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わたりどり通信
2024年6月7日 13:08
彼女ー星野朱里と僕は去年から付き合っている。同じ陸上部のひとつ上の先輩で、僕は高跳び、彼女は短距離走の選手だった。彼女は学校のマドンナで、校内で知らぬ人がいない存在だった。容姿端麗で運動も得意。完璧といっていい人だったが、少しも気取っておらず、優しくて明るい人柄はみんなに好かれていた。何人の男子生徒が告白したか数えきれないほどで、僕もひそかに憧れていた。それが目的で陸上部に入部したわけではな
2024年6月7日 13:06
8月の太陽は容赦ない。悪意すらあるように灼熱の光を照り付けている。もう汗だくだった。額ではなく頭から滴が流れ落ち、ポロシャツの背中にぐっしょり張り付いていた。暑くてたまらなく、いっそ倒れたいほど休みたいのに、なぜか体が疲れてくれない。もっと走れ、もっと走れとどこからか声が聞こえてて、暴走機関車のようにひたすら走り続けた。 あっ!と思った一秒後、サンダルのベルトが千切れ、でこぼこのアスファルト
2024年5月29日 16:45
廊下をぐるりと回り、階段を降りて僕の基地へとやって来た。もう何度も来てるのに「―いい所」と初音ちゃんはまるで初めてみたいにゆっくり見渡した。「いいなあ、ここ。あたしも欲しい。秘密部屋みたい」「うんいいよ。誰も来ないから」「健太郎君だけの場所だもんね。あれえ、ここ前はテレビあったのに、イスとテーブルだけになってる。昔よくここでお菓子食べながらビデオ観たよねえ。片付けちゃったの?」「テレビ観
2024年5月29日 16:43
あらすじ 2014年の夏休み、高校三年生の健太郎の家にひとつ年下のいとこの初音が やって来る。健太郎が暮らすのは四方を山に囲まれた田舎町。 初音も四年前まで住んでいて、健太郎とは仲がよかったが、離れてから は特に交流はなく、二年前の祖母の葬儀以来の再会だった。 突然の初音ひとりでの訪問を健太郎を不思議に思う。 すると初音は妊娠していて、堕胎手術をするために来たと打ち明け、 同意