ぼさぼさ


コートを着て リュックをしょったおじさん
なんだかサマになっている

横顔

マスクの上部の凹み
筋が通っている

ふさふさ

白髪混じりのその眉毛
その形はななめ直線だ

あと少しで目に届きそうな眉頭
そのシェイプが、若さをつくっている

一足先に電車を出ていった

あ、そのコート
私が持ってる色とおんなじだ
果たして どこに行くのだろう

また
列車が出発して

乱暴に体が右に傾く

思い出した これが慣性というやつだ

右手にストロングゼロを持った人
が入ってくる

コートを着始める

ここは家なのかと思いそう

まだかな まだかな
そろそろ来るだろう

車掌の声に耳傾け

いや まだだ

長いなあ

高いヒールを履いたおばさん 来る
しかもタイトスカート

おめかしして、どこに行くんだろう

ぼんやり頭で考える

はっ

気がついたら 頭がぐらん、ぐらん

隣に誰もいなくてよかった

こうなるたびに 思い出す

夕方の列車、隣に女子高生
その片手にはプリント

眠いんだろう
私の方に頭をかたむけて寝ていた

あのとき 許してあげればよかった
寝させておいておけばよかった

そんな後悔が蘇る

だから今ここで祈る
無事に日々過ごしてほしいと

さっきまで 山奥だったせいか
列車のスピードもぐんと遅かった
まるでもう 停車しますよ、と思わせるくらいに

けれど今は街中で ぐんと速くなった
新幹線に乗っているみたいに


思い出した
明日もまたここに来るんだ
新聞に載っていたあの人に会うために

わくわくを思い起こして
目を覚ます


やっとだ、やっと

車内アナウンス流れる

切符を親指 ローファー踏み出す






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