今している仕事は嫌いではないが好きでもない。勿論学生時代に憧れた職種ではない。給料に大きな不満はないものの、少なすぎるとは思わない。だからよく私は「これでいいのだ」と、我に返りそうになる自分に言い聞かす。

 「20歳ならまだしも、この歳で仕事をやめてやりたい

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君と見たい景色、君に見せたい景色

君と見たい景色、君に見せたい景色

君と見たい景色

 君と見たい景色がある。
 君に見せたい景色がある。

 駅のホームに緑色の電車が停車した。すぐに車両に乗り込み、端の空いていた座席に僕らは座った。それから僕は鞄から本を取り出し、母さんは手に持っていた電話の画面に視線を落とした。この電車に乗るのも、もう何度目だろうか?物心つく前からだから正確な回数は知らないけど、きっといっぱい、うんと沢山なはず。
 僕は本を開く前に、少し車内を

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君へ贈る景色-夢幻鉄道

君へ贈る景色-夢幻鉄道

前回書いた小説の続きです。こちらを読まなくても楽しめますが、読むとさらに楽しめます。

 不思議な夢を見た。夢というのは大抵不思議なものだとわかっているから、不思議と前につけなくてもいいのだが、あえてつけたくなる位不思議であった。酒を飲みすぎているのが原因で普段より不思議になった可能性はいなめないが、とにかく変な夢だった。その夢でも僕は電車で居眠りしていて、起きたら車内がいつの間にかレトロな内装に

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君に見せたい景色

君に見せたい景色

 ホスピタルアートの小説です。

以前書いた小説の原点となる話です。今回の話から読んでもわかりますが、前回書いた2つの小説も読んでいただけたら嬉しいです。

続きになります。

 君に見せたい景色

 あの日から自分の人生は大きく変わった。それまで望んでいた未来ではないが、この今の人生で良いと心から思う。

 あの日、待望の我が子が生まれた。二人で幸せに浸ったが、喜びはつかの間、すぐに終わってしま

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今夜はほろ酔いだ 小説

今夜はほろ酔いだ 小説

 昼はまだ夏の暑さの名残りがあるものの、夜になると秋らしい過ごしやすい気温になってしまっている。元々秋は好きだから、いつもなら秋を両手を広げて歓迎するのに、今年はまだ夏であって欲しいと思ってしまう自分がいた。それはきっと僕だけじゃないはず。

 この夏、一体どれくらい僕は楽しい事をしたのだろう。何回、休みの日を楽しんだのだろう。片手で数えられてしまうのが悲しい。みんなはどうなのだろうか。楽しめたの

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夢だけど、夢じゃなくなった

夢だけど、夢じゃなくなった

 どうして今日なのだろう?明日でも、明後日でもいいじゃないか。何故、今日なのだろう?

 今朝目覚めると、腰の激痛で起き上がるのにいつもの倍以上の時間を要した。病院でまだ診断を受けた訳ではないが、経験者なのでわかる。これは絶対に「ぎっくり腰」だ。脂汗をかきながらもなんとかトイレは済ませたものの、今日の予定を考えると、「よりによってどうして今日ぎっくり腰になってしまったのだろう」とぎっくり腰を恨んだ

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ヒハマタノボリクリカエス 1

ヒハマタノボリクリカエス 1

 何故生きるのか? 心が疲れてしまった女子高生の、再生の物語です。僕たちの10代の数年を、ある事実とある視点を交えて、フィクションとして書きました。 初めて書いた小説を、加筆修正して載せていきます。

 雨だ。
 音は聞こえないけど、外はひどい雨だ。
 ああ、帰るのもうっとうしい。
 畠山美保は、数学の授業を軽く受け流しながら、頭では全く違う事を考えていた。高校三年の夏休み前といえば、たいていの受

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スタートライン 1

**フィクションの連載小説です。

 このままずっと潜っていたいと切に願った。ずっとこの時間が続けばいいと思った。水中から太陽を見上げるのが好きで、その光にいつも癒されているが、今日はいつも以上に癒してくれていた。その光に心が浄化されていくのがわかる。魚を見たり、珊瑚を見たり、カメとか見たり、洞窟に入るのも好きだけど、こうやって太陽の光にただただ包まれるのも好きだ。生命の起源は海らしいが、細胞レベ

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あの日の僕(第1話)━電車

あの日の僕(第1話)━電車

あの日の僕(第1話)━電車
中央線で思い出したのはあの日々
子供の頃の自分が今の自分を見たら何を思うだろう?



この前、久しぶりに中央線に乗りました。その時、あまり思い出したくない記憶が勝手に蘇ったのです。実は、この電車で0歳から小学6年の誕生日まで通院していました。すぐにある絵本が脳裏に浮かぶ。

小さい頃、電車の中で絵本の「ウォーリーを探せ」を読んで、検診の事考えないようにしていた。だか

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あるインフルエンサー

あるインフルエンサー

フィクションの小説です。
加筆していきます。*10/19完結しました
小説ほかにも色々書いてます。

ある男が0からインフルエンサーになった物語です。

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 これは歴史に名を残すある男の物語だ。

 俺は気づいてしまった。その事に気づけた時、俺は神に選ばれた男だと確信した。
 君は人生を全うした後、自分のその物語を何と呼ぶ?「成功者の人生」だと言える?俺は言える。

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