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エッセイや詩

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記事一覧

瓶に開口部はあるのに

瓶に開口部はあるのに

何の変哲もない緑の葉っぱ。人間の高さから見れば、ひとつひとつは石ころみたいな大きさで、それが密集している。

時刻は暮れ方。
気づけば冬なんて通り過ぎてしまったみたいで、まだこの時間帯でも太陽は元気があり余っているようだ。

仲間みたいにかたまる葉っぱたちを、陽が照らしている。
すると、たちまち黄色に変わる。そこには眩しいくらいの輝きもあって、元々の姿からは想像がつかない。

見つめてみる。
そこ

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[詩]霧

[詩]霧

霧は凄い。
360度どこから見ても、静止物みたいにじっとしている。
まるで3D映像を現実で見ているみたいだ。

高速道路から見ていたら、あと少し頑張ればもう手に届いてしまいそうだと思ってしまう。

「雲に触れてみたい」という子供のような希望が、呆気なく叶ってしまいそうだ。

氷のつぶだから、触れたら冷たいだろうか。

つぶということだし、固いだろうか。

けれどやっぱり、あのフワフワとした見た目か

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[詩]砂時計

[詩]砂時計

パラパラパラ、変わることはない。

落ちるしかやることもなく、
ひたすら落ちつづける。

落ちつづけたら、何がある?
ひとつぶの砂が言った。
もうひとつぶの砂も言う。

けれどあるひとつぶは、
いや、やってみようさ、と言った。

真面目こと言うなよな、と反論の声が聞こえてくる。

それでも砂の動きはとまらない。
パラパラパラ。

あと少し、そんなところで瓶にへばりつく砂がいる。
ぼくらは決して落ち

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[詩みたいな]オーケストラ

[詩みたいな]オーケストラ

優しく、弦を弾く音がした。
もしかしたら、誰かが小さく飛んだ。
その動作に効果音をつけるなら、きっとこの音が似合ってる。

でも一体、どこから?
そう思って見渡すと、その音に合わせて動く人たちがいた。まさかこの楽器から。
高貴なあの楽器から、こんな素直な音も聞こえるんだ。

うん、聞いてる私の前にも、だんだん緑が生えてきてる。この音を聴いてか、ふわふわ何かも飛んできた。自信をもったブルーの、蝶々が

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[詩]ぼくの後ろの僕

[詩]ぼくの後ろの僕

ぼくの後ろに隠れる僕は
いつも僕の行動を見ている

ぼくとおんなじ背格好をしているけど
僕は帽子を被って少し日焼けた肌をしてるよ

こんなこと打ち明けるのも、そろそろ僕のこと分かっててほしいから

どんなに頑張っても知らんふりして寝てしまうぼくに、そろそろ僕も息詰まってるんだ。

あるとき僕は
君の心を叩いている

君の心臓はドキドキしてる
こうして僕は後押しするのだ
ぼく、これやってみたほうが良

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ぼさぼさ

コートを着て リュックをしょったおじさん
なんだかサマになっている

横顔

マスクの上部の凹み
筋が通っている

ふさふさ

白髪混じりのその眉毛
その形はななめ直線だ

あと少しで目に届きそうな眉頭
そのシェイプが、若さをつくっている

一足先に電車を出ていった

あ、そのコート
私が持ってる色とおんなじだ
果たして どこに行くのだろう

また
列車が出発して

乱暴に体が右に傾く

思い出し

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[詩エッセイ]舞台

[詩エッセイ]舞台

舞台ってなんだ

濃い化粧をして
ハリのある声を響かせる
俳優たちが

大ホールに立ち

私たち観客が それを見ている

それが舞台というもの?

見たこともないから分からない

今日 電車に乗った

初めて ゆく場所

いつも右側に進むけど
今日は左に向かう

その帰り
こっち方面は 人が少ないみたい

一人一人の間に
五シートくらいの隔たりがある

わたしは先頭列車 にいる

ある女の人は 運

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心の石 [詩]

心の石 [詩]

心に

重いものが のしかかって

必死に持ち上げようとする

足りない筋肉では

ぜんぶ退けられない

なくなったかと思えば

また石が ころがってくる

ときどき 耐えられなくなって

持ち上げるのですら

やめてしまう

こんどは

別のもので 重みに耐えようとする

その痛みを忘れるために

スイーツを食べてみたりする

どこか出掛けてみたりする 

でも その甘さは

罪悪感の味

話し

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[詩]きょうの カワイイ

[詩]きょうの カワイイ

バスの中

炭酸の音が 響かぬように
少しずつ キャップを回して
体がプルプル震えていた

プシィ
 と、かよわい音

そうやって 油断していたら
私の口から プシュッと笑いが漏れそうだ

周りを気遣う その優しさと
わたしの心も 震えてる

かよわいシュッ、を
鼻から 小さくこぼした

通り過ぎた 自転車
横目で見えた 会社帰りらしい風貌
見ると リュックのチャックから
長ネギだけが つきだして

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[詩]花びら一枚、ラッキー

[詩]花びら一枚、ラッキー

チヤホヤされてる時が全てじゃないの

謙虚な色だからって そうやって生きてるわけじゃないのよ

輝けるのは一瞬だけなの

ひらひらひら

「綺麗だねー」

部活で休憩中の女の子が言う

ブチっ

「だねぇ、ほらほら」

あらっ…なんということ。

一生懸命頑張ってたのに。

あたしの意思で落ちたかったわ。

線香花火でジジっとなるとこまでしかいれなかった、あたし…

ひらり

     ひらり 

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[詩みたいな]水槽

服はスウェットだし 肌の調子だって大して良くない
けれど行きたい 読みたい本がある
チョコレートをひとつつまみ スタートダッシュへ

図書館まで自転車を漕ぐわたし
海のまち この町は風が強い
ときおり 横殴りの風に負けそうになる
体重が ここ最近増えたのにね
まだ気にする必要ないのかな

私  (白い)線 線 線 線  車
窓から見えた運転手は、ディーラーのお姉さんに似てた
譲ってくれてありがとう

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ケシカスになる

あなたの夢はなんですか?

高校受験のため、私はこの質問に対する回答を用意せねばならなかった

正直、夢なんてまだない。

こんな時、逃げ口として「こんなん中学生なら夢がない人もいるんだってば!!」と思いたくなる。

「将来薬剤師になりたいです。」
「看護師に…」

クラスの皆は淡々と夢を述べているけど、果たしてそれは本心なのか?

こんなことを言うのも気が引けるが、それホント?といちいち疑いなが

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[エッセイ]金木犀

[エッセイ]金木犀

マスク越し、無意識にどこかで嗅いだことのある匂いがした。

「すごい、周りにたくさん金木犀があるね。

だからこんな良い匂いがするんだ」

一緒に来ていたおばあちゃんが言う。

えっ……

トイレの芳香剤の匂いじゃなかったの!!!?

これが私の一番の感想だった。

キンモクセイ、金木犀……

歌詞としてもよく聞くし、香水としても人気の香り。

でも実際、私は金木犀を嗅いだことがなかった。

いや

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[エッセイみたいな]ハーフハーフ

今日、ふと思い立った。
フィギュアスケート、久しぶりに見ようと。

羽生結弦選手の演技を見た。

一年ぶりくらい。

でも感じたことは、去年と全く違う。

今日見たときは、羽生選手の演技にかける大きな思いがずしずし伝わってきた。

演技後の表情を見て、納得した。

あの満ち溢れた顔になるくらい、たくさんの努力をしてきたんだな、と思う。

ふと、その後に思い出した言葉がある。

「ハーフハーフですか

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