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雨の日に/この夜だけは
肌にまとわりつくシャツにじっとりとした汗を感じながら、あるいは底冷えする身体の寒さをこらえ身を擦りながら、夜を歩く。静かな路地に声が響く。飲みすぎた酒による胃の不快感はこれからもっと強くなるだろう。だからそれを忘れるくらいに話をしたい。音楽を垂れ流しながら馬鹿笑いをしたい。ささやかな乾杯のグラスの音を聞きたい。この夜を失いたくはない。
いつだって、友人たちと話しながら飲むのは楽しい。僕はひとり
忘れてしまわぬように
ある日、近所のマクドナルドで改装工事をしていた。
家のポストにそのことを知らせるチラシも入っていた。リニューアルした内装のイメージ写真がついていて、機能的ですっきりしたレイアウトになるようだった。
僕は京都に住み始めて八年になる。その間にいろんな店だとか場所が変わっていくのをみた。
ラーメン屋、スーパー、コンビニ、本屋。一度も入ることなく「テナント募集」の貼紙がされていたところもあれば、それなりに
ジャズの体験、『JTNC』あるいはささやかなジャズ・ガイド
ここ数年離れていたジャズを、最近また聴き始めている。
きっかけは批評家の柳樂光隆氏が発行しているムック『Jazz The New Chapter(JTNC)』の影響だ。
これは現代のジャズシーンを、何本ものインタビューを元に、そこから見えてくる「ジャズ」というものをいくつもの文脈から繙いていったものだ。この本が与えた影響はかなり大きいものだろう。
ジャズ雑誌といえばいまだに「ピアノベスト100」な
「恋」じゃなくなる日(映画『リズと青い鳥』評)
控えめな靴音、山鳩の声、涼しげな朝の匂い。澄んだ空気が伝わってくる。気弱そうな少女は階段に座って、大好きな人を待ちわびている。うるんだ瞳から涙がこぼれないように。もうすぐ会えるという期待と、来るとはわかっていながらも少しの不安を胸に。いつも過ごしてきたであろうその朝の停滞に包まれている。
彼女がやってくる。溌剌とした足音だけでそれはわかる。紅潮した頬と、そのおかげですっかり乾いてしまった涙のあ